魔王と魔王
今思えば、なろう魔王系でタイムスリップするのは人気がある作品だけなのでしょうか?
「と言うか魔王様どうなされました?確か今は作戦会議中では?ま、まさか.......また会議を抜け出しましたか?あれほど注意したじゃないですか!」
「いや違うわ。それはな............」
言うべきか?いやでも.........言った方がいいか。
こいつなら口外しないだろう。
「ソル。この話は本当だ。俺達は未来からやって来た。信じろ。」
アランの話を聞いたソルは少し考えを巡らせ、平伏し
「何をおっしゃいますか?私はいつまでも魔王様に忠誠を誓っております。魔王様が信じろと言うのならば、私はどんな事でも信じましょう。」
「お....おう。そうだな。」
ソルは「はい」と言って立ち上がる。
「それで、あの者達は?未来の配下ですか?」
「そうだ。紹介する。あの銀髪の少女がレイナ。金髪の方がリース。そして黒髪がエリカだ。」
「魔王様の配下の皆さま、私はソルと申します。どうぞお見知りおきを。」
二人は少し動揺しながらも握手する。エリカはソルの事を知っているので動揺していない。一応言っておくが、エリカとソルが初めて出会うのはまだまだ先の話だ。
自己紹介した時にソルがエリカの事を知らなかったしな。
それからは魔王軍の野営基地に案内してもらうようにした。
野営基地までの道はあまり整備されていなくて、辺りが凸凹で歩きにくい。
「と言うか、これからどうするの?」
レイナが聞いてきた。
「うーん。とりあえずその野営基地に行って、この時代の自分にでも会うかな~。まぁそれまでは顔を魔法で認識出来ないようにするか。」
俺は自分に<顔誤認識>を掛ける。
これで俺が魔王だと分かる者は、この時代にいる自分くらいだろう。
ふと後ろを見ると三人が「え?」と言う表情でこちらを見ていた。俺の顔が変な風に見えるからか?
「一体どうしたんだ?」
「いやだってね?」
リースがそう言うと、レイナとエリカもうんうんと頷く。
「過去の自分に会うってタイムパラドックスが起きるんじゃないのかなって。物語でもよくあるでしょ、過去で起きる事象を変えたら未来の事象も変わってしまって大変なことになるって。」
「あ~そうか。でもそれを言えばもう、ソルに俺達が未来から来たって言っちゃってるし。あいつが干渉してこないって事はいいんじゃないか?」
「あいつ?」
「そっか、知らないか。この世界にはいるんだよ。時間に干渉すると必ず出てくる奴が。多分これから先で会うことになるかもな。」
三人は「ふーん」と納得したような納得してないような顔をする。
まぁ、そんな突拍子もない話を言われても分からないか。前にタイムマシーンを使った時はすぐに出てきたのに、珍しいな。
そんなこんなをしていると、前方にテントがいくつも見えてきた。恐らくあれが野営基地なんだろう。
俺達は柵で囲まれた所にある出入口へ向かう。
そこは、銀の鎧を着た門兵が警備している。さて、ソルがどう言ってこの場を切り抜けるか見物だな。
「待て、ソル。その後ろにいる者達は誰だ?」
「魔物に襲われている所を丁度そこにいた者達が助けてくれましたので、何かお礼をしたくて。」
ほう、助けてくれたからお礼か。
まぁ妥当な言い訳だな。
門兵は俺達の顔をよく見る。敵のスパイだとも考えられるからだ。
門兵の目がアランに止まる。そしてじっと魔眼で見つめた後、俺達は入る事を許された。
「何か俺の顔についてましたか?」
「い..いや君の顔に何か見覚えがあった物でな。すまない。後でたっぷりソルにお礼を頂くんだな。」
「勿論。」
ふぅ。ちょっと緊張してしまったが、バレないようだ。
と言うことはこの夜営基地でバレることはまずないだろう。
ふと大きなテントを見てみると、見た目から偉いのが分かる魔族が5人ほど出てきた。
会議でも終わったのか。それなら今行っても大丈夫だな。
「よし。それじゃあ行くか。」
「ご案内致します。」
後ろから
「やっぱり大丈夫なのかな?」「うーん。でも所詮物語ですし。」「まぁ魔王様がいらっしゃるんだから大丈夫よ。」
など聞こえてくるが、そんなに心配なのだろうか?
