秘密
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「だ、か、ら............なんで気づかないんだよ。明らかに胸ないし、足とか筋肉質だろ。」
アランは自分の姿を鏡で見ながら呟いた。
横にいるエリカは満足のいったようにニコニコしている。もしかして...........前々からこの女装計画は始まっていたのかも知れない。だとしたら怖いなぁ。
今現在、俺......いや私だったか。私とエリカは誰もいない部屋の鏡の前に立っている。
家の中に入れたのにはいいが、すれ違う人々にチラチラ見られるのだ。だからこうして誰もいない部屋にいる。
「でもやっぱりあの人達はアラン様の姿を見ていましたし、その姿に見とれてたのでは?」
「ないない。ほら、どう見たって男の足でしょ!」
そう言ってアランはエリカに足を見せるが、普通にキレイな女の子の姿にしか見えない。
「アラン様、私から言わせれば女の子の足にしか見えませんよ。しかも女の子の服装ですし、凄く似合ってますよ。ダークなお姉さま的な?でも実はちょっと抜けてる所がまたそそるみたいな?」
「マジで?そそるって.........」
「まぁ良いではありませんか。そのおかげでここまで来られているのですから。」
気落ちしているアランをエリカは宥めた。
「よし、今さら何を文句言ってもしゃーない。気持ちを切り替えてヘイネの自室とか漁るか。」
「そうですわね。しかし、アラン様お気づきでしょうか?外からでは感じる事の無かった歪な魔力をここにいると感じます。」
「確かにそうだよな。私一人の勘違いでも無かったか。ならば行くべき所はそこだな。」
私は扉をゆっくり開け、周りを気にしながら地下へ続いてそうな場所を探す。
コツコツと靴と床がぶつかる音が響く。
一階の探索をしたが、それらしい階段は見つからない。やっぱり隠し通路とかから行くのだろう。ならば仕方ない、ヘイネの自室から探索するか。私達は二階に上がり、適当にすれ違った人に聞く。
「あの、すいません。ヘイネ様の自室はどちらでしょうか?」
「え、私?ああ、ヘイネ様は三階に上がって右手の方向に行けば着くわよ。と言うかどうして?」
「初めて来たので、ご挨拶をと思いまして。」
エリカが答える。
「あらやっぱりそうなの。そうだと思ったわ、こんな美人な子忘れる訳ないものね。最後に握手だけでもどう?」
「はい。」
アランはそっと手を出す。しかし相手は勢いよく握手してくる。そして忘れんばかりに握手を楽しむ。アランが無理やりに離した時には相手は残念そうにしていた。
なんでそんな悲しそうにするんだよ!てか、分かるだろ。ゴツゴツしてるだろ!
「それじゃあね、また会う機会があったらよろしく。」
「それではまたの機会を。」
私達は言われた通りに三階に上がった。三階には誰もいない。気配を察知しようとしても引っ掛からなかった。あの女性の言うことが確かなら、右手の方向だったっけ。
早速向かってみると、あの女性が言った通りに一つポツリと扉があった。
私は扉に耳を当てて、誰か中にいるのか確認した。気配を隠しているとしても、音は隠しきれない。生きているだけでも心臓の鼓動はするのだから。
「やはり聞こえないな。どういう事だ?」
「現在は学園にでも行っているのでしょう。彼も学園の一生徒ですから。」
「そうだったな。それじゃあ」
私は扉を開けた。ヘイネの自室は自分で思ってたよりも質素だった。
本棚で囲まれた中心にデスクがある。恐らく書き途中だったのであろう、途中まで書かれた紙がデスクに残されていた。
二人は何かないかデスクや本棚をくまなく探す。
すると、鍵の掛かっている引き出しから一枚の写真が出てきた。そこには子供の頃のヘイネと思われる男の子と、隣に小さな女の子が笑っていた。
「それは何ですの?」
横からエリカが覗き込んでくる。
「多分この男の子はヘイネのちっちゃい頃で合ってると思うけど、その隣の子は分からないな。わざわざ引き出しに鍵を掛けると言うことは、余程重要な写真なのだろうけど。」
「ヘイネにとって大切な人との写真ですね多分。」
「ま、これを持ち出してもしょうがないか。エリカ、この部屋に隠し扉的な物はあったか?」
エリカはすぐ側の本棚に立ち、とある本を引く。
すると本棚がガガガッッと動き出して地下に繋がると思われる階段が現れた。
