さぁ、脱出を始めよう
評価付けてくれた方、誠にありがとうございます。
次は300ポイントを目指してがんばります!
ーイフン視点ー
「ねぇ、ヘイネ様に負けたあいつの居場所。知らない?」
「知ら..........ない。」
その返答に女性は機嫌を悪くし、一発蹴りを入れる。
「本当にめんどくさい坊やだね。さっさと吐けばいいものを。あーあ、なんで私がこんな事をやらされているのかしら?」
イフンはヘイネ達に連れ出された後、この牢屋に入れられ尋問........いや拷問を受けていた。
イフンがアランの居場所を知ってると思われているからだ。実際、イフンはマジで知らない。
女の子には優しく、男には酷く厳しく。これがヘイネの心得だ。
イフンを拷問した女性は牢屋に鍵を掛けて出ていった。
これが一体どこまで続くんだろうか?
実際にはそんなに時間経過はしていない。だがイフンからしてみれば、地獄のような時間だ。
「うっ.....うっ............くるしぃ。いたぃ..............」
そんな僕の悲痛な叫びが小さく牢屋の中に響く。
助けてくれる人はいない。そう思ってた..........................
「大丈夫か?待ってろ、今回復魔法を掛けてやるから。」
その女の声がしたと思ったら、次の瞬間イフンの傷がみるみる治った。
今さっきまで死にそうな体も動けるようになっていた。振り向くと、深い赤色の髪を肩の辺りで切った女性がそこに立っていた。
イフンは口をパクパクして驚いている。勿論その姿に見とれているのもある。
「あ.....あなたは?」
「しっ。あんまり大きな声を出したらせっかくの潜入がバレちゃう。」
女性はイフンの口に手を当てる。もうそれだけでイフンの心臓はバクバク中だ。
「私はミネセスだ。以後、そう呼んでくれて構わない。お前の名前は知ってるから大丈夫だ。イフンであってるだろう?」
「はい。」
「それじゃあ任務通りに脱出するか。最初の難問はイフンを拷問していたあの女だな。んー、イフン、ちょっと酷い内容かも知れないが今から言うが遂行してくれるか?」
「勿論!お手伝い出来ることなら何でも」
自分の事を名前で呼んでくれていることに喜びを感じつつ、ミネセスの作案をしっかりと聞くイフンであった。
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ー女視点ー
あーあ、何でこの私がこんなクソつまんない場所にいるんだろ。せっかくヘイネ様が仕事を頼んできたっていうのに蓋を開けてみれば小僧の軟禁だなんて。
つまんなかったからヘイネ様に「小僧で遊んでいい?」と聞くと、良いと返ってきたので存分に痛め付けてるけど飽きてきたわね。
ここはもう使われなくなった塔をヘイネ様が買い取ったらしい。何でも、千年前の大戦時に使っていたがもう使う理由もなくて困ってたんだと。確かに言われてみればかなりゴツくて倒壊の恐れも感じない。
私は小僧のいる牢屋の部屋の出口で座っている。あの牢屋の部屋は臭いから、中で見張っててもいい気分じゃない。
その時、扉からゴンッゴンッゴンッと何者かが内側から叩く音がした。
どういうわけ?あの小僧にはそんな力残ってない筈なのに。
「うるさいよ!またあの拷問を受けたいわけ?」
そう怒鳴ると扉を叩く音が静かになった。なぁんだ、やっぱり怖いんじゃない。つまんないの。
私はゆっくり椅子に座ろうとしたが、またゴンッゴンッゴンッとさらに強い勢いで扉を叩いてきた。
ああ!もううるさいなぁ!
こっちは愛しのヘイネ様とも会えないのに........
