会議
昨日めちゃくちゃ寒かった..........
暗闇の中、妖しげなろうそくが部屋を灯す。
円卓の机に各々席に着いている。その中にネルクレスの姿もあった。しかしその表情は隠しているが、焦りが感じられる。
一人、この場の進行役が一枚の紙を読み上げる。
「それでは今回の議題を発表致します。今回は魔王アラン・エリアルの捕縛の報告とその処刑方法についてです。」
進行役がそう言った瞬間、円卓で席に着いている全員がどよめいた。
いつものように足を机の上に置いていた男でさえ足を机から離す。「魔王」「魔王」と皆口を揃えてざわつく。ネルクレスはただその結果を噛みしめている。
「静まれ!」
この前と同じように一人の男が鶴の一声を放つ。
そして満を持してバルデンが立ち上がった。
「魔王、アラン・エリアルはこの俺が捕縛した。」
その言葉に円卓にいる者達は絶句する。ありえない。何を言っても魔王だ。転生したとは言ってもその実力は凄まじい。その魔王を捕縛した。バルデンの地位や権力などは上がるに違いない。円卓で会議してるがそれは関係なくなる。
「バルデン、一体どのような手段で魔王を捕縛したのだね?あやつは千年前とはいえ、魔族を束ねた王だ。ちょっとやそっとでは捕まえられなかっただろう。」
堂々と自慢気に語るバルデンにネルクレスは疑問を投げる。
「所詮魔王と言えど、女の人質と交換なら良いと承諾した。勿論交換する場で襲撃に出ると警戒したがその必要もなかった。今は牢屋で魔法禁止の手錠を掛けている。魔王も堕ちたと言う訳だ。」
「そうか。ふむ。」
ネルクレスは考え込む。その時、先ほど鶴の一声を放った男、名をメトリックと言う。
まだ少し幼さが残る青年のようだが実際はかなりの時間を体験している。メトリックはネルクレスの肩を叩く。
「どうした?」
「いやなに。あの魔王だ、何の気なしに我らに捕まるとは考え難くてな。」
「ネルクレス、思慮深く考えるのはいいがあまりに考え過ぎるのも毒だ。それで、次の議題は処刑方法だったよな。」
進行役の人はこくりと頷く。
「それじゃあ処刑方法を皆で考えようではないか?」
「俺は普通に首を切り落とすのが良いと思う。」
「何言ってるのよ!折角私達に対する大きな脅威がなくなるのよ、もっと華やかにしないと。」
「華やかって何だよ、自分は転生されても困るからその魂ごと消滅させる方法を推奨する。」
「だとしたら、魂を食い尽くすと言われている火山にでもぶち込むか?」
円卓の者達は次々に意見を出し始める。
やはりあの脅威である魔王がいなくなるから円滑に進む。最初はネルクレスの疑問に納得しかけていたが、いまさらそれを言った所でアランは自分達の手の中にいる。
それで安心の心の方が上回ったのだろう。
妖しげなろうそくが処刑方法について口々に喋り出す者達を照らす。
「やっぱりここは魔法で終わらせないか?」
バルデンが提案する。すると眼鏡を掛けて顔を髪の毛で隠している不健康そうな男が声を上げる。
「そうは言ってもどのような魔法で仕留めるんだ?そこら辺の攻撃魔法ではなかなか死なないぞ。かといって最大の魔法を撃てばあまり楽しみがなくなる。」
「そうよねぇ。みんなで一斉にやるってのも良いけど、やっぱり物足りなく感じちゃうわよ。」
「それじゃあみんなで槍を持って一斉に刺すのはどうだ?」
「バカね、それだと前の意見とさほど変わりないじゃない。これだから筋肉物理バカは。」
自分の筋肉をいじられた見た目筋肉バカは「あ~ん?」と魔力を拳に流して戦闘準備をした。それを言った女の方もいつでも魔法陣を錬成出来るように指に魔力を通す。
この二人の対立関係は今に始まった事ではない。この組織が設立した当初から対立していた。
勿論、毎回ネルクレスが二人の間に入る。しかし、過去に一回だけ二人が暴走して戦闘を行った時があった。その時はネルクレスも本気を出し二人をかなりの所まで追い詰めた。
その実力を知った二人は戦闘を起こさない程度に大人しくなった。
そして今回もネルクレスが二人の間に入る。
「二人とも、ここでの戦闘行為は禁止した筈ですよ。それとも.......。」
二人はすぐに魔力を戻す。ネルクレスの言いたい事は分かっている。
