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処刑宣告 

あ~忙し忙し。

イフンは学園での授業を終えた後、ミネセスと共に活動拠点となる隠れ家へと向かう。

ロントやレイナ達も私用があって遅くなるらしい。まぁ勿論全て嘘っぱちなのだが。そんなこんなでイフンとミネセス以外は誰もいない。


街の見飽きた風景を気ままに歩いていると、ある事に気がついた。


「ミネセスさんってもしかしてこういう街並み始めて?」


「ああそうだ。任務とかでちょくちょく来たことはあるが、すぐに終わらせてしまう。だから遊び感覚で来るのは初だ。おっ、イフンあれは何だ?」


ミネセスはキラキラしているイルミネーションの余りを飾ってる店内を指差した。


「あれは魔力を流すとキラキラ光るんだ。多分去年のクリスマスの余りじゃないかな?と言うかミネセスさんってイルミネーション知らないの?」


ミネセスはうんうんと頷く。

イフンは意外な事実にきょとんとする。


「何を不思議そうな顔をしているんだ?」


「い、いやすいません。」


「別に謝罪を強要している訳ではないんだが。まぁいい。しかし.......イルミネーションと言うのかあれは。ふーむ。興味が湧いてきたな。イフン、行くぞ!」


「えっ?行くって何処へですか?」


「興味が湧いたらすぐに行動だ。あの店に行くぞ!」


ミネセスはイフンの手を掴み、イルミネーションがある店内へと走る。

ガチャリと店の扉を勢いよく開けたミネセスに店員は驚きながらも対応する。


「い...いらっしゃいませ。」


「店員さん、あれを売ってはくれないだろうか?」


ミネセスは天井に飾ってあるイルミネーションを指差した。

すると店員は「え?」と言う顔をして


「あれを....ですか?」


「そうだ。」


「別にあれは余り物ですし......本当に良いのですか?」


店員の問いにミネセスは首を縦に振る。

そして店員は戸惑いながらも天井に吊るしてあるイルミネーションを取り、埃や塵を取り払い纏めてミネセスに渡す。渡されたミネセスは「おぉ」とおもちゃを買ってもらった子供のように眺めている。


イフンはポケットから財布を出そうとするが店員は首を横に振った。


「いらないですよ。どうせ廃棄処分になる所でしたし。」


「そうですか。ならお言葉に甘えさしてもらいます。ありがとうございました。」


「礼を言う。」


そうしてミネセスとイフンは店を出ていった。


隠れ家に行く為にミネセスとイフンはとある裏路地を歩いていた。

こちらの方が大通りを通るより近いからだ。勿論危うさはあるが、今はミネセスだっている。


そのミネセスが顔を真面目にしてイフンの前に出た。


「一体何のようだ。そこにいるのは分かっている。」


「バレたか。なら話は早い。」


そう言って現れたのはハイムだった。

以前助けてもらった恩があるのでイフンは自分の心の警戒度を緩める。ミネセスは警戒を止めない。たとえ以前味方だったとしても、明日には敵かも知れない。そんなのは当たり前の世界だったのだから。


「そんなに警戒しなくてもいい。今回は伝言を言いに来ただけだ。」


「伝言?」


「そうだ。一週間後、お前らのボスは処刑される。救出するなら早めにした方がいいぞ。」


ボス......つまりアランは一週間後に処刑される。二人はすぐに理解した。

詳しく聞こうとするが、ハイムはすぐさま何処かへ行ってしまった。


ただ唖然としていた二人であったが隠れ家に戻り、他のメンバーを待つ事にした。




「一週間後..............それは本当なのよね?」


「はい団長。しっかりこの耳で聞きました。」


「うーん。やっぱり気になるよね、どうしてそんな事をこちら側にリーク(報告)してくるのか。敵対関係なのに。リースはどう思う?」


レイナはリースに聞くが、リースは首を横に振る。


「分からないわ。それより、ロント君は?姿が見えないけど。」


「ヘイネの動向が気になると言って、尾行しにでも行ったのでは?私には分かりませんでしたが元は親友、小さな所にも気付くものでしょう。」


「確かに、長い付き合いだとそういうのも敏感になるよね。」


紙に重要な情報を書いていくエリカだが、ペンが止まる。部下からの<思考伝達(テレパシー)>が来たのだ。集められた情報が少ないのか、部下からの報告は大したことではなかった。


