秘策
アランは駆け出し、ミラを見据える。
リエスベスタに自分の魔力を喰わせ、さらに切れ味を増させる。別にミラの剣ごと斬れるんじゃないかとか期待している訳でもない。
しかし、全然届かないのならばせめてより大きい傷痕を残した方がいいだろう。
対してミラはさっきまでの余裕の笑みを消し、真剣な眼差しでアランを捉える。
アランは縦に斬ると見せかけくるっと一回転して横に斬る。アランの体重を乗せた一撃はミラの剣で止められる。一体その体の何処にそんな力があるのか不思議に思うくらいにミラはその剣でリエスベスタを受け止めている。
「ふっ!」
「ぐっ。ぉぉぉおおおりりゃー!」
リエスベスタにさらに力を込めたアランだが、ミラは掛け声と共に押し返す。
そしてアランの体がちょっと浮き、後方に少し飛ばされる。その隙にミラは光の如く走り込み、上から横から剣撃を繰り出す。
その小さな体とのギャップな力にアランは防戦一方になる。
しかしミラがの剣撃を繰り出す合間にアランは左手を出し<貫魔王槍突>を唱えた。
普通の者ならどうしようもないだろう。だが、ミラは先ほど使い物になくなった左手を動かしその左腕で掴んだ。恐らくその左手には想像しがたい苦痛がある。この魔法は掴んでもその威力を発揮する。
その勢いを止めるのとその魔法の槍から発せられる魔王の魔力。尋常ではない。
そしてミラは剣を斜めに入れる。
アランは咄嗟に後ろに下がりながらリエスベスタを盾にするがその斬撃は止まらない。
アランの胸に斜めの傷が切り込まれる。ぽたぽたと血が地面に落ちる。
ミラは掴んだ<貫魔王槍突>を消滅させ、即座に左腕に<大回復>で少しは動くように回復する。
<貫魔王槍突>で貫かれた所は治りが遅い。たとえ回復魔法の最高位にある魔法でもせいぜい傷を塞ぎ、日常生活が出来るくらいだ。
「マジか。まさかその負傷した腕を使うとは思わなかった。驚きだ。」
「そうか。だが、この腕を犠牲にする代償はあまりないな。ちょっと傷を付けられた位では合わない。回復してしまえば元通りだしな。」
「確かにその通りだ。」
俺は<回復>を掛け、傷を治す。ここで少しこの回復系魔法の事を説明しよう。回復魔法とは、自身の自然回復能力を上げるものではない。その回復系魔法を掛けた場所を魔力で癒やす。
詳しく言うと、傷の場所を塞ぎ、失われた血液を魔力で創造する。
このような手順を踏んでいる。案外神経を磨り減らす魔法だ。よって回復魔法を使う時の魔力もかなり高い。攻撃魔法の2倍3倍は余裕で越える。
よって、魔王だって小まめに回復していれば底がついてしまう。魔力切れを起こしてしまったらリエスベスタも使えなくなる。
「ふぅ、ここからは回復無しで行くか。」
「魔王ともあろう奴が温存するとはな。やはりリエスベスタに常時魔力を与えているからか。」
「まぁその代わりに絶大な攻撃力を持っているからな。そこまで燃費も悪くないし。扱い易いし、いいよ。」
「なら早々に決着をつけるとするか。」
ミラは<超滅連獄炎>を撃つ。それをアランは走りながら切り裂く。しかし、その切り裂いた瞬間、ミラが現れる。
ミラは剣をアランの腹に突き刺す。
アランは体を横に反らすが、横腹を斬られる。そしてミラはそこから横に剣を振るう。
「させるか!」
アランはリエスベスタをミラの右腕目掛け振り下ろす。ミラはあまり動かない左手で<純愛なる明光>を放ち、防ごうとするが....
「ぐっ。」
「ほう、魔族であるお前にはこの魔法は毒だが耐えるのか。しかしこの魔法を受け続ける限りお前の体は浄化されてしまうぞ?」
俺は左手でミラが放った<純愛なる明光>を防ぎ、ミラは咄嗟に剣を引っ込め、振り下ろされたリエスベスタを受け止めた。
俺はすぐさま一旦その場から離れる。
ミラはこちらの事を見透かしたような目をした。
そう、あの<純愛なる明光>には、魔族や魔物に効果を大きく発揮する。魔の者にとっては毒なのだ。勿論その清浄さから魔族は使えない。
デモクレス並みの者なら使えなくもないが、そんな自殺込みのような魔法はあまり使わない。
俺は確かに元魔王だったが、今の肉体は半分人間、半分魔族の血が流れている。よって効果は半減される。
でもダメージはある。決してミラに<純愛なる明光>の効果が今ひとつだとブラフを張った訳でもない。
今度は俺から攻めた。俺は右手にリエスベスタを、左手に魔力を集めて様々な魔法を放ちながら進む。
大半はミラによって相殺されるが、ミラはこちらの魔法を相殺するのに必死で、あちらからは仕掛けてこない。
「これで終いだ。」
俺はリエスベスタに自分の魔力を喰わせ、さらに能力を上昇させ斬る。
ミラは剣で何とかリエスベスタを止めるが、その身はアランの魔法によって傷付いている。ミラはアランの魔法より、リエスベスタの方が危険だと思ったのだ。
「まだ終わらんよ。」
ミラは右手の力を抜いた。
リエスベスタはすんなりミラの体に突き刺さる。ミラの腹からはおびただしい量の血が流れる。
一体どういうつもりだと、アランは一瞬思った。
「ぐふっ。そういう事か。」
今度はアランの体から血が流れる。そう、ミラは自分がリエスベスタで貫かれる代わりに、アランを貫いた。自分を犠牲にしたのだ。
リエスベスタはミラの体を滅ぼそうと、ミラの魔力を喰らう。
ミラの剣はアランの体を崩壊させようと、魔力をアランの体内で爆発させる。
このままではアランの方が圧倒的に不利だ。世界そのものであるミラの魔力は無尽蔵と言っても過言ではないだろう。それに比べ、アランの魔力は有限だ。
今のアランは、ミラの剣を魔力で必死に抑えつけている。
「もうそろそろ限界がきたのではないか?汗が出てきて、苦しそうだぞ。」
「そんな事はない。一応言っておくが、このままではお前は負ける。」
額に汗を流しながら、アランは言う。
「ふっ。負け惜しみか。そんなブラフなど効かぬわ。そこまで言うのなら、やってみろ。お前の秘策を。」
ミラは挑発する。自分の優位性は変わらないからだ。
しかし、そんなミラを見てアランは「はっはっは」と魔王の高笑いをする。そしてリエスベスタに力を込め、ミラをその場から離れられないようにする。
「秘策ならすぐそこにいるだろう?なぁ、魔王様。」
「そうだな。元・魔王様。」
ミラは「はっ」として後ろを振り返る。
そこにいたのは、この過去の時代にいる魔王アランだった。
「全力で放つ。<超滅連獄炎>!」
過去の時代の魔王は灼熱の業火をミラに繰り出す。
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