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夢幻のお正月 

今年もよろしくお願いいたします。

体調にはお気をつけください

そう、これは夢だ。いや違う、実際に起きた事か。

もう千年以上の昔のお正月。まだ魔王だった頃のお話。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ん......あさか。」


俺は窓から眩しい光が入ってくるのを見て起きた。

鳥はチュンチュンとかわいい鳴き声を出している。俺はベッドから立ち上がり、扉に手を掛け開ける。


「んー、、おはよう。」


「おはようございます。魔王様。昨夜は良く眠れましたか?」


魔王の部屋の前で警備していたメイドが聞く。


「ああ、良く眠れた。だけど初夢は見なかったな。おっとこうしてる間にも、あいつがやって来るかも知れん。もし会ったら、トイレにでも行ったって言ってくれ。」


メイドは快く「はい!」と返事をする。

そしてアランは自分の魔王城の中を適当に散歩する。


ふと窓を見ると、城の中庭に兵士達が仲良く談笑を楽しんでいる。今日の訓練は特にない。何てたってお正月だ。そんな特別な日なのに訓練してもつまらないだろ。


俺は中庭で手を振る人達に同じく手を振り返す。


次に俺は資料室へと向かう。


一際大きな扉を開けるとそこには何時ものようにデモクレスが資料を整理していた。


「おはようデモクレス。今日くらいは外に出て仲間達と宴会でもやったらどうだ?」


「おはようございます魔王様。しかしこの老人の身に宴会などと言うものは辛いのですよ。私は歳を取りすぎましたので。」


デモクレスが椅子から立って挨拶をした後、いつも通りに本を棚に戻したりしていた。

俺はそんな様子を見ててはっと思い出した。


「いかがされましたか?」


「忘れてた。デモクレス、これを受け取れ。」


俺はポケットの中から小さな小袋を取り出してデモクレスに渡した。


「これは?」


「それはお年玉と言ってな。何でも人間達の間では親とかが、子供にあげるお金らしい。だから俺もやってみようと思ってな。そのお金で好きな物でも買ってこい。」


デモクレスはその小袋を大切そうにして膝まついた。


「はっ。ありがたき幸せ。」


「それじゃあな。ちゃんと使えよ。」


俺はそう言い残して資料室を去った。


俺が次に向かうのは、魔王城の掃除や雑務、食事を作ったりしているメイド達の所だ。

と言ってもこの魔王城各地にいるので通り過ぎるメイド一人一人にあげていく。


「頑張っているな、ニーニャ。」


「はい魔王様。」


赤茶色の髪をした女性だ。今は窓拭きをしている。

俺は早速お年玉が入った小袋をニーニャに渡す。ニーニャは困惑の表情を浮かべる。


「えっ、よろしいのですか?私なんかに。」


「無論、良いんだ。君たちには大分お世話になってるし。その中にあるお金で是非好きな物でも買うといい。必ず使えよ。妙にそのお年玉を神格化されても困る。」


「はい!分かりました。大事に使わせてもらいます。」


俺はその後もこの魔王城にいるメイド達にお年玉を一人一人渡していった。


「ふーむ。兵士達にも渡したいが........あっいた。おーい!ソル。」


気ままに歩いていたソルを呼び止め、俺はこの魔王城にいる兵士達を一斉に集めさせる。


広い中庭に集合させ、また一人一人に渡していく。

兵士達も本当に受け取っていいのか不安な顔をしていたが、初めにソルに渡すと受け取って良いものだと認識してくれた。


「それにしても、どうしてお年玉なんかを?」


「いや人間達の間では子供に親がお年玉をあげる習慣があると聞いてな。このシステムは魔族でも流行るんじゃないかと。ならば俺もやらねばなるまい。」


「そういう事でしたか。しかし、よくそんなにお金ありましたね。」


「まぁ特に使うことのない金だ。最近は貯まり過ぎて困ってたんだ。お互いwimwimだろ?」


ソルは乾いた笑いをした。

その時、後ろから何者かが抱き付いて来た。背中に当たる感触を無視しつつも後ろに手を回して小袋を渡す。


その正体、エリカは左手で抱き寄せながらも右手でその小袋を受け取る。

エリカはその小袋がよく分からないようで唖然とする。


「それはお年玉と言ってな。人間達の習慣らしい。その中にある程度のお金が入ってるから好きな物でも買ってこい。」


「へぇ。人間もよく分からない習慣を作るものですね。でも良いですわ。アラン様からもらった物ですもの。大事にしますわ。」


「そりゃ俺も嬉しいよ。でもエリカ。」


俺はエリカの肩に手を置く。エリカはポカンとしている。


「絶対に使えよ。俺からもらった物だからって部屋に飾るなよ。それはインテリアでも何でもないんだからな。二度言うが絶対だ。」


「はいはい分かってますわ。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。」


その後、エリカの私室にお年玉の袋がインテリア................じゃなくてストラップ感覚で机に貼ってあった。それを見たメイドは「分かってない.....」と声を漏らした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ん.....ああ夢か。いや思い出か。」


朝を迎えたアランは目を擦りながら起き上がった。

時計を見ればまだ朝5時を指している。そういう日もあって良いか。そう思ったアランは階段を降りる。


ふむ。やはりこんなバカみたいに早い時間に起きる奴なんていないか。


俺は今日見た夢について考え直してみる。

やっぱりあの夢は昔のお正月の出来事だったなぁ。懐かし、お年玉なんてやるからその翌年から魔族の間でも習慣としてやるようになったっけ。


あの頃の幸せな時間も、もう来ないのか。


アランの心の中に寂しさが訪れる。それは荒れ地で舞う風のように。


そんな事を考えているアランに同じく階段を降りてきたレイナは「あっ」と驚く。

それもそうだ。アランなんて朝早く起きる人ではないからだ。


「どうしたの?こんな早く起きて。なんか良いことでもあった?」


「いや何も。ただ目が覚めちゃってね。」


「へぇ。あっリースおはよ。」


眠たそうなのを必死に堪えるリースにアランも挨拶をして、リースは朝食を作るレイナに協力した。

何でもレイナに料理スキルを伝授してもらいたいらしい。


「あっ二人、ちょっといいか?」


「うん?」「はい」


二人にアランは小袋を渡す。


二人はきょとんとする。別に今日はお正月でもない。ゴールデンウィークが終わり、学校に行く日だ。二人は一応その小袋をもらう。


「これって.....お年玉?」


「ですよね。でもどうして今?」


「なんか今日お正月の夢を見てな。それで何となく渡したくなった。別に深い意味はない。」


「あれっ?私にはないんですの?」


背後から覗き込むようにエリカが聞いてきた。


「エリカに渡すと飾るだろ。昔も渡したら、その次の日にはストラップ的な事にしてたろ。メイドが首を傾げてたぞ。」


「あっれー?そうでしたか?」


レイナとリースはクスクス笑い、心暖まる時間であった。


こんな時も良いか。昔とは違うけれど。

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