戦場へ
話がすすむすすむ
早朝、野営基地が騒がしくなった。侵入者や何者かの攻撃を受けたわけではない。理由はただひとつ。
始まろうとしているのだ、戦争が。運命の時が刻一刻と魔王軍に迫る。
勿論、魔王は起床している。他の全兵士も無論だ。だがその中で寝ている者が一人........
「レイナさぁ。もう起きたら?」
「うーん。リース、五分でいいからさ。もっと寝かせて~。」
そうレイナだった。今はリースが体を揺さぶっているがこの調子だと起きないだろう。
ここで一つ疑問が浮き上がる。どうしてレイナがこんなにも起きないのか?しかも周りの状況が慌ただしいのに起きない。
普段のレイナなら、誰よりも先に起きていた。なら何故?
答えは十分後、レイナに聞いて分かった。本人が言うにはなかなか起きないのは........
「いやさぁ、私って特殊な目覚まし時計で普段起きてるのよ。過去に来てからはなんとか無理やり起きてたけど、昨日ちょっと夜遅くまで起きててね。んーやっぱりもう一眠り.....」
「いやいやここまできたなら、起きて!」
リースが寝るのを阻止しようと、レイナの体を強く揺さぶる。
俺はその光景を見て苦笑した。まったく、これから戦争が始まるって言うのに...緊張感が無いな。ふとエリカに目を向けるとエリカも苦笑して満足そうにしていた。
その時、テントの幕が上がりソルが入って来た。
「至急、魔王様の所に来てください。自分は色々と忙しいのでご案内出来ませんが。」
「分かった。すぐ行く。おーい皆。そろそろ出発だぞ。」
「はい」「ほらレイナ。出発だって!」「んぁあ..分かったよ」
そして俺達は魔王がいるテントまで向かう。これから戦争になるが、兵士はきびきびと準備している。やはり慣れてるからか。
別にこの戦争が始めての戦争ではない。でも一人くらいは怖い表情をしている者くらい、いて不思議でもないのだがいないと言う事は魔王のおかげなのだろうか。
改めて、俺って結構凄い存在なんだなと分かる。おおっといけない。こういう事を自分で思うのが人から嫌われる兆候だ。俺が出会ったウザイ奴はみんな「自分は完璧だ!」とか言っていたし。
俺達は以前行ったことがある魔王のテントへ来た。
中は魔王とデモクレスだけだ。
「それでは聴こう。これからお前達はどうする?別に魔王軍として戦場に出てもいいが、出なくてもいいぞ?何しろ相手は大天使のペットどもだ。」
大天使のペットと言っているのは、大天使に仕えている聖なる獣.........聖獣の事だ。聖獣は基本的に天使や神に仕え、外敵を排除する。と言っても大天使に数匹仕えてる訳でもなく、軍団並みにいる。
「いや、戦場には出る。この戦争でエリスが死んでしまうからな。俺はそのエリスの死を回避しようと思う。もうあんな思いをしたくない。」
「エリスがねぇ。あいつは、魔王軍の中でも頑丈な方だと思うが?」
魔王がそう言うと、隣のデモクレスも頷く。
「アラン。そのエリカの父親さんが暴走するのは何時くらいか分からないの?分かってたらかなり楽になるけど?」
「大丈夫だレイナ。勿論、把握している。エリスが暴走するのは夜だ。だからまだ安心していい。だが未来の俺達がいる以上、この戦争での死者は極力減らしたい。だから俺は朝から戦場に出ようと考えている。」
そして、俺が考えついたエリスを救う策を魔王に伝える。伝えられた魔王は「分かった!」と頷き、テントを出ていった。
そうか、もう開戦の時間か。魔王だから先陣を行かねばな。魔王が出ていった後、アランは同じく戦場へ向かおうとした。するとレイナやリース、エリカが付いて来た。
「あっ....やっぱり三人も付いてくるんだ。」
「ええ。無論私は何処までもアラン様に付いて行くと決めましたし。でもお二人さんは平気なんでしょうか?いくら聖獣だとはいえ、殺すのですよ。その覚悟は出来ていますか?命を刈る覚悟が?」
