逃亡
最初から断っておきます。今回はボリュームが少ないです。
色々切りの良い所悪い所を計算した結果、こうなりました。
時が止まった。そう思える程の静寂がこの部屋を支配する。
「すいません勝手に。何分、初めてのご挨拶をする予定だったのですが興味本位で。」
「ほう、興味本位でね.....。」
アランの言葉にヘイネは疑惑の眼差しを向ける。アラン自身もこんな分かり易い嘘で通ると思ってない。ただ考える時間が欲しいだけだ。
ヘイネは二人に近づきエリカを見て、次に女装アランを値踏みするように見た。
男にこうも見られるとなんかムズムズするが、そこは我慢する。今ここで戦闘を起こしてもいいが、なるべく穏便に済ましたい。
ようやくヘイネの目線が戻る。
「そういや、貴女たちは新入りと言っていましたがどうしてここへ来たのですか?」
「どうしてとは?」
ヘイネは自分のデスクに座る。社長のように。
「志望理由だよ。」
「それは言わなくても分かってるのでは?ここに来る理由など決まっていますでしょう?」
「おっとこれは失礼した。すまないね二人とも、私の為に尽くしてくれるのに酷い言いようして。ここ最近は少し浮き足立っていてね。何事にも警戒してしまうんだ。」
ヘイネはペコリと頭を下げる。
二人は「いえいえ」と首を振る。
「それで、貴女たちは僕に忠誠を誓っているんだよね。」
「はい、そうですが。」
「なら今からする事にも何も言わないよね。忠誠を誓っているのならば。」
そう言ってヘイネはアランの目の前に行き、手を差しのべる。手を取れと言うことか。アランはそのヘイネの手を見てその理由が分かった。
「そういう事か。」
「ん?今何か言ったかい?」
「いえ何も。」
アランは内心ため息をつく。ヘイネの手にある魔法陣は服従の魔法だ。それもかなり強い。この手を取ればあっという間に俺はヘイネの所有物になってしまう。
ヘイネはチラチラと目線を変える。
どうする、なるのか?ならないのか?そう幻聴が聴こえてくるようだ。
エリカの方もアランの次の行動を予想しようとするが分からない。
アランはそのヘイネの手に触れようとする。ヘイネの頬が上がっているのが目に見えて分かる。
だが、そのヘイネの頬も勢いよく扉を開けた伝令の女性によって下がる。
「緊急です!イフンが脱獄致しました!現在、行方不明。詳細な位置を魔法で特定しようとも、妨害されました。しかも謎の部隊の襲撃!」
その報告にヘイネは顔を歪める。それも酷く。だがすぐに通常の顔に変え、指示を出した。
「すいませんお二方、さっきの続きは後程。」
ヘイネはウインクをして部屋を退出する。残された俺達はそそくさと家を後にした。家の中は慌ただしくて別に声も掛けられなかった。ありがたい。
外へ出た俺達は森の中の隠れ家でヘイネの地下で見た物の整理をしていた。
あの時、エリカは数々の資料を別の紙に複製していた。まぁ、おかげで整理する量も尋常でないけどな。
エリカが作ったコーヒーを資料が乱雑する机の上に出す。
俺はそのコーヒーの一口飲む。
「それで、何故先にイフンを救出したんだ?」
「おや?バレていましたか。」
エリカは小悪魔の笑みを浮かべる。
「この状況下でまともに動ける軍はエリカの所くらいなものだ。デモクレスからの俺への報告もない。他の軍も俺に一報程度はする筈。それがないと言うことはーー」
「私の独断......でしょうか。」
「そうゆう事。まぁ別に俺は独断とかは咎めたりしないし、普通に気になっただけ。」
「ん~。そうですね、結論から言うとたまたまです。適当に選んだ箇所にイフンがいたので、救出をと。まさか私も一発目から当たりを引くとは思ってもいませんでした。」
「で、今イフンは何処に?」
エリカは「ちょっと待っててください」と言って部下からの報告を待つ。
数分後、
「分かりました。ここから南東にある洞窟内らしいです。」
「そうか。洞窟内........身を隠すのには丁度良いな。しばらくはそこにいてもらおう、今連れ出しに行った所で見つかり易くなるのは目に見えている。」
「そうですわね。それではそのように命令をしますわ。迎えは明日でよろしいでしょうか?」
「うん。俺はこのまま整理してるつもりだし、向こうもその方がいいだろう。今辺りは夜だろ。」
エリカは早速連絡を入れた。
ー数時間後ー
「うーん。一通り終わった....か。」
「そうですね、と言うかよくヘイネはここまで資料を作成したものですね。それほどあの女の子に対する思いが強かったのが分かります。」
俺は頷き、ソファーに寝っ転がろうとする。ボスンッとソファーから音が出る。
アランは頭にある柔らかい感触に疑問を感じる。このソファーに枕的な物あったっけ?
目を開けて上を見るとエリカと目が合った。
「え、.....なんで?」
「アラン様、自分の内に心を溜め込むのはもうお止めください。いつか壊れてしまいます。」
胸がきゅっと締め付けられたように感じた。心にグサッとナイフを刺されたように。
「別にそんなことなーー。」
「あります!!」
急に大きな声を出したからびっくりした。
「悲しいのでしょう?心配なのでしょう?悔しいのでしょう?自分の力なら何時でもヘイネは倒せる。だが仲間達を犠牲にしてしまったら意味がない。もどかしい気持ちがぐるぐると自分の中を駆け巡る。」
エリカの言葉は続く。
「今ここにいるのは私だけです。泣いていいんですよ。私はただアラン様に付き従う者ですから。」
アランはエリカの膝枕の中で撫でられながら眠った。
まるで親に慰められている子供のように。
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100ポイントで嬉しがっていた自分が懐かし~。
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