「部下からの報告も、そんな確信めいた物ではありませんね。やはり何処にいるのでしょうかアラン様。」


「やっぱり一筋縄じゃいかないのかな。アランのお兄さんも、時刻だけで場所は言ってこなかったし。」


「そこも何か気になるわよね。アランを助けて欲しいのかそうじゃないのかよく分からないわよ。」


リースは吐き捨てるように言った。


あと残り一週間しかない。そのタイムリミットがどんどん彼女達を焦らしていく。

そんな中、ガチャッと扉が開いてロントが帰って来た。


「あっロント、どうだったの?」


「恥ずかしい話だが戦果は何もない。ヘイネの様子が妙に浮き足立っていると思ったのだが.....。やはり見当違いだったのか?」


ロントは自分自身に問いかける。


「ま、何もないに越した事はないし、良かったんじゃない?」


レイナはそう言うが何も成果がなかった事に悔しさがあるのだろう、ロントは「はい」と頷き後ろめたさを感じさせた。


その時であった。


ザザァァ......ザァーとノイズ混じりの音が部屋の中をこだまし始める。


その場にいる全員が互いに顔を合わせる。


そしてエリカは部屋にある備え付けの箱のような物を開けてその中にある装置をいじり始めた。

次第にノイズ混じりの音も調整され、段々普通に聴こえるようになってくる。


その声は紛れもないアランだった。


「き....こえ.......るか?.......」


「はい、聴こえます。」


エリカはマイクのような物に口を近づける。


「よし..........これだけ伝える。X10047Y45666それ.....ザァー....」


最後に何を言おうとしたのかは分からなかったが、エリカは先ほどの言葉を理解しているのだろう、その瞳には確かな希望があった。


そしてプチンと言う音と共にその通信は途絶えた。


「エリカ、今のってアランの声だったわよね。その装置も一体?」


エリカ以外の視線が一気に装置に行く。


「ああ、そういえば説明してませんでしたよね。これは魔力回路を利用している通信装置です。遠くからの<思考伝達(テレパシー)>を受け取る役目を持っています。」


「それじゃあ、さっきのX何たらY何たらって何なんだ団長?」


「あれは座標値ですよ、この世界の基準点からの距離。前から緊急事態になる事を予測して作ったんですよ。ここで役に立つとは。」


レイナは装置に近づき、物不思議そうに見た。


「へぇ、凄いね。ねぇエリカこのスイッチは?」


「これは緊急コールスイッチで、押すとこの装置に登録されている者達に強制的に連絡しますわよ。間違っても押さないようにカバーされてるでしょ。」


「確かに。」


「エリカ、それでアランのいる場所って何処なの?」


リースが尋ねるとエリカは一際大きな地図を収納魔法から取り出した。

そしてその地図に書いてあるX座標とY座標を確かめる。


「これは.....何もないけど?」


イフンはその座標を指差しながら困惑する。そう、その座標には何も存在しない事になっているのだ。周りを見ても、それらしき建物もない。


その中、ロントは「はっ」と何かに気付いた。


「もしかしたら......建物自体を透明にしているとか?」


「そんな事.......ありえるの?」


リースは恐る恐るエリカに聞くが、エリカは一つ首を縦に振った。


「ありえる、ありえないで言えばありえます。透明にする........へぇ、奇策ですこと。よし、皆さん。ここにアラン様の救出任務を実行します。期日はアラン様の処刑されるその当日。日付が変わる瞬間。内容は随時連絡します。」


日付が変わる瞬間、つまり夜中だ。

エリカの宣言に全員頷いた。そして始まる、長い長い夜が。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「これでいいか。」


アランは一つため息をついて冷たい床に寝そべる。

ついさっき隠れ家にある装置を介して場所を知らせる事が出来たが、日時は伝えられなかった。言おうとしたのだが、ここ周辺に通信魔法を行使するのを阻害する強力な魔法が仕掛けられている。


これで来てくれると良いのだが.......一種の賭けになってしまった。


「ドキドキしながら待つとするか。」



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