「ああ!もう!<大地獄炎>」
大きな炎がうるさく叩く扉ごと吹き飛ばした。扉の周りは黒焦げになり、その先にいたであろうイフンも犠牲になっているのかと女は心配した。
あくまでイフンは捕虜、人質だ。死んでしまったら意味がない。
「あっ!ヤバ....やっちゃったかしら?」
私は恐る恐る牢屋の部屋に行き、イフンを探す。しかしイフンはいなかった。
「え?あの小僧は?」
「ここだよ、お姉さん」
私は後ろを振り返った。そこにはぼろぼろになりながらも右手を私に突き付けるイフンがいた。
私は「ふっ」と鼻で笑った。なんて愚かなのだと。
「あらあら、坊やも甘いわね。今が絶好のチャンスだったのに。バカね。もう死になさい<大地獄炎>。ヘイネ様には自殺したって伝えとこ。」
私は先に魔法を発動した。大きな炎がイフンを焦がそうと包み込んだ。ボボォォォオオと炎はその勢いを増していき、次第に燃え尽きていく。
「まぁ死体くらいは残さないようにしたあげるわよ。」
「その言葉、そっくりそのまま返してやろうか?」
不意に横から声が聞こえると感じた時にはもう遅い。
私の周りに、まるで私を取り囲むように魔法陣が描かれたのだ。私は抜け出そうとするが、もう身動きが何も効かない。言葉も「ん」さえ言えない。
目だけはしっかり機能している。その目で自分を見ると、自分は魔法陣のが描かれた帯のような物で縛られていた。
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ーイフン視点ー
「ふぅ。ひとまず何とかなったな。」
「あの、この魔法はどういう効力なんです?」
「ん?お前は魔法陣をそっくりそのまま解析出来るんじゃないのか?」
「それは僕の魔眼鏡のおかげなんです。裸眼だとあんまり見えないんです。」
ミネセスの美しい姿は裸眼でも分かったとは、口が裂けても言わないようにしようと心の中で誓うイフンであった。
ミネセスは辺りを物色し、それらしい魔眼鏡を見つけてイフンに渡した。
僕は渡された魔眼鏡で縛られた魔法陣を読み取る。そのあまりにも凄い魔法につい「え!?」と声が出てしまった。だってこんな凄い魔法.....
「気付いたか、この魔法は第三者からの介入がない限り自分ではどうにもならない。魔法を使うことも体を動かすのも不可能だ。」
「凄い..................綺麗な魔法陣の書き方.......。」
僕はその魔法陣の美しさに称賛の声を上げる。
ミネセスはそのイフンの様子に誇らしく胸を張り、自慢気に「そうだろ」と主張する。
イフンはミネセスの張った胸に目がチラッといくが、すぐに隠した。
幸い魔眼鏡で目線は誤魔化せたようだがちょっと危なかった。
「で、これからだが。この女はどうする?」
「ど、どうするって?」
「いやだってイフンはこの女に痛め付けられたんだろ。なら別にお前はこの女に何でもしていいんだぞ?殺しても私は何も言わないし。」
それからーー、と言葉を続けそうになるミネセスをイフンは制止し
「そんな事しないよ。確かに悔しいけどーー」
「だったら」
「そんな事したら負の連鎖は終わらないよ。何時の時代だって誰かがこの痛みを飲んだから平和が訪れたんだ。」
そのイフンの真剣な表情にミネセスは言うのを止めた。
「そうか。ふっ、お前は案外よく分かってる奴なんだな。少しばかり過小評価していたがその必要もないか。」
「いやそんな事ないよ。今さっきの炎を守ってくれたのもミネセスさんだし、自分一人だったら何も出来ないままでいた。」
先ほど、<大地獄炎>を受けても僕が無事でいたのはミネセスがあらかじめ防御魔法を掛けてくれていたからだ。僕は何もしていない。
そんなイフンの謙遜にミネセスはぐっとイフンを抱き寄せた。
イフンの顔が紅くなるのもミネセスは気にしない。
「いいか?最初から自分だけで解決しようと思うな。そして謙遜も時には罪だ。ちゃんと正当な評価をもらってるんだ。素直に喜べ。これは私の魔団長の言葉でもある。」
ミネセスはゆっくりとイフンを放した。
そして「ふっ」と笑った。それだけでイフンの心はいっぱいだと今のミネセスは知る由もない。
「その魔団長はきっと凄い人なんだね。」
「あぁ、勿論。私の尊敬する人物だ。」
そのミネセスの表情はとても輝いていてまだ恋愛もあまりした事のないイフンは淡い嫉妬心を抱くが、その魔団長がエリカだと知るのはもうちょい後の話だ。
