取引
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これも皆さんのおかげ、これからもがんばります。
「ーーここまでが私の罪です。ヘイネが変わった理由も存じ上げていました。今まで隠していてすいません。............そして先ほどまで嘘をついていてすいません。」
ロントは頭を深々と下げる。その場にどんよりとした空気が流れる。
「その女の子を助けたくてヘイネはさらなる力を欲したわけだな。でも疑問だ、どうしてヘイネはお前にライアと言う少女が生きてると知らせなかったんだ?」
「確かにミネセスの言う通りね。」
「恐らく、自分のやっている実験にロントは絶対に反対すると思ったのだろう。これを見てくれ。」
俺はヘイネの実験室にあった資料の一ページを指差す。
そこには初めに生命力の譲渡は可能か?と書かれており、その後の結果では微量だがライアの容態が回復したと書かれている。
その実験に使用した生命力は自分の周りにいる人だとも書かれていた。
恐らくヘイネの家で警備していた者達だろう。
その内容を見てロントは拳を強く握る。
「そういうことか。ヘイネ、お前は.....」
「相手の了承を得ているとはいえ、好ましくないね。でも僕がヘイネと同じ立場ならしちゃうんじゃないかな。それ程の人だったのなら。」
「その意見には俺も同じだ。しかしこちらとて、負けるつもりはない。」
アランは立ち上がった。
そしてずっと拳を強く握りしめているロントの手を握り
「辛いのは分かる。だが俺達にここで止まる事は許されない。ロント、そのライアと言う少女の墓の場所を教えてくれ。」
ロントは不思議な顔をした。
「ちょっと確かめたい事があってな。イフン、ミネセスさんはここで待っていてくれ。何ならロントもここで待ってるか?場所さえ教えてくれればいいし。」
元魔王に「さん」付けされた事に驚きながらもミネセスは頷いた。イフンがまだ俺が魔王だって知らせてない以上、言動にも気を配らないと。
アランの問いにロントは首を振った。
「いえ、大丈夫です。行きましょう。」
そして俺達はライアの墓へと向かった。
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「墓か....思ってたより豪華だな。」
ライアの墓は周りにある墓より一回り豪華に仕立ててあった。
「ええ。ヘイネの家は普通の家庭より裕福でした。恐らくそのおかげでしょう。」
「で、アラン様。確かめてみたい事とは何でしょう?」
「ああ、今から説明する。ロント、今からこの墓を返すが見たくないと言うんならそれでいいぞ。」
ロントは一瞬驚くがすぐに否定した。
普通、墓を掘り返すのは禁じられた行為だ。それは元魔王であっても同じことだ。
「しかし、どうして今さらライアの墓を?」
「あーちょっとな。まず最初に確認したくて。あのヘイネの家の地下にいたライアと言う少女は、クローンなのかそうではないのかだ。もしクローンだったらここの棺桶にオリジナルがいる筈だ。」
「他には?」
「これは俺の予測だが、この棺桶の中に何かがあるんじゃないかってな。ヘイネの性格上、この棺桶に何か誓いになる物を残してると思った。」
俺はそう言いながらも掘り返していく。無論、エリカとロントも一緒に手伝っている。
一メートルくらいだろうか、大分掘り進めていくとコツンッと硬い何かと当たる音がした。
その周りを丁寧に掘ると黒い棺桶が出てきた。
「これですわね。ライアちゃんがいる筈の棺桶。」
エリカがその棺桶を覗き込みながら言う。
ロントはその言葉に頷く。
「さて、この中にライアちゃんがいたらヘイネの地下ではそのクローンが。いなかったら本物が。果たしてどちらだろうか?」
俺は棺桶をゆっくりと開けた。
そこには骨がある訳でもなく、一つのロケットペンダントがあった。
そのロケットペンダントしかない棺桶の中を見てロントは「やはり.....」と声を漏らす。