「え.......そんなテンプレな......。」
「ええ。私も試しにやってみただけだったので正直驚きです。まさかこんなありきたりな仕掛けとは。」
「それでも見つけられたのは良かった。警戒しつつ進むか。」
「了解。」
私とエリカは先がほのかに暗い階段を下る。一体何階分下っただろうか、そう思う程に長かった。
ようやく何か光りが見えて来た。
「ここが地下なのか。」
そこにはなにやら危険な匂いがする本だったり、紙に魔法陣が書いてあったりと乱雑した空間であった。非常に暗く、周りには最低限の光りだけが備え付けてある。
机には何かの実験の様子を示した冊子があったのでアランは手に取る。
そこに書いてあった内容は、蘇生魔法の実験データだった。
蘇生魔法、一般的にはまだ完成出来てはいない。瀕死の状態からの回復は出来る。転生の魔法も現代では、一般的ではないそうだが可能だ。
何故蘇生が不可能なのかは色々な仮説や噂等が出回っている。
ヘイネはその蘇生魔法を研究していたらしい。しかし、不思議な点がこの資料にはある。
この資料には蘇生よりも、もっと違うものを研究しているようにしか見えなかった。
「エリカ、これを見てくれ。」
「はいはい。えーとこれは蘇生魔法ですか?いや........何これ?蘇生よりかは、別の実験でしょうか。」
「エリカも思うよな、恐らく俺の見立てではこれは瀕死状態からの意識の覚醒の実験だと思う。」
「瀕死状態......ですか?それはもうとっくに出来る項目では?」
「ああそうだ。しかし、ヘイネが救おうとした奴は相当特殊な事例だったらしいな。ほらここ、殴り書きだが失敗の二文字がある。」
アランは冊子の一ページを指差す。
「だとしたら、何故ヘイネはその子を病院へ連れて行かなかったのでしょうか?」
「うーん。さっぱりだな、とりあえずはそこら辺の物を漁るか。」
「そうですね。でもあの時感じた歪な魔力は何処でしょうか?」
アランとエリカは部屋をくまなく探す。石の壁から何か不思議な感覚を感じとったアランはそこを手でコツコツ叩く。
やっぱりこれは奥へ繋がる所だな。反響音が別の壁と違う。
アランは手に魔力を込め、その壁を慎重に壊していく。帰る時にバラバラに壊したら直すのに面倒だからだ。丁寧に分解していくと、また広い空間がそこにはあった。
幻想的な緑色の光りだけが光源としてある。
「ここは?」
「まぁここまでしてヘイネが隠そうとしたんだ。相当な代物なんだろう。これを見てくれ。」
アランは中央にある一際大きな装置を指差す。その装置の中には先ほどヘイネの引き出しから出てきた写真の女の子と瓜二つ......いや同一人物が安らかに眠っていた。
「この装置.......そういう事でしたか。だからあそこまで。」
「ヘイネはこの女の子を救おうと研究していた。必死に挫折する事なく実験していた。蘇生魔法ではなかったのも、実際にこの子は死んでいないからか。確かに微量の生命力を感じる。」
「ではあの時感じた歪な魔力とは、」
「ああ、この子に施してある延命魔法装置の事で合ってる。この装置の魔法陣はヘイネが作り変えていたから歪と捉えられたんだろうな。」
エリカは装置の中にいる女の子をよく観察する。
「この子、目立った外傷はないようですがやはり意識がないのですね。そうなるとますます疑問点がありますね。アラン様、何かお気づきになられましたか?」
「気づく......か。うーん。後もう一歩って所かな。大体の想像は出来たけど、肝心の所が抜けてる。」
エリカは「おぉ」と尊敬の眼差しをアランに向ける。
いやそんな目で見ないでくれよ。ただみんなにも話していない事があるだけだし、それさえ教えれば誰にだって分かる内容だから。なんか自慢気に言った自分が恥ずかしいよ~。
「あっ、少々長居をしてしまいましたね。もうそろそろここで退散しましょうか。十分な収穫もありましたし。」
腕時計を見たエリカが提案する。
アランとエリカは目立たないように壊した壁を直して、隠し階段を登った。本棚にある本をまた引くと本棚は元の位置に戻った。
私とエリカは目を合わせて笑う。二人ともこの仕掛けの簡単さに。
さて、ここからどう抜け出そう?
そう考えていると、急に扉が開いた。
「おやおや、美人なお客様が一体何の用ですか?」
ヘイネが笑ってそこに立っていた。
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