魔王 目覚める
おお、投稿して早速見てくれるとは、ありがたやありがたや~
千年後、とある家庭に赤ちゃんが産まれた。
「おお、産まれたか。ミラ!」
「ええ、ゼラ。この子が私達の大事な息子よ」
ミラは、大事そうに赤ちゃんを抱いてる。
ゼラは感激のあまり号泣している。
「名前は何にしようか?」
「そうね~、何にしようかしら?」
すると、赤ちゃんが「あ~ら~ん」「あ~ら~ん」と泣いているように聞こえる。
「それじゃあ、アラン。この子の名前はアランにしましょう?」
「お、おう。意外と早い決断だな」
「ええ、この子がアランと自分で言っているような気がして」
ゼラは「ほーう」と赤ちゃんを見る。
だが、この赤ちゃんは、普通の赤ちゃんとは違う。
(ふ~良かった。何とか名前をアランに出来た。名前くらいは、アランでいいよな。魔王の名前だけど)
その赤ちゃんは、魔王の転生した姿だった。
十年後
「うーん。調べられる物は全部調べられたな」
俺は本を閉じる。
この十年間の間に、様々な事を調べた。
俺がまず驚いたのは、魔法が退化している事だ。
理由を探ると、千年前に、人間と魔族の間で和平がもたらされた。
まぁ俺がしたんだがな。
といっても、勇者がしたのか。俺は勇者に全部投げたしな。
そして、争いがなくなったから、戦闘する機会も減り、やがて大規模な魔法はみな使わなくなった。
攻撃の魔法を使わなくなったので、時代が経つにつれ、弱い魔法を使うようになったらしい。これもいい事だな。平和になったこの時代に大量虐殺魔法なんかいらない。
しかし、魔王軍はそれなりの訓練をし、大規模な魔法も覚えるらしい。良かった。
いざ魔王軍出撃!
となった時に、弱かったら洒落にならない。
もう一個驚いたのがある。
それは、母 ミラ・エリアルは魔族で、父 ゼラ・エリアルは人間なのだ。
千年前だと、人間と魔族の夫婦は珍しかった。
なにせ、戦争をしてるからな。見つかれば、必ず迫害の対象になった。
「おーい、アラン!居るか?」
下の階から父さんの声がした。
早速俺は、階段を降りる。
「お!いたいた。それじゃあ、古の時代の話を今日もしようか」
古の時代とは、千年前の俺が魔王だった時代の事だ。
父さんが言う、古の時代の話は聞いていて面白い。
父さんは、本で得た話を俺に聞かせているのだが、色々と俺の知らない話があるので何度も聞いてしまう。
例えば、俺の部下が実はロリコンだったり、寝る時に抱き枕を抱いていたり、俺の知らない事があって面白い。いつか出会った時には、絶対にからかってやる。
「アランは古の時代が好きだな。そんな興味あるのか?」
「まぁね」
「まぁいいじゃないの。男の子は昔話とか好きでしょう?」
茶色の髪を揺らして、ミラはお茶を出す。
ゼラは「ありがとう」と礼を言ってお茶を飲む。
「そういや、魔王様が転生する年って、この時期か」
「あ~確かに」
うーん。もう転生してるけどな。
親には、俺が魔王とは知らせてない。
一応、一回言ってみたが「魔王ごっこか。なら俺は勇者役だな!」と言って、信じてくれなかったのでいつか気がつくのを待つ事にした。
「そういや、魔王学園て何歳で入れるっけ?」
魔王学園とは、勉強や魔法の使い方などを教わる場所だ。
俺が転生する前に、部下達に「学校でも作って教育してやれば?」と言ったから恐らく作ったんだろう。あの時は結構投げやりだったけど、大丈夫かな?
「父さん、魔王学園は15才だよ」
「おおそうか。あと五年後か」
ゼラは、成長した子供の事に喜びを隠しきれずニヤニヤしている。
五年か。少し待ち遠しいな。
またそれから五年後
「おーい、準備は大丈夫か?」
「忘れ物なーい?」
あれから五年経った。時間の経過が速すぎだって?いいじゃないか。特に目立った行為をした訳でもなかったし。
俺はもちろん、魔王学園に行くつもりだ。
最初は家族総出で行くつもりだったが、母さんが「男の子だし、家は一人がいいもんね?」と何か察したように言ったので、俺一人で行く事になった。
家の方は、母さんの知り合いの人が貸してくれるらしい。
何ともありがたい事だ。
俺は荷物を魔法の中にしまいこんだ。
この収納魔法は、とても便利だからと千年前から退化する事なく伝わっていた。
まぁ日常魔法は、日常でよく使うから退化せずに済んだのだろう。
「もう、行っちゃうんだよな」
「ええ、もちろん」
玄関で俺は靴を履く。
うーむ。そんな心配なら、付いてくればいいのに。
魔王だった頃は心配などあまりされなかったから、非常に新鮮な気持ちだ。
「それじゃあ、行って来る」
「行ってらっしゃい」
「ちゃんとご飯は食べてね」
「分かってるって」
俺は玄関の扉を開く。
そして転生した魔王は、魔王学園へと向かう。