「と言うことはヘイネの地下にいたライアちゃんはクローンではなかったのですね。」
「そういう事になるな。」
俺はそのロケットペンダントを手に取り、中を開けた。
その中には魔力石が入っていた。これは特殊な魔力石でこの石の中に文字を刻むのだ。でもその刻んだ文字は破壊しない限り消せないのであまり用途はなかったが。
俺はその中に刻んである文字を読む。
ーここに誓いをたてる。
ーライアを必ず死の底から蘇らせると。忘れるな、今日五月二十四。
ーその為なら悪魔にでも魂を売ろう。その為なら世界を壊そう。叶うのならば何も欲しいとは思わない。犠牲を払え?払ってやろう。命を捧げろ?捧げようじゃないか。
ーこれは罪。
ーあの時自分が「行こう」と言わなければこんな事態にはならなかった。
ー償おう。
ーロントは自分のせいのような雰囲気を出してるが違う。
ー自分だ。罪だ。
ーそして叶うその時、自分はいなくていい。罪は償わなくては。
ーこれは罪なのだから。
読み終わった時には横でロントが泣いていた。
知ったのだ。ヘイネが償おうとした罪を。
「うっ......うっ。やはりお前は俺の親友だ。」
俺はロントの頭に手を置く。
そして帰ろうとしたその時、黒い影のような集団がぞろぞろとやって来た。
エリカとアランは速攻何時でも戦える体勢に入る。ロントも遅れながらその涙を拭き、臨戦体勢へと入る。影の集団の中から以前会ったリーダーのような男が出てくる。
「まぁ待て。我らはここに戦いを宣言しようとした訳ではない。」
「ならなんだ?この子に花でも手向けようとしたのか?」
「それも違う。取引の話だ。」
「へぇ、取引ねぇ。何を欲しがっているんだ?」
「そなたの身柄だ。それと引き換えにこちら側で預かっている二人の少女を渡そう。」
その内容にその場が静まった。最初に言葉を放ったのはエリカだ。
「その内容が本当に信頼出来るのかしら?そもそもあなた達にその権利がありまして?」
「無論だ。ヘイネは我らの直属部下のようなもの。上司の命令を聞くのは当然だ。」
「ふーん。考えておこう。時間の指定は?」
「アラン様!」「アラン様!」
二人の声が重なって聴こえる。エリカに肩をがっちり掴まれ、とてつもない視線で睨んでくる。
アランの返答にリーダーは「ふっふっふ」と笑う。
「時間は明後日。場所は........先日逃亡した少年の周りのあの平原でいい。しかし.....クックッ。まさかこんなにも速く話が進むとは。意表を突かれた。」
「いざとなったらそのお仲間たちと一緒に俺達を襲う魂胆じゃなかったのか?」
リーダーは首を横に振った。
「そんな筈がなかろう。」
「だったらどうしてそこの透明化してる奴は俺に<超滅連獄炎>の魔法陣を向けているのかな?」
アランの指摘に明らかに透明な空間が揺れた。
<全身透明化>は精神の揺れがそっくりそのまま魔法維持に伝わる。その空間が揺れると言う事はその使用者の精神が揺れているのだ。
影の集団にも動揺が走ってるのは見てて分かる。
エリカは何かそういう隠れてる雰囲気があるとは分かったが正確な位置は分からなかった。ロントはその気配さえも分からない。
アランはその透明な空間を見て「あっ」と声をあげた。
しかもその透明化してる空間を指差しながら。
「この子、前にいた子じゃん。久しぶりだね。あれから工夫したらしいけど最後の詰めが甘いよ。指摘されても動揺しないようにしないと。精神の揺れは魔法維持にすぐさま伝わるからね。」
まるで教え子に教えるようにアランは語り掛ける。
周りの影の集団はポカンとしていた。何せ仲間のように喋っているのだから。リーダーが咳払いをして注目をごこっちに向ける。
「やはり流石だ。すまない、試すような真似をして。こちらはそなたがこの<全身透明化>を見破れる者なのか知りたくてな。」
「で、結果は?」
「予想以上で我も困る。」
だがそう言うリーダーの顔は隠しているのだが、笑ってるように見えた。
