再登校
ようやく春の暖かさが出てきた今日この頃。
ミネセスは隠れ家にて学園の制服に着替えている。
鏡に自分の姿を写し、どんなものか確認してみる。やはりその赤髪と相まって美しい。でも隣にいるイフンにはそれを言葉で発する勇気はない。
何故着替えている隣にイフンがいるかと言うと、それは勿論レイナ、エリカのコンビが仕向けたのだ。
一応リースに注意されたが二人は止める気は毛頭ない。
理屈として、ミネセスはイフンを守る任務をしている。ならば何時も一緒にいて当然だろうと言う見解だ。無論、ミネセスは納得している。ミネセス自身はイフンの好意に気がついていない。
イフンとミネセスは隠れ家から学園へと向かった。
学園に復帰したみんなは、クラスの連中からの質問攻めにあった。
「ねぇねぇ、リースさん。ヘイネの家ってどんな感じだった?」
「バカっあんた。リースさんは心に深い傷を負っているのよ。わざわざほじくり返す真似をしない。ごめんねリースさん。」
謝られたリースは「え、えぇ」と引き吊った笑顔を見せる。
やはりまだ心の傷があるんだなと、女生徒はそっとした。レイナの方を見てもリースと同じく質問攻めにあってるようだが、華麗に受け答えていた。
イフンも同じく質問攻めにあうが、同情の意図がほぼ全てを占めている。イフンは苦笑いで適当に返す。だがここで問題だ。
「ロント、しっかりとイフン君に謝れよ!」
「そうだ!」「そうよ!」「謝れ!」
ロントへのヘイトが高まったのだ。それも無理はない。今やこの学園は完全にヘイネの味方をしている。ごく一部はそうではないが。
ロントが非難されていく中、エリカがロントの前に移動した。
クラスの視線が一斉にエリカへ集まる。
「まぁまぁ。やってないと本人が言っているから良いでわありませんか。こういう存在はほっとくのが最適なんですよ。」
そのエリカの言葉にクラスも「そうだな」「エリカさんがそう言うなら」とほっておく方針に変わっていく。ロントは小声で「すいません。気を使われて」と謝る。
「いえこの位。アラン様の配下の一員なのですし。」
その時、パチパチパチと拍手が鳴り金髪のイケメンがやって来た。
ヘイネだ。ヘイネはエリカに近づく。
「いやぁ、エリカさん。貴女は本当に素晴らしい女性だ。そのような外れ者にも慈悲を与えるなんて。ところで今まで大丈夫でしたか?聞けば体調を崩されたと。」
ロントはヘイネを睨むがエリカが右手で制止させる。
「そこまで心配されるようなものでもありませんでしたし、ご安心を。しかしあなたこそ大丈夫ですか?見た所何か浮き足立っている感じがしますが?注意された方が良いですよ。」
「おっとこれは。失礼、最近嬉しい事が起きたもので。」
「へぇ。そんなに嬉しい事だったのですか?お聞きしてみたいものですね。」
言葉を放つにつれて段々とエリカの魔力が上がるのを感じとったリースは席を立つ。
それに気付いたエリカは魔力を下げる。レイナは「え~もっとやっちゃえ!」と顔で伝えるが、リースに頭を叩かれる。
その時、始業のチャイムが鳴りルー先生がやって来る。ヘイネは何か言いたげだったが自身のクラスへと戻る。
「えー皆さん。この度、またまた転校生がやって来ました。どうぞ」
ルー先生がそう言うと、扉がガラガラと開き赤髪の少女ミネセスが歩いて来た。
男子の視線はすぐさまミネセスへ行く。その中でイフンの視線が凄いのを、近くにいるレイナはイフンの肩をつつく。
「ほらほら、あなたもミネセスにアタックしないと他の男子に取られちゃうぞ?」
「えっ?い....いや僕は......」
「イフン、別にレイナ殿の味方をする訳ではありませんがアタックするなら速くした方が良いですよ。それとあまりにもミネセス殿に対しての反応で好意を抱いてるのが分かってしまうので気を付けた方が良い。」
イフンは思わず赤面した。仲間達には全てバレてるのだと。
と言うかレイナ達の勘が鋭いのではなく(レイナとエリカは鋭い)イフンの反応が分かり易い。さすがのリースもこれに関しては否定出来ない。
ミネセスはピシッと立ち
「ミネセス・エリードだ。そこにいる団ちょ......エリカは私と従姉妹だ。よろしく頼む。」
クラスがざわつく。あのエリードを名乗ると言うことはかなりのトップクラスの実力を持っていると認識される。魔王の腹心の子孫なのだから。
ミネセスをエリカの従姉妹と名乗らしたのは、変に怪しまられても迷惑だったからだ。エリードを名乗ればただ凄い存在が来たと喚起する。ミネセス自身の実力もこの時代と比べれば高い。
ちなみにデモクレスにミネセスの転校を手配させたのはエリカだ。
「ミネセスさんは......そうですね。一番後ろの席を使ってください。」
「了解した。」
ミネセスは後ろの席へと歩き出した。途中、イフンを見つけ頷きながらニコッと笑顔を見せる。
そして席に着く。イフンはまた赤面するがミネセスは
(よし、イフンを守るのに最適な席に着けた。)
の笑顔なのだが、イフンに知る由もない。
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暗闇。その中に手錠をされ、牢にいる者がいた。
その者はずっと暇そうな顔をしている。カタッカタッと誰かが来る音がすると思い、その者は覗き込んだ。
「夕食の時間か。」
「ああそうだ。」
男が食事を運んで来る。牢に付いている小さなテーブルから食事が運ばれる。
アランは躊躇せずに受け取り食べ始める。別にうまいとも、不味いとも言えぬ味だ。
男はその光景に少し驚く。
「お前、何かその食事の中に入ってるとか考えないのか?」
「特に。もしこの中に入れて毒殺するつもりなら、もっと良い方法があっただろ。例えばこの空間内に毒の霧を発生させるとか。」
「....そ、そうか。ならもう用事はない。」
そう言って男は帰る。
アランは食べ終わり、のほほんと壁に寄り掛かる。本当に何もない。周りを見ても壁か暗闇だけだ。
「そこにいるんでしょ。お兄ちゃん。」
アランは虚空に語り掛ける。
すると牢の向こう側からハイムがやって来た。
「ふっ。別に能力は衰えていないのだな。」
「勿論、お兄ちゃんの方こそまだまだ現役じゃないか。前はありがとね、イフンを助けてくれて。」
「イフン?ああ禁忌魔法の。礼は要らん。それより、何故取引に応じた?今のお前の実力ならば応じる必要はなかっただろう。」
「まぁそうかも知れないけど。ちょっとやりたい事があってね。」
ハイムは「ちっ」と舌打ちをする。
「あっ、もしかしてなんか計画してた?もしこの行動がその計画に支障を起こしたのならごめん。でもこっちも成し遂げたい事があるから。」
「もういい。お前、速くここから脱出した方がいいぞ。あの連中はすぐさま殺さないかも知れないが、じきにお前を処刑する。」
「へぇ、あの他人に厳しいお兄ちゃんがそんな心配するなんて珍しいねぇ。どうしたの?なんか嬉しい事でもあった?」
「ふんっ、そんな事はない。それとお兄ちゃんは止めろ。吐き気がする。やはりあれより一枚上手だったか。ならいい。言うべきことは告げた。」
ハイムはすたすたと何処かへいなくなった。
その背中をアランは見て、「やっぱり性格が柔らかくなったような?」と頭をかいた。
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