計画通り
ぬわーーー
遅れてすみません!
家の中はやはり造り欠け感がするだけで、変わった様子は見られない。
恐らく物の影に隠れているのだろうがそれ以外は普通か。言うとするなら、阻害魔法領域の内と言うことだな。
俺は「ふぅ」と息を整え、足を踏み出す。
その時、物の影から剣を持った男が斬り掛かってきた。
俺は剣を横にして盾の様に使おうとするが、急に男の意識が狩り取られた。
「うーむ。やはりあちこちに不良が.................え?アラン様?」
「おう、ロントさっきぶり。」
男の意識を狩り取ったのはロントだった。
「なんでこのような危ない所にアラン様が?」
「いや帰ったらイフンを誘拐したぞ、って手紙?脅迫文が届いていたからここまで来たんだ。ロントの方はどうしてここへ?」
「私の方はアラン様と別れた後、帰り道で何やらヘイネが不審な動きをしていたので尾行したらこのボロ家までたどり着いたのです。と言うことは、先ほどの騒ぎもアラン様でしたか。納得致しました。」
「納得?」
「ええ。耳を澄ましておりましたら、カキンッカキンッと争っている音が聞こえまして。音から恐らく一対大勢だと判断しました。」
ロントが軽快に説明する。
へ、、へぇ。案外ロントもそういう細かい判断が出来るんだ。てっきり筋肉バカみたいな設定だと思ってたから結構驚きの事実だよ。
俺は周りを見渡してイフンが何処にいるか探す。勿論一階にいるとは思っていないが、念のためだ。
探してみると近くに階段があった。
と言うことは二階以降の階か。
「よし。ロント、そこの階段を昇るとするか。」
「了解。」
コツンッコツンッコツンッとぼろぼろの家に靴の音が鳴り響く。結果から言うと二階には特に何もなく、ただ不良達がいきなり襲い掛かってきただけだった。
やはりもう一つ上の階層か。
俺達は三階に昇った。そこはまだ工事していないのだろう。解放的な空間だ。
やっぱここが当たりか。周りにはぞろぞろと武器を持った不良達。そして奥には縛られているイフン。その隣にはヘイネが佇んでいる。
「おい!ヘイネ。お前一体何をやっている!?」
「いちいちうるさいな。本当は君には用なかったんだよね。まさか跡を付けてるとは分からなかったけど、まぁいいか。君にも餌食になってもらうよ。」
ヘイネはアラン達を囲んでいる不良達に顎で命令する。
その瞬間、不良達は一斉に走り出した。
アランは剣で。ロントはその拳で対処する。ロントが加わった事で二人で背中合わせで戦えることになったから、戦局はかなりこちらの方が有利だ。
アランが剣で相手の大剣を弾き、剣の腹で後方に吹き飛ばす。相手は壁に押しつけられ意識をその場で失う。
ロントが拳で相手の武器を振るう速度より速く鋭い一撃を放つ。相手はその一撃に耐えきれず、その場に倒れ込む。
そして二人はまた背中合わせになる。
「ふっ。やはり駄目でしたか。それでは仕方ありませんね、こちらには人質がいるのでそれを使わせていただきましょうか。」
ヘイネは縄で縛られているイフンを掴み、その喉元にナイフを添える。
コの形になった不良達はその光景を笑う。だがしかし、次にしたヘイネの行動は驚きのものだった。
ヘイネはイフンをアラン達に向かって投げ飛ばした。
「は!?」
ロントは縛られたイフンを捕まえる。
「一体どういう意味だ?」
「いやなに。私が欲しかったのはこの絵でしたので。後は全て用済みです。不良の皆様、ありがとうございました。そしてあなた達も。<断罪の神刃>」
ヘイネが右手で手刀を作り、何かを切る動作をすると本当にヘイネの右手から神々しい光の刃が無数に飛んで来た。
轟音が鳴り響きボロ家の柱という柱が倒れているような音が聴こえる。
ヘイネはもうこれで終わっただろうと思い、踵を返し帰ろうと足を運んだ。
しかしそれは阻まれる。突如、何をも凍りつくような吹雪がヘイネの周りに現れ始めたのだ。ヘイネは身の危険を感じすぐさま吹雪のまだ届いてない方向へ飛んだ。
吹雪のする方向を見るとそこには一人の青年が立っていた。
ヘイネは恐怖を感じた。なぜ?あの攻撃で死んだ筈じゃ?いや現実を見ろ、生きている。
「何を驚いているんだ?この領域内で魔法を使えるのはお前一人だけではなかったと言うことだ。特に恐怖を抱く内容でもないだろう。魔力調整をしっかりしていれば簡単だ。」
アランの言葉にヘイネはまたもや驚きを隠せない。アランの方を見れば、ちゃんと後ろにもいた不良達は無傷で守られている。
「へ、.......へぇ。そりゃ凄い。私の過小評価が過ぎたということでしたか。しかしよろしいのですか?そこの不良共はあなたの命を狙った不届き者。助ける意味はありませんと思うのですけど。」
「ん?まぁそう言われればそうだが。そんなちょっとナイフ持って向かって来たくらいでいちいち殺してたらきりがないし。ごろつきなんて何時の時代でもいるもんだろ。」
「ほほう。あなたは随分とお優しいのですね。」
「別に優しくはないと思うけど、君がそう言うんならそうかもね。」
(どうする?あいつは本当の化け物だ。このまま逃げられるか?この阻害魔法領域で魔法を使えるんだぞ。跡を追われて終わりだ。じゃあ............)
