竜の強さ
「よいしょっと」
俺はリースを下ろす。
リースは涙目になりながら、アランを見つめる。
「どうしてここに?」
「昨日聞いた時点で、大体私もアランも気づいていたわ。あんなにも動揺しているんだもん。」
「そういう事だ。そして、リースの行動を監視しておいて何が原因なのか探ろうとしていた訳さ。まぁ、次の日に行動するとは思いもしなかったけど。」
すると、急に炎のブレスがやって来る。
俺は咄嗟に<魔法障壁>で、二人を守る。
「何!このブレスを守るだと?」
「まったく、そんなに構って欲しいのか?」
竜は驚きを隠せない。
少しは手加減したとは言え、自分のブレスなら黒焦げにでもなると思ったからだ。
俺の配下に手を出した罪、その身に償ってくれる。
「お前に一つ問おう。これから一切生け贄を喰わず、この世界に貢献すると言うんなら、その罪を許してやろう。どうだ?」
「そんな物、否定に決まっている!滅びろ!」
「まぁ答えは知っていたか。レイナ、リースを頼む。」
レイナは頷き、泣いているリースをだき抱え、後退する。
「滅びろ!」
竜は渾身のブレスを吐く。
俺は<超滅連獄炎>で対抗する。
お互いの炎は拮抗しあい、相殺する。洞窟の中は明るく照らされ、竜の姿がよく見える。
「くっ、このままではちょいと広さが足りないな<異空間創造>」
リースとレイナは眩しくて目を瞑る。
目を開くと、そこは広い荒野のようだった。二人は驚いて口をポカンと開けている。
<異空間創造>は、どんな情景でも再現出来るからそんな驚く事でもないだろう。
でも、今の時代では珍しいのかもな。
ふっ、もうそろそろ本気を出そうか。
「反撃と行くぞ<超滅連獄炎>」
俺は<超滅連獄炎>を自分の周りに書き、発射する。
竜は寒々しい冷気を吐き出す。
しかし、そんな冷気ごときでは止まらない。
アランの放った<超滅連獄炎>は竜の冷気を押し返し、竜に直撃する。
竜の周りに煙が立ち込める。レイナやリースは「やった」と思っただろう。だが、そんな易しくはなかった。
「ふぅー邪魔だなこの煙。」
竜は腕を振り、煙を払う。
え?効いてなくね?なんか別に大したことないように振る舞っているけど。強がりには見えないし。
「ほう。あの攻撃を凌ぐか。ならこれならどうだ?」
「好きにさせるか!」
竜は物凄い勢いでアランに迫ってくる。
そして、その鋭い爪を振りかぶった。竜の狙いは、アランの魔法攻撃をさせないようにするためだろう。
だが、それさえ魔王と呼ばれたアランには通じない。
「捕まえた。」
「ぐっ。」
アランはその竜の腕を掴み空中でグルグルと回し、遠くへ投げた。
そして追撃として、槍系の最高位魔法<貫魔王槍突>を幾つも放つ。
後方にいる二人は「なんて力なの?」「予想以上ねこれは」と思った。
その戦っている姿を言葉にして言うなら、「蹂躙」が似合う。それほど、すごい光景なのだ。
ふぅ、これくらいか?
ここまでやれば、流石に立ち上がってこないよな。
そんなアランの考えは、すぐに打ち消された。
「危ない危ない。まさかこの時代に、ここまでやる奴がいたとは思わなかった。久しぶりの戦闘だ。楽しもうではないか?」
竜はアランの魔法の槍が効かなかったようにピンピンして立ち上がる。
「そんな物いらん。あるのは滅殺だけだ。」
「そうか?なら楽しんでもらおうか。<魔物召喚>」
竜が魔法を唱えると、後方にいた二人の周りに魔物が次々と召喚された。
「ん?それくらいで、あいつがリースを死なせると思ったか?」
瞬間、魔物達が一斉に横に斬られた。
其処にいたのは、剣を肩にポンッポンッとしているレイナの姿だった。
「それくらいの魔物で私が殺られるとでも?」
「愚かな竜よ、そういう事だ。<超滅連獄炎>。」
「ぐっ、貴様。この魔力は?くっそうううぅぅぅ」
地獄をも思わせる炎が竜を焼き尽くす。
竜の体はたちまち燃え上がり、何とか炎を消そうと竜はもがく。だが、その炎は消えない。それほどの魔力を込めているからな。
燃え上がったら、死んでも燃え続ける炎それが<超滅連獄炎>だ。
「などと、言うとでも思ったか?」
竜は自分の体に力を込める。すると、竜の炎が消し飛んだ。
どういう事だ?あの炎を消すと言うのは、なかなかの手練れでも難しいと思うが?
