部下との出会い
「ご馳走様。いや、やはりうまいな」
「ありがと」
レイナの作ってくれた朝食を食べた時に、何度も思うな。
昔の部下にも劣らないぞ。
やっぱり何かあるのか?
千年前の食事と変わらない気がする。もしや........
いや、考え過ぎか。そんな事あり得ないな。
アランは自分の憶測を胸にしまい、魔王学園へと向かう。
「アラン様、おはようございます」
ロントが挨拶してきた。
すると周りの生徒達が「え?」「様付けって?」など困惑している。
やっぱりそうか。こいつらは、悪ガキで合っていたか。
まぁ普通に考えれば、そうだよな。
一瞬そういう風習なのかと思ったぞ。
隣を見れば、レイナも不思議な顔でこちらを見ている。
「おはよう。調子はどうだ?」
「はい、すこぶる元気です。やはりアラン様に掛けてもらった<大回復>が効いています。それでは、また教室で」
「ああ」
ロントは俺に一礼をして立ち去る。
昨日とは、まるで別人だな。自分より強い者に出会ったからか?
生き物とは、自分よりも強い者な出会うと、その存在を尊敬する物も多い。
「ねぇ、アラン。一体、昨日何があったの?あのロントが、あなたにあんな言葉使いだなんて」
「なあに、ちょっと掛かってきたから、教育してやっただけだよ。そんなに凄い事をした訳でもない」
「え?あーそうなんだ」
「ああ」
俺達は教室に行き、席に座る。
何か周りがざわついているような気がするが、特に聞く理由もないか。ロントの変わりように驚いているだけだし。
早速、ルー先生が「静かに」と声を掛ける。
「えーと。今日の授業は、私では無くて、別の方をお呼びしています。どうぞ、デモクレス様」
教室のドアから、老けた老人がやって来る。
髪は白く、その服も白い。体は日々、鍛えているのであろう姿をしていた。
生徒は皆、頭を下げている。
あっ何、そういう人なの?じゃあ俺も頭を下げるか。
一足遅れてアランも頭を下げる。
「よい、私はそういうのを好ましく思わない。別に私は、そこら辺にいるただの老いぼれだよ」
デモクレスは、生徒達に頭を上げさせる。
しかし、変わってないな。
そう、こいつは俺の部下だった人物のデモクレスだ。
あいつはまるで姿が変わらない。
俺が魔王として活動をしていた頃に出会ったのだが、その時もあんな老人の姿だった。
だが実力は折り紙つきだ。あいつは、日々の努力をおこたわらないので、その魔法は特に美しく洗練された物であった。
デモクレスは生徒達の方を向き
「急で悪いが今回は外に出て、戦闘の訓練をしようと思う。何か異論を唱える者はいないか?」
クラスが静まる。
まぁここで「意義あり!」とか言えないだろう。言ったら殺されかねないかも知れない。まぁデモクレスは優しいし、殺しはしないと思うが。
早速、俺達は外にある裏の校庭に集合した。
裏の校庭は、地形が複雑になっていたり、森だったり、様々な要素がある。
そして、凄い広い。
俺も最初見て思わず「広っ」と言ってしまった。
「では、これから戦闘訓練を行う。その前に、君たちに問おう。戦闘でもっとも大切な事は何か?」
一人の生徒が発言する。
「如何に、相手の情報を知るかです」
「ふむ、確かに。相手の情報とは、戦局を左右する。しかし、その情報が本当かはわからない。もし、その情報が偽物だったら負けてしまう可能性も見えてくる。でも、それは重要な事だ。」
また生徒が「はい!」と発言する。
「相手が何の魔法を打って来るか、予想する事です」
「それは、戦いの基本だ。だが、その基本も大事な事だ」
性格は変わっていないようだな。
あいつは、どんな奴でも必ずフォローする。
故に、魔王軍の中でもかなり好かれていた。
と言うか、なかなかデモクレスが欲しい答えが出てこないな。
このままでは埒があかない。
仕方ない。俺が言うか。
デモクレスの授業も楽しみだし。
「誰かいないか?」
「それは、相手の本質を見極める事だ」
俺は手を挙げる。
デモクレスは、やっと答えが出たので「おお」と声を漏らす。
「そうだ。君....名前は?....」
「アランです」
「アラン?顔も似ているし、もしや........」
俺は片目を閉じる。
その行為で、デモクレスは何か察したように追求するのを止めた。
まぁ、デモクレスなら、俺が転生したのを知られてもいいだろう。
他の先生なら、俺が転生した魔王だとわかったら、授業とかやりずらいだろうし。
「そうか、アラン君か。記憶に止めておこう」
「それはどうも」
そして授業は、続いていく。
その後は魔法やら戦術やらの話しを、その場の地形と合わせて解説していく感じだった。
だから、裏にある校庭にしたのか。
昔にデモクレスから教わっていたので、今更真剣に聞く必要もないな。
「よし。これで、あらかたの授業は終わりだ。最後に誰か模擬戦をしてもらえないか?このクラスに、どんな者がいるのか知りたくてな」
「では、私が行きますわ」
この前の授業で、俺に物申して来た金髪の少女が前に出る。
周りからは「やっぱり、リース様だ」「久しぶりに見れるのか」など聞こえてくる。
こいつの名前ってリースと言うのか。
初耳だな。あの時は金髪の少女と覚えていたから知らなかった。ちなみにレイナに聞くと、姓はジェスタと言うらしい。
デモクレスは、喜んで
「おおっ、そうか君がしてくれるのか。観てみたかったし、ありがたい」
へぇー。あいつが、観てみたいなんて言うなんてな。
基本的に、あいつは最初期待しない奴だったから驚いた。
昔のあいつは、成長していく姿を楽しむ奴だから意外だ。才能と言う言葉より、努力と言う言葉の方が似合っている姿をしてるし。
と言うか、相手はどうするんだ?
