変わる理由
最近寒いですね。
春よ、来い。
ーそれは数年前ー
「おい、ロント。お前また喧嘩したんだってな。あれ程駄目と言ったじゃないか!」
「なんだうるさいなぁ。別にいいだろ、ヘイネには関係ない。」
ぶっきらぼうに顔を反らすロントにヘイネはイラつき「あー!」と唸り出す。
その光景を見て笑う小さな女の子が一人。茶髪の短い髪で髪先はくるくるしている。これがライアだ。
ベンチに座って顔を反らすロントに、立っているヘイネは怒り、ライアはその隣でいつも笑っている。それがこの三人の日常だ。
今回もいつも通りにヘイネが怒ってる。
「だってあっちが悪いんだ。俺様なんかに喧嘩を吹っ掛けるからだ。」
「違うだろ!後からみんなに聞いたが、ロントがいたずらを仕掛けたからと言っていたぞ!」
バレたロントは決まり悪そうに舌打ちする。
その行動にさらにヘイネは「やはりロントが悪いじゃないか!」
なかなか自分の非を認めようとしないヘイネは隣にいりライアに問う。
「ライアから見てもロントが悪いよな?」
「ん~。どうなんだろうね?ふふっ。」
楽しそうにライアは答える。その返答にヘイネは「ぐぅぅ」と唸る。
「はっはっは!」とロントは高らかに笑う。
そう、これが日常。
それが崩れるのは早い。
最初はこの一言から始まった。
「なぁロント。あの立ち入り禁止の森。一体何があるんだろうな?」
この近くにはしっかりと柵で囲まれた森がある。そこの森は祖父や両親からも行くなと言われている。まだまだ小さい子どもだ。行くなと言われて、行きたくなるのは世の常だ。
「んー、確かに知りたくなるよな。じゃあ行ってみるか。ふっ、そうと決まればワクワクしてきた。」
「探検家みたいで良いよな!ライアもきっと楽しそうだからって付いてくる。」
こうして三人は森に進んだ。
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深い森だ。恐らく魔法を使っているのだろう。外見からは似ても似つかない広さだ。
ライアは途中で拾った木の棒を杖がわりに使っている。ヘイネとロントは木々の枝に掴まりながらも進んでいく。
「はぁ。疲れたな、ちょっとここらで一休みするか。」
「賛成だ。」「いいわね。」
倒れている大木に座って三人は一休みする。
真上を見上げれば太陽が眩しく光って暑い。ヘイネが水筒を出して三人分のコップに水を注いで渡す。
二人はその水を飲んで一息ついた。
「ん~。やっぱり何もない、どうして周りの大人たちは入っちゃ駄目って言うのかなぁ?」
ライアが疑問に思うほどこの森に入っても何もないのだ。
ヘイネもロントもライアと同じように疑問を抱いた。相当奥深く入ってる筈なのだ。
ヘイネはその状況を見て、もう帰ろうと言おうとした時ーー
そいつらはやって来た。
「二人とも、あれって.....」
ライアが指を差す。
そこには狼のような獣がうじゃうじゃと三人の周りを取り囲んでいる。
その赤い目は今日のご馳走を見る目だ。このままじゃ食われる。そうロントは直感する。
「ヘイネ。俺が引き付ける。ライアを連れて逃げろ。」
「何を言っている!お前の方こそライアを連れて逃げろ。お前は近距離しか能がないから不利だ。それに比べ自分は魔法に関しては得意分野だ。」
同じく囮になろうとするヘイネにロントは機嫌悪そうに舌打ちをし、ヘイネとライアを突き飛ばした。そしてロントは「うぅぅおおおぉぉ」と叫びながら狼の群れに身を投げた。
狼の群れは第一目標をロントにする。
これで狼達はヘイネとライアよりロントを狙う。そしてその隙に二人は逃げる。
そのロントの行為をすぐに理解したヘイネは「くそっ!」と言い残しながらもライアの腕を掴み、ロントとは反対側に逃げる。
「来いよ!毛皮にして売ってやろうか!」
挑発するロントにヘイネは睨み付ける。生きて戻れ、と意思を込めて。
そのヘイネにロントは親指を立てて答えた。当たり前だ、と意思を込めて。
「ねぇ!ロントは?助けてあげないと」
心配するライアを無視してヘイネは突き進む。方向は合ってる筈だ。
後ろを振り返るとまだ追いかけている。
ヘイネは右手を後ろに向け<大炎>を放つ。その炎は運良く追いかける狼に当たり、狼の体を焼いていく。
「よし、この調子なら!」
今のヘイネでは<大炎>が攻撃魔法の中で最強だ。
その後も魔力切れを訴える体に鞭を打ち、何とか狼の数を減らしていく。時には前方の大木の根元を狙い、燃えて落ちてきた所を狼に当てたりもした。
「<大炎>!!」