「うーん。なかなか決まらないな。じゃあこれは私の提案だ。両手両足を杭で壁に張り付け、その後も一時間ごとにさらに杭を刺す。これはどうだ?皆には少々物足りなく感じるかも知れないが、妥協案じゃないか?」
メトリックの言う提案に円卓の者達も頷き始める。確かにこの妥協案は皆が賛成するだろう。
全員で殺っても気持ち良くはない。代表者を出して、そいつに殺らせても不満の声が上がる。
「うむ。それでは魔王.....いや元魔王か、アラン・エリアルを杭にて処刑する。準備もろとも合わせて日にちは一週間後。ではこれにて解散!」
メトリックが最後のまとめを言うと、次々に円卓の者は転移する。進行役の者にも転移を促し、ネルクレスとメトリックは二人きりになる。
「メトリックよ。やはり魔王は何をするつもりでいると思う?」
「......こう確定した事はまだ分からない。しかしあの魔王の事だ。すんなりと取引に応じた時点でおかしい。私とネルクレス以外の奴らは魔王の強さを知らない。」
「ああそういえばそうだったな。魔王........懐かしい響き。」
その時、二人以外誰もいない部屋に何者かが転移して来た。
「おお、帰ったかハイム。して、結果は?」
「あいつには何かの策があったらしいが詳しくは言わなかった。ただ軟弱な考えで取引に応じた訳ではなさそうだ。」
「やはりそうだったか。ハイム、魔王の処刑時間が決まった。一週間後だ、向こうの奴らにも伝えておいてくれ。」
ハイムは嫌そうな顔をするが「はいはい」と適当に返事をする。
「それじゃあ俺は帰るぞ。こんな辛気くさい所居られるかっての。」
言うべき事を報告するとすぐにハイムは転移してしまった。
「ネルクレスの部下は風のようだな。」
「ほっほっほ。その風の雰囲気がまた良いのじゃよ。」
メトリックは苦笑いする。まるで反抗期の子供を持つ親のようだと思いながら。
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ヘイネの家の地下。そこにヘイネとバルデン、そして全身を真っ白い服を着た者がいる。
ヘイネは地下の部屋のさらに奥にある空間ライアが眠っている装置へと案内する。
「バルデン、この白い格好をした者が本当にライアを救えるのか?失礼を承知で言うがライアは今までどんな施しをしようが、起きる気配さえなかったのだぞ。」
「まぁまぁ安心しろって。お前がどれだけあの子を想ってるかは知ってる。今回は魔王を捕縛した報酬だ。その白い奴はかなりの力の持ち主。今お前に与えている力の一端。その大元だと思ってくれていい。」
「なっ?大元。それは無礼な事を言ってしまった。許してくれ。」
ヘイネは頭を下げた。しかし白き格好をした者は「いや別にいい」と左手を上げ、ライアに近づき観察した。ひとしきり見た所で白き格好をした者は一歩下がった。
その合図に合わせてヘイネとバルデンも一歩下がる。
白き者は何かを発動させようと力を解き放つ。
周りに光の小さな玉がふわふわと現れ始め、その小さな玉はライアの元に集まった。
そして神々しい光となってライアを包み込む。
「恵みの光よ癒せ[神癒]」
白き者がそう詠唱を唱えるとライアを包み込んでいた光は次第にその眩しさを失い始めた。
そしてその儀式のせいなのか白き者の顔が露になる。
その顔は整えられ神を思わせる。
「これでその子は大丈夫だろう。今はただ眠ってるだけ。」
「よしっ、一応これで全て終了したって事だな。」
「バルデン、魔王の処刑方法はどうなっている?並大抵な方法では殺しきれない筈。」
「安心しろって。これは魂ごと消滅させる特殊な杭だ。あいつの最後の瞬間、この杭を刺す。もしその前に転生させようとしてもこの杭を刺せば終わりだ。」
「それは安心した。僕もこれであいつらに優位に立てる。」
「ふっ。何処も一緒か。それじゃあなヘイネ。と言っても今は大泣きか。」
バルデンはライアを抱いて泣いているヘイネを見て笑った。
「魔の鎖はもう繋がっていると言うのに。」
捨て吐くように言った白き者の声は笑っているように思える。
辛口感想でもお待ちしています。




