策略
放課後の帰り道。
「ねぇアラン。あの時ヘイネが使った魔法って何だったの?私の知ってるような奴じゃなかったよ。」
「確かに。レイナさんの言う通りです。僕の魔眼鏡でも魔法行使する時、魔法陣とかさっぱり分かりませんでしたよ。」
イフンがレイナと同調する。
「ん?待て。イフン、お前あの魔法の発動時の魔法陣を目視出来たのか?」
俺が先ほどの言葉を聞き返す。イフンは少し不思議そうに顔を傾け、「あっ、はい。そうですけど?」と答えた。
あの魔法を解析しただと?
あれはとてもじゃないが、魔眼鏡ぐらいじゃあ見れないぞ。そんな物を見れたという事は...............いやそんなことないか。
アランは自分の中にある疑念を振り払った。
「どうしたの?」
「いや何でもない。ただ凄いなと思っただけだ。」
「それでは皆さん。自分はここら辺で。家があちらにありますので。」
ロントは自分の家を指差した。イフンも俺達が向かう所まで行くと遠回りのようなので、別れた。
「あれ?そういえばエリカってなんで帰りも一緒じゃないんだ?色々対策を考えてたのに。」
「言われてみればそうですよね。」
「うーん。でも私達が学園を出る時にはもういなかったような.......?」
俺達は何があるのか色々考察するが分からないので一旦家に帰った。
俺が扉を開けると、ぎゅうと擬音をたてエリカが抱きついてきた。なるほどそういうことか。
「はぁ、やはり久しぶりのくっつきは良いものですねぇ。」
「わ、わかった。わかったから離してくれ、ここ最近出番無かったもんな。」
「ええそうですよ。まったく、学園の方でもこのような関係になりましょうか?」
「い、いやそれだけはやめて。俺にさらに敵意が降ってくるから。」
エリカは「はぁ仕方ないですね。」と言って離した。
そしてポケットから一つの紙をアランに手渡す。
「エリカ、これは?」
リースが横から覗き込む。俺は折り畳まれた紙を広げる。
「それは先ほど帰って来た時に玄関の前に置いてありましたわ。一応内容を確認した所、イフン?とか言う者を誘拐したから、返して欲しくば指定された場所へ来い。だそうですわ。」
「イフンを拐った?一体何の.......と言う訳ではないか。理由など明白だな。」
「アラン様。明らかに罠を仕込んであります。行かれますか?」
「ああ。俺もあいつとは一回戦ってみたかったんだ。その分、安上がりだ。」
「それじゃーー」
リースとレイナが前に出ようとしたが、それをエリカは制止した。
「リースは今の状況からしてここに残っておいた方がいいでしょう。レイナ、あなたもリースの護衛を手伝いなさい。」
「どうして?別にエリカがいるならいいじゃない?」
「確かに現時点では狙われる率は低い。ですが、標的がレイナに変わる事だってある。そういう訳です、だからお家で静かに待ってましょう。」
レイナはしぶしぶエリカの言うことに従った。
しかし納得しきれてないのだろう、体から赤いオーラが出ているような気がする。
勿論リースは納得してちゃんと椅子に座って待機している。
「それじゃあ行ってくる。」
「はぁ、行ってら。」「そんなふてくされない、行ってらっしゃい。」「ご無事で。」
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「うーむ。指定された場所.........ここは、使われてない.........なんだこれ?大きな家?」
アランの目の前には建築する計画でも破棄されたのであろうか?