「ググゥゥゥ」と唸り声をあげ、最後の狼は焼かれた。ヘイネはその場に膝をついた。
魔力切れなのに魔法を使った代償だろうか?とてつもなく頭が痛い。
ライアがそのヘイネの肩を持ちながらさらに森を抜け出そうと足を進める。差し込む光が強くなってきた。きっと入り口に近づいたのだろう。
そう希望を持ちながらヘイネとライアは進んだ。
しかしこの森は普通の森ではない。
その先にいたのは、もうぼろぼろになりつつも立っているロントであった。
この森の別の呼び方は「ループの森」深い所に入れば、一生ループしてしまって帰ることは出来ない。地獄の森。その中で、狼の群れは永遠と追いかけてくる。
「ど....うして....戻ってきた!?」
「そんな......ループだと?」
狼の群れは笑う。ようやく気がついたのかと。
その絶望を狼は笑う。
そして一匹の狼がロントを食いちぎろうと、大きくジャンプした。
今のロントには避ける力も残ってはいない。
ロントは目を瞑った。
「だめ!!」
目を開けたロントは気付く。目の前ではライアが狼にお腹を噛み付かれている惨状を。
ロントはライオンのような雄叫びをあげ、その狼を殴り飛ばしライアを助ける。
ヘイネも体をふらつかせながらも瀕死のライアに近づく。
男二人の涙がライアの顔に落ちる。
しかしそんな二人をライアは慰めるように二人の顔に手を当てる。
「そんな.....悲し...い顔をしな....いで。前みた...いに仲良くしよ。あ....の.....ころみ....たいに。」
そう言った時にはその手に力は入っていなかった。
ポトリ。手が地面につく。
「くっそそぉぉぉお!<大炎>!!」
ヘイネは怒りに身を任せ、巨大な炎を狼に当てる。ボボォォと燃え上がるが代わりの狼なら周りにいる。
ヘイネ自身も倒れる。魔力切れの限界だ。
もう無理なのか。
ごめん。ライア、今からそっちに行くよ。
そう微かにヘイネの言葉が聞こえた。
ロントは立ち上がった。
ヘイネは視線をロントに向ける。
しかし不可能だ。ヘイネは思った。
その行動にリーダーのような狼は遠吠えを出し、命令する。
ざっ、と一斉に狼達は動き出した。
ロントも分かっていた。でも生存本能が言う。死にたくないと。
その時だった。
「<大地獄炎>!」
横から地獄の炎がやってきて狼の群れを黒焦げにしていった。一体どういう事だろうか?それはヘイネも思った。すると、後ろから小さな金髪の女の子を抱えた金髪の女性がやって来た。
「大丈夫かしらあなた達?あら、こんなに怪我をして。リースを連れ戻しに来たと思ったら、一体どうしてかしら?」
そう言いながら、ヘイネとロントに回復魔法を掛けていく。
ヘイネはかすれた声で言う。
「あの子....ライア、ライア。」
女性はヘイネが言うライアの元に近づくが苦悶の表情をする。
その表情に二人は絶望する。分かってはいたんだ。でも信じられない。
「ごめんね。君たち。」
女性を見ているヘイネとロントは狼の群れを倒した男性に眠らされる。
「やっぱりその子。死んでしまっているんだろ。」
「.....ええ。私も途中から来たからよく分からなかったけど。この傷。あの狼にされたのね。」
女性はライアに回復魔法を掛け、その傷を癒す。傷が付いたままでは可哀想だろう。
「なんでこの子達はこんな森の中へ?」
「確かにそうね。リースは興味本位で来たのでしょうけれど.....」
女性の腕の中では小さい頃のリースが眠っている。
ここは生け贄を食らう竜がいる森でもある。しかしそれを知っているのは一つの家系だ。
「とりあえずその三人を連れ帰るか。」
「ええそうしましょ。まったく、この家系の者しか出口は通れないのに。本当にこの子達は可哀想に。」
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目を覚ましたロントとヘイネは泣いた。
周りの大人達にはあまり叱られなかった。これ以上言ってしまったらこの子達は自殺でも考えてしまうからだと後で知った。
葬式はした。
その棺桶の中までは見れなかった。もう苦しそうなあの二人を見たくないと言う大人の優しさだろうか?雨の降る中、二人は久しぶりに顔を合わせた。
「すまん。俺が弱いばかりに。」
ロントが謝ると、ヘイネは右手で思いっきり殴った。
「一番の原因は俺の方だ!お前じゃない。ロント!俺は強くなる。何を犠牲にしてでも。」
それからのヘイネは変わった。
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