「必死に考えてる所悪いけど、これで終わりにしようか。」
俺が右手を体の前に出そうとすると、ヘイネの元に黒い影の集団がビュンッと言う音と共に現れた。
そしてヘイネを守るように自らの体を盾にした。
その先頭に立つ者が口を開いた。
「そこの強き者よ。こちらとて、この状況で戦う事を望まない。そちらもそうだろう?ならここはお互いに見逃さないか?この提案はそちらにとっても良い判断であると思うのだが。」
「ふぅん。そういうことね。よーく分かってきた気がする。いいよ、ここはお互い退こうか。」
「な!?何をお考えですか!今が最大のチャンスでは」
ロントが怒りをぶつける。縄からほどかれたイフンも「うんうん」と頷く。後ろにいる不良達はこの状況に頭がついていけてない。
「おや?如何致しますか?どうやらお仲間は血気盛んなご様子。」
「いやいや心配しなくても構わないよ。こんな状況下では死人が出てくるからね。さすがに俺も面倒なのはやりたくない。と言うことで退散退散、すたこらさっさ。」
アランは影の集団に背を向け帰り出した。
「あっ。不良達、君たちはちゃんと反省してね。ちらほらうちの学園の人もいるみたいだけど、安心していいよチクったりしないから。」
「そんな気軽に敵に背を向けるとは甘い者ですねぇ。」
「だってむちゃくちゃな人数を揃えて来るんだ。本当凄いよ、気配までもここまで消すなんて。相当洗練されてるね。特にあの子、今後伸びると思うから大事に育てることをオススメするよ。」
アランは何もない空間を指差した。
先頭に立っていた男は目を見開く。そしてそのまま何もせずにアランは不良達を連れてボロ家を後にした。
残された影の集団とヘイネだけがその場に残った。
「まさかこの魔法が見破られるとは思いも知りませんでした。」
アランが指差した透明な空間から一人の若者が現れる。
他にもぞろぞろと何もない空間から黒い衣装で身を包んだ者達が出てくる。
その者達も驚いている。
「よもやそこまで掌握してましたか。あの強き者、我々の隠れた存在を全て当てるどころかアドバイスまで......。ヘイネ一人にやらせるには荷が重い内容ですね。」
「恐らく外で待機していた者達にも気づいていましたよ。連絡では一人一人目を合わせてきたと報告してきました。時に、何故あの場で倒さなかったのですか?」
「確かにチャンスでした。だがあの時手を出していたら我々はほぼ全滅。あちらは数十人の損害。そんな所でしょう。」
その言葉にこの場にいる影の集団は身の内に疑問と恐れを抱く。
「ですが、ちゃんと取れました。決定的な証拠もありますし、何せこの力もあるのです。負けることはないでしょう。」
ヘイネが左手を自分の胸に置く。右手にはある写真を持って。
そこにはイフンが縄で縛られ、明らかにアラン達が悪者になっている写真だった。
その場にいる影の集団はその写真を見て大体の予想をし、これから起こることであろう事に期待をした。
しかしその集団の中で期待をしていない者が二人。
(ヘイネの神の力。興味深いものがあるが、絶対あいつは気づいていた。となるとこちらの手がまた減ったと考えていいか。ならば............いやそれはあまりにも被害が大きい。)
先ほどアランと話した影の集団のリーダーと、
(ほ、、褒められた。今まで何も期待されてこなかったのに。しかもあんなに強大な人から。嬉しいなぁ。)
アランがアドバイスした人だった。