大きな家があり、骨組みがまだ残っていたりしている。こんなちょっとでも魔法を使えば壊れそうな場所を指定するのか。
俺が威力の高い魔法を使わせない為か。また別の理由があるのか。
まぁ何でもいいか。
俺は紙をポケットへ入れ、ボロい家へ進んでいく。
その時、横から斧が投擲された。ビュンと音を出すが俺はバックステップをして逃れる。横を見れば、日陰の中から不良のような格好をした武装した集団が姿を現した。
俺は地面に突き刺さった斧を引き抜き手でその斧を折った。メキッと嫌な音を出し斧はくの字に折れ曲がる。これで引き下がってくれると嬉しいのだが、不良達は腰からナイフを出したりそれぞれ武器を構える。
「ふぅん。これでも駄目か。なら何をすれば退散してくれるのかね?」
「お前の命?いや命までは奪わねぇよ。ちょっと体ボコるくらいで許してやるよ。あいつからもそういう取引だしなぁ。」
不良のリーダーのような存在が前に出た。
「あいつ?それは是非とも知りたい情報だな。少し喋ってもらうか。」
俺が肩を回したりしていると、不良達はケタケタと笑い出す。
「はっはっは。お前この戦力差を見てもなおやるって言うのかよ。ふはっ。イカれてやがるぜ。ちょいと哀れなお前に言っておくが、ここいらは阻害魔法領域なんだ。だからご自慢の魔法は暴走するし、身一つの勝負になる。」
阻害魔法領域とは、字からして分かるようにその場の魔法を阻害する。
無理に魔法行使すれば魔法陣から放たれる魔法は暴走し、一体どうなるか分からない。確か原理はその領域内にある空気中の魔力があちこちに暴れているせいで、魔法を使おうとすれば自分の中にある魔力をかき乱される。
そして魔法制御が出来なくなるという事だ。
原理さえ分かればどうにか出来そうだが甘くはない。様々な手段を講じたが、結局自分の魔法制御の力を高めればいいじゃん、で終わってしまった。
まぁ仕方ないのだが。
「わざわざどうも。」
俺は収納魔法の中から一降りの剣を出す。これは以前レイナとの対決に使用した剣だ。
ちゃんと剣の腹に当てなきゃ。さすがに不良相手に真剣じゃあ大人げない。
「よし。それじゃ、行くか。」
「はっは。やっぱりお前はバカらしいな。バカはバカなりに矯正してやるよ!」
その言葉を合図に不良達は一斉に襲い掛かる。
俺だって一対大勢のまま戦おうとはしない。こちらの手数が封じられてしまう。俺はすぐさま斜めに走った。不良達は二手に分かれ、アランの周りを囲う形にした。
不良達はニヤニヤしたり自分の思い通りになったと思っていると確信しているが、この形は俺が望んだ形だ。
この状態だと、一度に相手する数が少なくて済む。一度に全員襲い掛かるという手もあるがそれでは味方まで傷付き兼ねないから恐らくしない。
「ふっ。まるで籠の中の小鳥だな。お前ら、掛かれ!」
円の中から六人程出てきてアランに襲い掛かる。
アランは剣の柄を握り直し、前からの不良には頭や胸、背後には左手や近接技を決めていく。
バタッ。バタッバタッと次々に自分の仲間が倒れていくのを不良のリーダーは何が起こっているか理解するまで時間がかかった。
「は?はっ化け物かよ。こりゃ取引上乗せしてくれなきゃ割に合わねぇ。お前も何ぼけっとしてるんだ?さっさとあの化け物に傷負わせてこい。そしたら後でなんかくれてやるよ。」
呼ばれた不良はおどおどしながらも「はい!」と言い、アランにナイフを突き刺そうとした。
だがアランは左手でそのナイフを持っている手を掴み、遠くに投げ飛ばした。
次々と襲い掛かる不良達をアランはすべて無力化させてゆく。
無双。その言葉がこの光景に相応しい。
「これでほぼ無力化出来たな。後はお前だけだぞ?」
「ははっ。くっくっく。やっぱり可笑しいわお前。どんだけ差があるんだよ、俺程度は眼中にないってか?」
「別にそんな事は思ったりしない。そのような驕りが負ける原因を生むからね。」
「ならよぉ、こんなのはどうだ?<大地獄炎>」
不良のリーダーは暴走してどうなるか分からない魔法を放つ。
リーダーの手から放たれようとした炎は、急に機嫌が悪くなった様にリーダーでさえも巻き込み爆発した。
「なっ?お前まさか」
黒い煙をかき分けてアランはリーダーの安否を確認しようと爆心地に近づく。
暴走状態の魔法を使用したので、周りの煙は黒く明らかに体に悪いことを示している。
爆心地の所まで行くと、一人の男がその場に倒れていた。
それは先ほど暴走状態の魔法を放った男だった。まぁ、自分を巻き込んで爆発したんだどうやら気絶しているようだが、危なかった。最悪の場合腕がぶっ飛んでもおかしくないからな。
俺は踵を返し、本命であるイフンが囚われているであろう家の扉を蹴って開けた。




