零の魔銃
「ふっ、そんな古銃で何が出来ると言うのだ?見たところ魔力はなかなかだが、その程度じゃあ傷一つ付けられないぞ?」
「なあに、撃って見れば分かる。それに、外見で判断してはまだまだだな。もっとこの銃をよく見た方が良い。」
竜はよく目を凝らしてアランの持つ銃を見る。
だが、竜は「ふんっ」と鼻で笑う。
「ハッタリも大概にしろ。その魔銃からは、それほどの魔力は見えん。そんなにも自信があるなら、勝負しよう。我の本気のブレスと、お主の魔銃。どっちが強いか?」
「おう、そうだな。」
俺は竜に向かって銃を向ける。
竜は大きく息を吸い込み、ブレスを吐く。
端から見れば、結果は分かるだろう。銃の弾程度じゃあ、あのブレスと太刀打ち出来ないと。
確かに、只の魔力を持った魔銃ならばそうだろうな。
しかし、俺のこの魔銃はそんな偏見、簡単にうち壊してくれるぞ?
俺は魔銃のトリガーを引く。
パンッと音が響き、禍々しい色をした弾丸が放たれる。そして、竜のブレスと禍々しい色の弾丸がぶつかる。
リースは思った「あんな弾丸では無理よ。」と。
この時、リースの偏見は魔王によってうち壊される。
なんと、竜のブレスが弾丸に当たると、まるで元から無かったように空気に溶けていったのだ。
「なに!?」
そして、弾丸は竜の腕に当たる。
するとこちらも、元から無かったように腕がぽっかりと無くなったのだ。
竜は唖然として何も口に出来なかった。
本当に無くなっているのだ。さわってみても、何も感じない。最初は何かの魔法を付与していて、腕を無くなったように見せかける物だと思った。
「貴様、何をした?この弾丸は?」
「その弾丸は<零の弾丸>知らない訳はないだろう?」
一応説明しておこう。
<零の弾丸> 魔王が持つ武器。その存在を文字通り零にする。まぁ、存在を消すと言った方が分かりやすいか。
「<零の弾丸>ってまさか?」
「へぇーそうなんだ。知らなかった。」
後ろにいる二人が答えようとする。
竜は「まさか!」と口をポカンと開けている。
「そうだ。千年前、神々は恐れ、人間どもは恐怖し、魔族は尊敬した存在。魔王だ。」
「嘘?本当に魔王様なの?」
「本当だ。今まではバレないように隠れていたがな。」
俺は後ろを向く、リースは泣いて「ひっくひっく、本当に来たんだ。本当に」と感動している。
レイナの方を見ると、「へぇー私って、魔王と住んでいるのね。いい体験だわ」と腕を組んでいる。
リースは思っていたより泣いていたが、レイナは泣かないんだな。別にそんなに感動して欲しい訳ではないが、少し驚いた。
一番驚いているのは竜の方か。
「くっそ!魔王が相手か。そりゃそうかあんな強い奴、勇者以来だ。ふふっ、まさかこれ程とはな。」
「そういう事だ。なら、後は分かるな?」
「全ての生命力を魔王、そなたにぶつけよう。我の生命力全部なら、どうにかなるかもしれん。」
「そうか?ならこい。」
俺は魔銃を構え直す。
すると、竜は恐ろしい速さでアランの上を駆け抜けた。
そして、リースとレイナを掴み人質に取る。だが、リースとレイナは安心してアランを信じて、一切抵抗していない。
いやいや、そこは抵抗しろよ。まあいいか。
俺は魔銃を、竜のもう片方の腕に打つ。
竜の腕が消失した。まったく、俺を騙そうなど千年早いわ。
「どうした?生命力を全て解き放つんだろう?」
「ぐぬぬ。こうなったらお前ら全員道連れにしてでも..........」
そう言うと、竜の体の魔力が暴走し、今にも爆発しそうになる。
ちっ、自爆魔法か。あの竜の魔力だと、恐らくこの空間だけでなく現実世界にも影響するなこりゃ。
「え?こいつまさか自爆しようと?.....」
「ああ、そうらしい。」
「ど、どうするの?」
「慌てるなリース。別に大丈夫だ。」
俺は魔銃を今にも爆発しそうな竜に打つ。
パンッパンッと空間に響き、竜はその姿を消した。
すると空間が歪み、目を開けると元の場所にいた。
竜を倒した事によって竜の作った空間が、その存在を保てなくなったのだろうな。
俺は後ろを振り返る。
「本当に生きてる私。今日で終わりだと思っていたのに。」