リース様とか言われるんなら、結構強いのだろう。
デモクレスが少し困った表情をする。
相手をどうするか、悩んでいるのだろう。
しかし、リースはもう決まっていると言わんばかりに
「先生。あいつで」
リースは少し背伸びをしていたアランを指差した。
デモクレスは決まり悪そうに、「わ、わかった」と言い、模擬戦の相手をアランに決定した。
「え?俺?」
「そうよ。この前のお返しをね」
あ!やっぱりこの前の事、気にしているのか。
いやぁ、あの時の事は反省してるし、さすがに大人げなかったよな。分かってるって
「いやぁ、あの時の事は反省してるって。大人げなかったよな。分かってる」
俺がそう言うと、リースは敵意を出した。
何を怒っているんだ?
「大人げなかった?へぇ~そうなんだ」
だから、何を怒っている?
リースはため息をつくと、アランを指差した。
「ねぇ、何か賭けない?この勝負に勝ったら相手の従者になるとかさ」
「賭けか。別にいいけど、従者かぁ」
「なあに、何か文句あるの?」
「いやさぁ、俺が勝ったらお前は、俺の従者になるけどいいの?」
リースは顔を赤くして、横を向く。
この時代では、女性が男の従者となる事はすなわち何でもしていい、と言う事になるらしい。
昔だとそんな事、考えもしなかった。
特に珍しくもなかったし。
そんな事言えば、俺は凄い数の配下がいたから、女性も結構いたぞ。
「い、いいわよ。でも、その変わり」
リースが、アランの顔を睨む。
「私が勝ったら、あなたは私の物よ。そして、奴隷のような事をされても何も言えないような、契約を交わすわよ」
「ああ、無論。異論はない」
周りがざわつく。
耳を澄ますと「いいな」「勝っても負けても天国じゃん」「奴隷でもいい」など聞こえる。
お前ら、そんなにこいつが良いのか?
と言うか、奴隷ようなの契約ってどんな契約だよ。
今の時代にそんな契約があるのか?
まぁ脅しだろうがな。
「それでは、これより模擬戦を行う」
デモクレスが、アランとリースの間に入る。
「そして、模擬戦はここでやってもらう」
デモクレスは地形が複雑になっている、裏の校庭を指差す。
「ちょっとそこは、広すぎではありませんか?」
ルー先生が質問する。
確かに、ちょっと広いな。
「ああ、確かに広い。よって、<魔物召喚>の魔法を使用するのを許可する」
<魔法召喚>とは、自分の魔力を消費し、魔物を創る魔法だ。
みんなも見た事あるだろう、魔物の軍勢を。
あれは、全て<魔物召喚>の魔法で創られた魔物だ。
でも、この魔法は自分の能力も下げてしまう。つまり、弱くなってしまう。
だから、あまり俺は使用しなかった。
弱くなるくらいなら、使用しなくても良いと思い俺は魔王軍に、<魔物召喚>を使うのを禁止した。
「はい、分かりました」
「分かった」
「では、始めるとしよう。二人とも別々の所へ転移する。ここへ」
二人はデモクレスに近づく。
そして、視界が歪む。
目を開くと、そこは森の中だった。
明日は魔王様の戦いが見られます。
10月3日、少し添削しました。「」内の「。」を消去しています。