大好きな魔王様
あまあまな展開!?
「ん~、やっぱりこの感覚。むぎゅう~。」
「え?ま、まさかエリカ?」
エリカと呼ばれた少女は「はい!!」と返事をしてさらにアランに抱きつく。そんな様子を見てレイナは咳払いを一つして
「そ、それより。離れてエリカ、アランが困ってるでしょ。」
レイナが助け船を出してくれた。
エリカと呼ばれた少女は抱きつくのを止めて、一歩後ろに下がった。
すると、エリカの後ろから執事の格好をした老人がやって来た。
ん?この人も見た事あるし、やっぱりそういう事か。
「やっぱりここはエリスの家だったか。だから、見覚えもあるし執事のイルシュさんも居るのか。」
「はい。と言っても、今の当主はエリカ様ですけどね。」
「そういう事。久しぶりねアラン。」
そう言ってエリカはその場でくるりと回る。
この黒髪巨乳の少女はエリカ。俺が魔王だった時代の部下の一人だ。
本人曰く、魔王様の事が大好きらしい。まったく、こんな所で出会うとは思わなかった。
おっと、リースが混乱している。絶対何か誤解をしているなこりゃ。
「リ、リース。エリカは、俺が魔王だった時代の部下だ。そして、俺とエリカは恋人でも結婚してもいない。分かったか?」
「え?ああ、うん。」
よし、これで誤解は解けたよな。
「エリカ、そのエリスって言う人はエリカの父親だよね?」
レイナがエリカに聞く
「そうよ、父上は魔王様の腹心の一人、エリス・エリードよ。」
懐かしい名前が出てきたな。
エリス・エリード。よく二人で酒を飲んだりしたよな。あの頃は仲間達にも恵まれてたし、良い時間を過ごせた。
そして俺達はエリカの案内で洋館内へと進んでいった。
前来た時も思ったが、立派な洋館だよな。しかもちゃんと掃除されているし、ゲームの舞台みたいだな。
エリカが洋館内をひとしきり案内した所で俺達は、夕食を食べる事にした。
執事のイルシュが大きなテーブルに次々と肉や魚のフライなどの料理を運んでくる。
お~、美味しそう。
リースやレイナも、料理をまじまじと見てる。
「それじゃあ、みんな食べて。」
「「「いただきます」」」
俺は一口食べる。
美味い。イルシュの料理はやはり美味いな。昔もイルシュの料理は人気があったし、腕は落ちるどころか上がってる。
だが、それはいい。それはいいんだ。
「アラン様。ほ・ら・あ~ん」
「いやだから、大丈夫だから。一人で食えるから。」
「ふふっ、大丈夫ですよ。周りの目など気にしなくても良いのですよ?」
そんな目で俺を見るのはやめてくれ。
ああ、そうだよ。エリカってそういう魔族の子だよ。でも決して俺が魔法かなんかで洗脳している訳じゃないからな。本当だぞ。
そう俺は目で二人に訴えるが、全然受け入れようとしない。
と言うか、さらにジト目が強い物に変わっているような............だから違うって!!
アランはエリカのスプーンの猛攻から難とか逃げながら料理を食べ終わり、早々にエリカから逃げるように自室へ戻る。
アランはドアにしっかりと魔法で鍵を掛けて、椅子にもたれ掛かる。
ふぅ、これで一息つける。にしても、二人には改めて説明しておくか。このまま行くと、会ったときにちょっと気まずい空気になってしまう。
ふと、窓から夜空を見れば満月の月が輝いている。
今も昔も変わらないなこの夜空は。こんな時は部下の者達と一緒に酒とか飲んだら、楽しそうだな。
そう考えるアランの目は少し濡れていた。
大切な仲間達でも、もう一生会えない者もいるのだ。
「そんな事を考えてもあいつらは戻ってこない............しな。さて、気分転換にでも風呂に行くか。二人には明日でも話しておけばいいか。」
そうして、アランはドアを開けて風呂場に向かう。
俺は服を脱いで風呂場の中をペタペタと歩く。やっぱりこの風呂場ってデカイよな。
この風呂場は、ひとクラスの4倍のような広さを誇っている。
俺は早速シャワーの取っ手をとり、自分の体に水を掛ける。
「背中はわたくしが洗いますわよ?」
「ん???ん?....」
何か背中にムニュッとした感覚がした。恐る恐る後ろをチラッと見てみると、エリカが抱きついている。
アランの顔が熱くなる。
「な、どうして?ちゃんとドアには、魔法で鍵が掛かっていたはずなのに?しかもあれは、エリス特注だぞ」
「ふふっ、お父様が掛けてあった魔法は随分前に破る術を見つけてましたので。」
くっそエリスの奴、娘に魔法で負けてるんじゃねぇ!