「おいおい。困ってないだろ、その顔笑ってるぞ。」
リーダーは左手を顔に当てる。そして自分の顔が笑ってる事に気付いた。
「笑っている.....。そなたのような強き者に出会えて我も嬉しいのだろう。最近は弱き者ばかりしか相手にしなかったからか。ボスもなかなか相手にしてくれないし。」
「なら俺が相手になってやろうか?」
「アラン様!」
またエリカが睨んでくる。まぁそりゃそうだ。そんなポンポンと戦いを仕掛けてもただ魔力を消耗していくだけで、こちらの得はあまりない。
「いいのか?我としては嬉しい限りだが、そちらには何の得もないぞ?」
「いいよ別に。でもそうだなぁ。一発勝負にしないか?お互い全力とまではいかないが、そこそこ魔力を込めて。全力でしたらこの周りごと吹き飛んでしまうしな。」
「おおそうか。それもそうだな。良し、魔法障壁をこちらの者達で張らせる。」
「二人とも。下がっててくれ。」
「はぁ。これだからアラン様は。はいはい分かりました。」「承知致しました。」
そしてリーダーは周りの部下達に命令した。部下達はアランとリーダーの周りを囲み、大人数で魔法障壁を張った。この丈夫さだったら平気だろう。
「ふっふっふ。ではいかせてもらうぞ?」
「こっちも準備は出来てる。」
特に初めの合図は決めていなかった。
しかしアランとリーダーはほぼ同時に魔法を放った。
「<超滅連獄炎>!!」「<寒零度吹雪>!!」
アランは万物を凍えさせる吹雪を。リーダーは万物を燃やし尽くす炎を。
二人の対極する魔法は中央でバコォォオオンンと音をたてぶつかった。大気が震えているのが皮膚にひしひしと感じる。二人の魔法のぶつかっている面はまるでこの世の終わりのような光を放っている。
「ははっ。強い!強過ぎる!久しぶりだ、こんな感覚になったのは。」
「俺も驚きだよ。まさかここまで出来る奴がいたなんて。」
リーダーは苦悶の表情をして魔力を込めるが、アランは涼しい顔で魔力を込める。
周りを見れば影の集団達が苦い顔をしている。もうここいらが限界だろう。
アランは炎の放射を調節してあまり負担が掛からないようにさらに魔力を押し流し、<超滅連獄炎>を上回る吹雪を発生させる。
そしてそのまま万物を燃やす炎を覆い尽くす吹雪にて、<超滅連獄炎>を圧倒した。最後に必死に抵抗したらしいが、アランの<寒零度吹雪>には敵わなかった。
その瞬間、周りにあった魔法障壁はパリンッと割れた。
アランはすぐに<寒零度吹雪>の魔力を封じ込める。辺りが雪景色になろうとするが、一瞬にして普通の景色に戻った。
「「アラン様!」」
すぐに二人がアランの元へ駆け寄る。
同じようにリーダーの周りにも部下達が駆け寄っている。
「はぁ。本当にそなたは予想外だ。そうだな、礼として教えよう。ヘイネの裏には我らが、我らの上にはとある方がいる。そしてそのとある方は神のような存在と付き合っている。」
「そんな事、俺達に教えちゃっていいのか?下手したらお前死刑だぞ?」
「ふっ。そんな事どうでもいいくらいに満足したと言うわけだ。対価として受け取ってくれ。」
リーダーはそう言うと、影の集団を引き連れていなくなった。
影の集団が見えなくなるとエリカは思いっきりアランの頭を叩いた。
バコンッと音が鳴ってもおかしくない勢いで、ロントも唖然として動けない。
「本当に自覚が足らないのでしょうかねぇ~。毎度毎度言ってますのに、変な所に食い付く癖は。そうですわねぇ~、もう一発くらい行きましょうか?ねっ、ロントもそう思うでしょ?」
ニコッと笑うエリカにロントは頷くしか選択肢はなく、アランはただ待っているしかなかった。
影の集団の一人。アランに想いを寄せる者がいた。
(また褒められた。やっぱりあの人は最高の存在なのね。そんな方に見られるなんて......ああ、本当に嬉しい。次はもっと褒められるくらいに透明化魔法を練習しなくちゃ。)
書籍化.................夢だよな~。
どうか受賞しますように。




