魔族のゴールデンウィーク
本当に遅れてすみません。
「はい、と言う事で皆さん。ゴールデンウィークだからと言って、勉強や魔法を疎かにしてはなりませんよ。毎日の努力がいつか、役に立つのです。」
俺はルー先生から渡された紙を見る。
そこには、ゴールデンウィークの内容と書かれていた。まぁ、一週間の休みでも勉強をしなさいと宿題がそこには書かれいるのだ。
と言うか、今の時代にはゴールデンウィークなる物があるんだな。
レイナやリースに聞いてみれば、一週間位学校や様々な仕事が休みと言う凄い制度ではないか。
昔の時代にはなかった制度だから、俺も楽しもうか。
だが、このゴールデンウィークなる物には欠点があるな。宿題だ。
この量はあんまりではないか?
ほら、あそこを見ろ。宿題の量が多すぎて、ついにはその紙を食べてる奴まで現れているではないか。
「この量は凄いな。」
「だよね。ねぇ、魔王ってこういうの変えられないの?ちょっとさぁ、お偉いさんの所行ってガツンと言ってよ。」
「悪いなリース。さすがに教育面ではデモクレスに全て任せているんだ。」
「どうして?」
「何でも俺がやると、生徒の魔力だけが高くなって勉学の方が疎かになるんだと。まったく、そんな訳なかろう。」
「デモクレス様、さすがです。」
「確かに。」
「私はそれでもよいのですが。」
と、レイナやロントも何か納得している。
「どういう事だよ。」
「だってアラン。勉強出来るけど、教えるとしたら魔法の方が得意でしょ?」
ああ、勿論得意だ。
俺は頷く。するとレイナとリースが「はぁ」とため息をつく。
ん?だからどういう事だ?
そんなこんなで授業を終え、俺達は家に帰った。
さて、ゴールデンウィークか。一体何しよう?一応あるにはあるか。
「ねぇ、アラン。ゴールデンウィーク暇でしょ!ここ行こうよ!」
そう言ってレイナがテーブルに広げたのは、俺が以前暇潰しした時に見た遺跡の紙だった。
やっぱりレイナもこういうの行く人なんだな。リースは特に普通な顔をしてるけど、レイナが言ってくれるんだからリースも行かないとか言わないよな。
あの時言いそびれたから、良かった。
レイナ、グッジョブだ。
俺は心の中で親指を上げる。
「そうだな。リースも行かないか?」
「ええ、行くわよ。だって魔王様が行くんですもの、行かない理由はありませんわ。」
「よし、それじゃあ遺跡へゴー!」
「おー」
「お、おー」
と言う訳で俺達は遺跡調査へ行く事になった。
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「へぇーここか。案外遠くないな。」
「まぁ、この列車に乗ればほんの一時間で着きますし。さして遠くありませんね。」
「うーん。お腹減ってきたわね。乗務員さーん、お弁当くださーい。」
はいと言って乗務員がやってくる。
レイナは三人分のお弁当を買い、アランとリースに手渡した。
列車か。存外悪くない乗り物だな。昔だと転移するのが普通だったが、こういうレトロな感覚も良い物だな。
何でも魔力を原動力に使ってるらしく、環境に良いのだと。確かエコとか言ったっけ。
やっぱり転生して良かった。このような体験、俺が魔王だとわかったら絶対見張りとか、めんどくさいから本当に良かった。
「アラン、どうしたの?もしかしてお腹減ってない?」
「ん?ああ別に。ちょっとこの列車と言う物に感動してただけだ。」
そう言って俺はお弁当に手をつける。
うん。おいしい。塩加減やお米とおかずの割合が丁度いい。こんな美味しいものを、列車から見える景色を見ながら食べれるなんて、昔の奴らにも教えてやりたい。
あいつらきっと「魔王様でも体験した事ないのを、我らは体験出来ません」とか言うから、ぜひあいつらにも体験してもらおう。
「確かに良いよね。でもアランって魔王だったから、こういう光景とかよく見なかったの?」
「うーん?そう言われてもな。あの時は人間や神の奴らとの戦闘でどれだけ仲間を殺されずに済むかとか考えていたから、こういうのはあまり見なかった。」
「へぇー」
「しかも、昔はこんなに世界はきれいじゃなかった。森は焼き払われ、大地は死んでいたりと散々な光景だったし。」
だから、今見ている光景は平和その物だ。
なんと美しいのだろう。これが、俺の理想の世界だ。今何処かにいるのかも知らない勇者に見せてやりたい。
「見ろ、これが俺の作りたかった世界だ」と、高笑いも添えて
しかし、勇者にも千年後にまた会おうと言ったのだが、デモクレスにも何も話していないとなると何かあったのだろうか?