前に過去に行ったことがあるから俺は冷静なんだろうけど。
俺達は絶対にラスボスがいそうな大きなテントに入った。テントの側にいた兵士には「この者達を魔王様に会わせたいのですが......」とソルが言ったらすんなり入れさせてくれた。
中に入ってみると、過去の俺が座って待っていた。
真っ黒なコートを羽織り、その眼光は直視すれば死んでしまうのではないかと錯覚する位に鋭い。そしてその体から溢れるオーラは何をも恐怖させる。
そして隣にはデモクレスが佇んでいる。デモクレスは過去の方が、かっこよく見えるな。やっぱり服装なのか?
「ソル。そいつらは?明らかに俺の魔力の波長同じ奴がいるようだが?」
過去の俺はアランを指差す。
「はい。それにつきましては......」
「俺から話そう。」
アランが話に入る。
「お前ならもう薄々気づいているんじゃないか?明らかに同じ存在がもう一人いる......と。」
「ふっ..そりゃ分かるか。まぁそうか。初めましてと言うべきなのか?」
「そうだな。」
アラン(過去)はアラン(未来)に握手する。
俺は<顔誤認識>を外す。この状況を見たデモクレスは「おおっ」と驚く。それもそうだ、端から見たら凄い似てる兄弟かドッペルゲンガーしか妥当な理由が見つからない。
「俺達が何者なのか説明は必要か?」
「いや俺はいい。デモクレス!お前は知りたいだろう?」
「勿論。こんなにも魔王様の魔力の波長が同じだとは..........一体?」
ソルがデモクレスに俺達が未来から来た魔王だと伝えた。
話を聞いたデモクレスは俺に平伏したが、今仕えるべき魔王は俺ではないので止めさせた。
「まさか......未来だとは。未来の俺は時間までも掌握しているのか?」
「うーん。掌握は出来てないけど、行こうと思えば行けるレベルかな?」
「何か凄い光景ね。カメラに撮っておこ。」
パシャッとレイナは収納魔法から取り出したカメラで異様な光景を撮る。
それを見たデモクレスは「カメラ?ほう?」とカメラを見つめる。そうか、この時代にはカメラは存在していないか。
あと数百年したら持てるようになるから、我慢してくれよデモクレス。
俺達は今、客扱いになってるらしい。まぁ未来人とか周りに言えないし、当たり前か。
それからは俺は過去の自分と、三人はデモクレスやらソルと会話していた。最初は自分と話すなんてと思っていたが、すんなりと意気投合した。
過去の自分だし、そりゃそうか。レイナ達の方は一方的にデモクレスが質問して何やら困っていた。
未来の事を伝えていいのか迷ってるのか。
そんな光景を見ていると、テントの出入口から黒髪の大きな男が入ってきた。
見た目からして筋肉タイプなのが分かる。
「アラン、この後飲まねえか?昨日はお前がいなくてあんまり飲めなかったしさ。」
そういやこいつは酒癖が悪くて、酔っ払うと地面で寝てしまって俺くらいしか持てなかったっけ。懐かしいな。
「お.....お父様......うっ......」
エリカがその場に泣き崩れる。地面に涙がぽろぽろと落ちる。
そうだ。この筋肉の塊のような男がエリカの父親エリスなのだから。
「え?お.....お父様?家のエリカは今ここにいない......筈?」
「おい未来の俺よ。これは....?」
「ああ、これはネタバレになるんだが。エリスは死んでしまうんだ。そして一人残されたのが娘のエリカ。その黒髪の少女の事だ。後は分かるよな。」
「え、マジ?...分かった。エリス!ちょっとこい。」
エリスは「ああぁ」と言って側に来る。
そしてアラン(過去)はエリスに耳打ちする。するとエリスは泣き崩れているエリカを隣のテントまで連れて行った。
俺は何を言ったのか尋ねる。
「あの黒髪の子は幼い頃に父親を亡くして、その父親にお前が凄い似ているらしい。ちょっと隣のテントにでも行って一緒にいてやってくれ。とな。」
「その方がいいだろう。親子水入らずでな。」
お身体にはお気をつけて。
それと次回からは、魔王=過去の魔王。アラン=現代の元魔王とします。