まてまて落ち着け俺。この状況はまずい。難とかしなければ。
そんな事をアランが考えている間もエリカの抱きつきは止まらなく、楽しそうだった。
くっ、こうなったら転移魔法でも使って逃走するほかない。
エリカが耳元まで口を近づけ囁く
「何か模索しているそうですが、転移の魔法は使えませんよ。ここの空間に転移不可能の魔法を事前に掛けて来ましたから。」
ぐっ、マジか。だが甘いな、魔王に出来ぬ事はない。
「<強制転移>」
アランが唱えると、すぅとアランの体が消えた。
先ほど使用した魔法は<強制転移。転移を封じる空間でも強制的に転移する魔法だ。
これだけ聞けば非常に便利で良い魔法だなと思う人もいるだろう。
だが、この魔法には致命的な欠点がある。それは、自分で転移先を決められない事だ。
まぁ、物凄い遠くまでは行かない。しかし、物凄く近い場所に転移しないとは限らない。
そう、その先が女湯だとしても..........
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「ふぅ~いいわね、こんなに広さがあって。」
「確かに。いっそ自分の家も改築してみようかな?」
「いやレイナそれは無理じゃない?だってあの家の周りには、他の家やら店やら建ってるし。」
「まぁそうだけど、アランに頼べば何とか出来なくもなさそうよね。」
レイナは顎に手を当てながら言う。
「うーん。どうかしら?魔王様だからといって、それは無理じゃない。」
「そうね。」
レイナとリースは目を合わせ、お互いに笑い合う。
そんな中、この和やかな光景に場違いな人がここにいた.......
(ヤバい、どうしよう?)
そう、先ほど<強制転移>したアランだった。
いやいや、確かに<強制転移>って転移先を決められないのは知ってたけどこれはないだろう。
くっそ、どうする魔王。
このまま堂々と女湯の中を通るのは危険すぎる。ではどうする?
あっそうだ!ここから転移すればいいじゃんか。何でこんな単純な事にも気がつかなかったんだ?
よし、なら転移の魔法っと......
アランは転移魔法を使う。だが、転移しない。何回も唱えるが、目を開けてもいつもそこは女湯だった。
こ、これはまさか。女湯にも転移を封じられてるのかよ。
でも待て、ここでもう一度<強制転移>を使えばいいのでは?
いやしかし、この全裸の状態で使えば外に出るかもしれない。それは嫌だ。だって寒いし。
「ねぇ、レイナ。何か後ろの方で魔力反応がしない?」
「ん?確かに言われて見ればそうね。ちょっと確かめてくるわ。よっと」
レイナは立ち上がりアランのいる方へ向かう。
そしてアランが決断した策は...........
(マジか。こうなったら。<全身透明化>)
よし、これなら大丈夫だろう。
透明化してる俺なら見られる心配はないし、レイナも気のせいだと思ってくれる。
そんな事を願い、アランはその場で座る。下手に動くと普通の人でも見破ってしまう可能性もあるからだ。
この魔法を使ってでも完全とは言えない。
そして、いよいよレイナがこちらにやってくる。
レイナはバスタオルで体を隠しながら周りを見渡す。しかし、何もそれらしい物は無かったのか戻ろうと踵を返す。
アランとレイナの目が一瞬合う。
すると、レイナはアランの方へ歩いた。そしてレイナは、透明化しているアランの耳元に小声で
「覗きは駄目だぞ。でも今回は許してあげる」
そう言って口元に手を当てて「しー」と言い、リースの所へ戻った。
ま、まさか、バレた?いやそんな事あるはずがない。
「レイナ。何かあった?」
「いや何も無かったよ。多分気のせいじゃない?」
アランの頭は「どうして?」の疑問でいっぱいだった。
10/12追記
新キャラエリカ・エリードです!
@narou_ekaki
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描いてくだささった灯油様のTwitterです!
本当にありがとうございました!