「話は変わるが二人とも。勇者についてお前達はどれくらい知っている?」
二人は顔を見合せ
「私は、人間の代表で魔王と神を唯一、死に追いやる事の出来る者だと聞いているわ。」
唯一死に追いやるか。
まぁ間違ってはいないが、別に俺自身はそこまで追いやられた事なかったぞ。
「へぇ、他には?」
「うーん。私は魔王と和平をむすんだ後、魔界に留まって魔族に度々協力したとか。」
「え?レイナ。そんな事習ったっけ?」
「え?」
レイナは首を傾げる。
そして、レイナは少し考えて何か理解した様子になり
「ああ多分、私は図書館とか行ったりして様々な文献とか読んでいるからよ。リースはそういう所行かないでしょ?」
「ええそうね。でも意外ね、レイナがそんな所行ってるなんて。」
「確かに。」
レイナって確か他の遠い場所から来たんだっけ?
その所にそんな文献があるんだ。でもここは魔界だし、どこでも魔王の事が書いてある本はあるか。
しかし、本当に意外だな。
レイナは最初見た時、何処かの一人娘みたいな感じがしてひたすら剣の道を歩んで来ましたみたいな印象があったし。
「そう?これでも子供の頃はやんちゃだったわ。」
「どんな?」
「例えば、自分家の周りの男の子連れて賄賂のお金を奪ったり。何か町に来た悪ガキ達をボゴボコにしてやったり。」
いやそれやんちゃってレベルじゃないでしょ。
賄賂のお金を奪うとか、どんな義賊だよ。もう何かの組織だろそれ。
リースの方を見ると、今のレイナの事を見て「大人しくなったわね」と驚いている。
確かに大人しくなったな。子供の頃のまま来ていたら、きっとロントとか連れて俺にケンカでも売っていただろう。
レイナがチラッと窓を見る。
すると、立ち上がり
「二人とも。もうすぐ着くわよ。」
「わかったわ。」
「そうか。」
俺は軽く手を伸ばして筋肉をほぐす。
そして列車が止まり、俺達は遺跡がある街へと進んだ。
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「へぇ~。アリアス街へようこそか。」
アランは目の前の看板を見ながら言う。
特に聞いた事ないようなあるような。何となく覚えているような気がするんだけど。
リースやレイナはその活気の良さに驚いて、辺りを見渡している。
それもそうだろう、アリアス街は俺達が住んでいた所と同じくらい栄えているのだから。
普通、都市やその周辺はよく栄えているのだが、列車で一時間ほど行けばそこまで凄く栄えてるのはあり得ないと言ってもいいくらいなのだ。
まぁ言ってしまえば、「首都は栄えるけど田舎って首都ほど栄えなくね?」の田舎が首都ほど栄えてる状況なのだ。
「凄い活気の良さね。」
「ああ、そうだな。とりあえず遺跡にちょっと行くか。その後でこの街を見回るとでもするか。」
「そうね。じゃあ、行きましょ。」
俺達はこの街の奥にある遺跡に進んだ。
そこまでに、ちょっと行ってみたい店とかがあったが我慢だ。
街の奥の階段を進むと、そこには確かに遺跡があった。
しかも、そこは俺にも見覚えのある場所だった。その事を二人にも言おうとすると、商人の格好をした年老いた男性が話しかけてきた。
「君たちも、あの遺跡目当てで?」
「ああそうだ。たまたまこの紙を見てな」
そう言って俺は遺跡調査の紙を取り出す。
「そうでしたか。それでは頑張ってください。あの遺跡にはものすごいお宝があると言う噂ですから。」
「お宝?」
「ええ、そうです。何も、この世界も揺るがすお宝だと。」
世界も揺るがすって、それは凄い言いようだな。
そんなお宝、あの遺跡にあるんだ。まぁ噂だけど、それなりの物はあるんだろうな。
「ほう。しかし、商人の御方。何故俺達にそんな話を?」
「おっとこれは頭も切れる人のようですね。説明いたしましょう。私は見ての通りただの商人です。しかし、私は冒険に憧れているのですよ。でも家柄上商人であらねばならない。」
「だからせめても、この遺跡の奥に何があるか知りたいって事か。」
「ええそうです。見た所、あなた達は強そうですし。」
「でも商人の人。いいの?自分で見つけなくても?」
リースが問いかける。
確かにそうだな。普通なら、自分で行こうとするのではないか?
商人は図星を突かれた表情になるが
「いいのです。私にはさすがに冒険するほどの体力も残っていませんし。それに私は冒険者達が言う武勇伝などの方が好きなので。」
「そうか。なら期待して待っていてくれ。」
「そうしておきます。ではお気をつけて。」
商人は手を振り俺達を見送る。
でもそうか。冒険するってなると、その体では厳しいもんな。
そんな事を考えつつ、俺は遺跡へ向かう。