それから二人はかなり楽に塔の警備を掻い潜っていった。確かに警備態勢は要・警戒だが、あの牢屋の女を突破した二人には緩かった。
「しっ、............良し、行くぞ。」
「はい。」
僕は言われた通りに、警備員が行った隙に中腰になってするりとまた先へ進んでいく。
この塔は僕の思った以上に広い。僕が囚われていた所は塔の最上階だったらしい。よくミネセスさんはそこまで来れたなぁ、と聞いてみると
「ん?ああそうか言ってなかったか、私は特殊な異形種のスライムでね。君を助けに上に上がるのはスライムに変身して楽に進めたんだ。」
と返ってきた。最初その話を聞いた時は疑ったがミネセスさんが急に紅いスライムになったので信じるしかなかった。そんな人(スライム?)がいるなんて知らなかった。
何でも、その里を追い出されたらしい。そして今の所属している魔団長に助けられたのだと。
「おい大丈夫か?」
「あ、はい。ちょっと考え事を。」
「そうか。大丈夫なら良い。だが体調に違和感があれば言うんだぞ。折角助けに行ったのに体調が悪くてぶっ倒れても困る。」
ミネセスさんが僕に心配してくれる。ちょっぴり嬉しい。
ふと目の前を見てみると、もうそこは外へ通づる扉だ。ようやくだ。ようやくあの地獄のような塔から抜け出せる。
扉付近にいた人達はミネセスが無力化した。自分が思ってたよりも簡単に行けた。
「良し、これで救出任務は終わりだな。外へ出ても奴らはいるだろうし大変だろうがこの塔よりは少ない筈だ。私らの仲間は外れの森の中心くらいで待機してある。もし私が危なくなったら、遠いと思うがそこまで走れ。」
「分かりました。」
ミネセスはそのイフンの顔を見てさらに声を強めた。
「いいか、例えどんな事が起きても振り向くなよ。」
イフンはこくこくと頷く。だがしかし、イフンの中では例え何があってもミネセスは守りたいと思っていた。それが命取りになるとも知らずに。
「行くぞ、イフン。」
「はい。」
ミネセスはゆっくり扉を開けて外の様子を伺いながら出ていく。
周りには草原くらいしかない。見晴らしも良すぎる。それに辺りはもう夜になっており、タイミング的にもいいかも知れない。
ミネセスとイフンは走った。
どうせ見晴らしも良いんだから、遅く移動しても見つかるし走った方が得策だ。
二人は広大な夜の草原をただ走る。その時、二人の背後から<寒零度吹雪>が襲い掛かってきた。
それを早く察知したミネセスは振り返り、対抗魔法<超滅連獄炎>を放つ。
激しい炎と吹雪が重なり合い、やがて相殺された。
地獄のような炎を撃ち終わったミネセスは次の瞬間、急に現れた何者かの影に腹を切り裂かれた。
「ぐっぅ、」
「ミネセス!!」
「走れ!」
腹からドバドバと血を流しているのに、それでもミネセスはイフンに命令した。
何者かの影は距離を取りさらなる攻撃魔法<寒零度吹雪>を放った。
ミネセスは魔法を撃とうとするが腹を裂かれて動きが鈍くなる。
零度以下とも感じる吹雪が二人を襲い掛かる。イフンの中ではその吹雪が襲う一秒一秒が永遠とも思える長さに伸ばされていた。
な......なんで...だよ。どうして.....ミネセスさんと言う素敵な人に会えたのに。
すぐにお別れ?いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
そんなこといやだ。もっとミネセスさんの事を見てたい、ぎゅっと抱き締めてみたい。
ならやるしかない。でもやれる?
いやそれしかないんだ、それしかそれしかーー
そう考えた瞬間にはイフンの右手に魔法陣が完成させていた。
それは危険な魔法、、昔、愛する者を守りたいが為に生み出した禁忌魔法。
その名は<禁忌庇護絶対陣>
愛する者を守りたいが為に己の生命力を代償とし、絶対的なる防御をその愛する者に捧げる。
イフンが発動した禁忌魔法はミネセスの目の前に白く神々しい壁を召喚した。
その絶対的な壁は零度以下の吹雪をかき消した。
「...!?」
影のような見た目の奴は声に出しはしないが、驚いている。
「へぇ、すげぇな。これが禁忌の魔法か。初めて見た。俺が助けるまでもなかったか。」
「あなた.....は?」
生命力を代償にしたのでかすれた声でイフンは尋ねた。
「俺?んーと、お前んとこの魔王の兄貴だ。」
それは、まるでアランを成長させたような姿......いやそれもそうだ。何せその人はハイムなのだから。
その手には例の銃を持って。
お兄ちゃん、登場