「ふっ、何を言う?俺の配下になったのだ。死なせる訳ないだろう?」
「本当なのね。アランが魔王って?」
「無論、嘘ではない。と言うか、もう薄々気づいている物だと思っていたが?」
だって、名前は同じだし、まぁ姓は変えてあるけどアランって名乗ったのだから少しは気づいてると思った。
しかも、周りと比べれば桁違いな魔力をリースと戦った時に出しちゃったし、もうバレたと思ってた。
リースとレイナは頭を垂れる。
服従していると言う事か。魔王相手の態度としては普通なんだと思うが、俺はそういうの嫌いなんだよな。
魔王の事を書いてある本で唯一違う点があるとすれば、魔王は部下と友達のような関係を欲していたと書いていない事くらいか。
まぁ、そんな話しはいい。今日はもう帰ろう。
「頭を上げよ。お主らが知っている魔王象とは多少違う点がある。それは、魔王は部下との関係を友達のような物だと思っている事だ。」
「はい!」
「オッケー!アラン!」
「れ、レイナ。魔王様が言ってくれたとはいえ、そのような態度は駄目ですよ。」
「まあまあいいじゃん。ねっ?」
レイナが軽くウインクする。
おっと少し心を奪われそうだった。レイナもレイナで良い部分はあるよな。
「あ、ああ勿論。むしろ、堅苦しくてたまらないからな。そういうのがいい。」
「じゃあ、魔王様を呼ぶ時はアランって呼び捨てにしても?」
「いいぞ。」
ふむ、昔の部下とは違い、すんなりと言うことを聞いてくれたな。
千年前だと「いえそのような事はしません」と何回言っても聞いてくれなかった。
「さて、今日の所はもう帰ろう。疲れた。」
「確かに。」
「そうだね。今日は腕によりを掛けて作るか。」
「おっ、楽しみだな。」
どんな旨い料理をしてくれるのか想像しただけで、涎が出る。
早く帰ろう。
そんな事を思っていると、周りに魔力反応があるのを気がついた。
この反応は、監視する魔法だな。昔はこういうのに敏感に反応していたが、今まで気がつかなかったとなると相手は相当な奴だな。いや俺の魔力感覚が鈍ったのか。
「ふっ、俺も平和ボケしたのか?誰だ?そこで見ているのだろう?<超滅連獄炎>」
俺が洞窟内に<超滅連獄炎>を放つとパリンッと音を立て、何かが割れたような音がした。監視の魔法が壊された音だ。
リースとレイナは、状況に着いて行けず「どうしたの?」と不安そうな表情をしている。
俺は「何でもない」と言い、家へ帰る。
いやー、やっぱり我が家は良いものだ。
レイナの作る料理も旨かったし、ベッドは気持ちいいし何度でも思う「良い物だ」と。
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夜の月明かりが二人を照らす。
「魔王復活。ようやくね。」
「ふん、まぁでも転生して十数年しか経ってないとはいえ、監視魔法に気がついたのは驚いた。」
「確かに。あの魔法に気がつくなんてね。千年前の魔族や勇者でも、気付くのは難しいのにね。」
男は空を見上げる。
その顔は何か喜んでいるような事が読み取れる。
女はそんな顔を見て、クスクスと笑い
「やっぱり嬉しい?」
「嬉しいさ。千年待った。ようやくだ.......」
女が心配そうに語り掛ける。
「ねぇ?これからどうするの?あいつらに協力する?私はもう抜けるけど......」
「うーむ。協力と言うよりかは、利用させてもらおう。所詮、あいつらでは倒せん。この世であいつを倒せるとしたら、俺だけだ。」
すると、女はムッとして男を睨む。
「私もその倒せる人に入っているんだけど?」
「でも、実際倒せなかったろ。やれて追い詰めた位か。」
女は「はあ、まぁそうね。」と言い、その場を立ち去る。
男はその様子を見届け、いなくなった事を確認するとため息を一つつく。
「待っているぞ。アラン。俺の大事な大事な..........」
あと残り一話で、この章は終わります。(あと一話は、何でもない話)
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