そのエリカの問いに二人は立ち止まった。それもそうだ、いくら強かろうと相手を殺すのだ。平和になった世界の住人なら、殺す覚悟など持ち合わせていないだろう。
しかもレイナやリースは学生だ。年齢的に言えば、大人のちょっと手前だ。他の言い方をすれば背がでかくなったガキ。
レイナが一歩前に出る。
「出来てるよ。子供の時からね。いずれはそうしなくちゃいけない時が来るって、教えられたからね。」
リースが胸を張る。
「出来てます。私は魔王....いやアランの配下だから。大丈夫、安心していい。」
その言葉にアランは「うん」と言い歩き出す。
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「第51魔団発射準備整いました。」
「よし、打てー!」
その言葉を合図に数十人規模の大魔法<集超滅連獄炎>が目の前にいる聖獣に向けて放たれる。地獄さえも生温いように感じる炎が襲う。聖獣達は各々避けるか、威力を減衰させようとするがその抵抗もむなしく聖獣が撃退される。
そう..ここは戦場。地面には様々な魔法の跡が残り、周りには血の匂いがこびりついている。
さっき<集超滅連獄炎>が放たれた所は焼け焦げ、聖獣の死体が転がっている。
アラン達はその後ろにある、小さな防衛基地からその光景を見ている。
今回は魔王の指示の元、行動する。勿論この後に起きる大体の事は魔王に伝えてある。と言っても覚えている範囲だから曖昧な所もあった。
いつ出番があるかって?まだだよ。今はまだ戦闘が始まって一時間くらいしか経っていない。まだお互いどこで切り札を使うか探っている段階だ。
大天使や神との戦闘は基本、長時間の消耗戦だ。だからまだ本格的に戦ってもいない。
「初めて戦争を見るけれど、案外進みが遅いのね。」
リースが感想をこぼす。
「ああ。人間とは違ってねちねちしてるからな。俺は人間の方が戦いやすいよ。人間はすぐに突っ込んでくるし、その癖作戦を綿密に建ててくる。」
「へぇ.....まさかアランが人間をそんな風に評価してたとは思わなかった。やっぱり学校で習った魔王象とは程遠いね。」
「一応聞いておくが、学校で習う魔王象ってどんな奴だ?」
「人間なんか眼中になく、神を冒涜し、魔族の事を第一に考え、いつも冷徹で変な事でもしたらすぐに首をはねられるって書いてあった。」
え?いやいや.....俺はそんな短気ではないよ?もしそんな奴がいたら、絶対そいつ自己中だろ。
「神を冒涜し」って、俺そんな事したっけ?別にちょっとムカつく奴がいるなぁと思った事はあるけど。
「マジか。俺ってそんな風に思われていたんだ。だから最初はこうガツガツした性格のリースがこんなツッコミキャラっぽくなったのか。」
「べ...別に自分からツッコミキャラになった訳じゃないわよ。ただ単に周りのキャラが濃すぎるだけ。」
リースは目線を少し反らす。ツンデレか?
そんな会話をしていると、一人の魔王軍の隊長らしき人が近づいてきた。その隊長の装備は所々傷が付いており、その姿から今まで何度も修羅場をくぐり抜けて来たのだと分かる。
「君たち。もうそろそろ戦の準備をしておきたまえ。恐らくこの調子じゃ、一時間と経たない内にこの場所は戦場と化す。」
レイナは収納魔法から一振りの剣を、リースは自分の魔力に集中し、エリカは黒い槍を取りだしそっと撫でる。始まるのか。
ようやく平和な時代になったのに、レイナやリースに戦争を体験させるんだな。
そんな事を考えていると、ある一人の兵士が叫んだ。
「来たぞー!」
私がこの作品を書く前に書いた「戦術学校のナンバーズ」も見ると、ちょっと面白いかもしれません。
前の作品から名前を取ったりしてるので、楽しいと思います
URLはこちら
https://ncode.syosetu.com/n8659es/