いや待てよ........
「そういうからくりか。」
「どうした?降参する気にでもなったか?」
「いやなに。気づいてしまっただけだよ。お前は、魔法に対する絶対耐性を持っているな。だから、俺の攻撃を食らっても、ダメージがなかったと言う事だな。まったく、いやらしい能力だこって。」
「な、何?初見で気がつくとは。貴様何者だ?」
「ただ、ちょっと強いだけの魔族だが?」
ここで、魔王と言っても良かったがもう少し後にしよう。
そうだな、アレを使うか。いや、待てよ........とりあえず、あの竜の絶対耐性をアレなしで破るとするか。
俺はすぐさま<超滅連獄炎>を十個打つ。
竜は後ろに下がりながら腕を大きく振り、炎を無効化する。
「そんな物効かぬと言っている。」
「そんな事、百も承知だ。」
俺の<超滅連獄炎>は、只の目眩ましに過ぎない。
俺は竜が炎を無効化する瞬間に、飛んでいる竜の背後をとり、回し蹴りをお見舞いする。
竜は咄嗟に手でガードしようと右手を背中に向けるが、もう遅い。俺の回し蹴りは、竜の背中に直撃し、竜はくの字になりながら地面にぶつかる。
どんなに魔法が効かなくても、倒す方法はある。
「魔法に絶対耐性があるお前は、大層強いだろう。だが、倒す方法はある。教えてやろう、物理攻撃だ。殴る蹴るで圧倒すれば良い事だ。」
「ぐぬ。我に物理攻撃を挑んで来た奴なら何人もおる。しかし、そいつらは我を倒しきる能力はなかった。だがお前は違うな。ふっ、より一層お前の事を知りたくなったぞ。」
「だから言っているだろう?ちょっと強いだけの魔族だと。」
「嘘だ。お前のその魔力と、その力は?」
「いつか分かるさ。」
「そうか、なら無理やりにでも教えさせてもらう!」
竜は雄叫びをあげながら、突進してきた。
恐らく、純粋な力比べで勝負するつもりなのだろう。まぁ相手からは露出した筋肉もないし、力では負けないと思ったのか。
確かに普通の魔族では、その戦法は通じるだろうな。
だが相手をしているのは魔王だ。
俺は竜の拳を片手で受け止める。その受け止めた衝撃が俺の後ろに流れ、衝撃波が走る。
そして竜はもう片方の拳をアランにぶつける。だが俺はもう片方の手で受け止める。
荒野の中に、巨大な力のぶつかり合いが起こる。
俺は腕に力を込める。竜は自分の本気を出しているように見えるが、相手は魔王だ。すぐに押し返される。
アランは手に力を込めるのを止め、竜の体が前に倒れる時に渾身のアッパーを放った。竜は口から血を吐き、腹の鱗は砕ける。
「どうだ?俺のアッパーは?」
「くそ!こんな奴に、我が負ける?そんな事はない。」
竜は後ろに下がりながら言う。その身ボロボロで、さっきまでの竜とは想像出来ない程だ。
「貴様。喜べ、この我が本気を出してやる。」
「ほう、あれが本気ではないのだな。どれ?見せてみろ。」
「ふっ、後悔しても知らんぞ?<真姿共鳴>!!」
竜が魔法を唱えると、どんどん竜の大きさが大きくなっていく。
眼光はより鋭く、体は山のように大きく、どんな場所でも力強く羽ばたける翼。本の中で書いてある竜の姿と一緒だった。
「え?あんなに大きく?」
リースは上を見上げ、その竜の大きさに驚いている。
「あれま~。アラン、いいの?あんなに大きくなっちゃって?」
「別に、単にでかくなっただけだろ。むしろ、やり易い。」
実際の感想は「なんか迫力がない」なんだが、それを言ってしまったら駄目な感じがした。
みんな驚いているが、これくらいなら昔はゴロゴロいたような気がする。
今はそれほど平和になっている証拠か。
上空にいる竜が俺達に向かってブレスを吐き出した。
確かに真の姿になったから、さっきよりも強いブレスだな。
「その程度か?真の姿の力は?」
俺は<魔法障壁>でブレスから二人を守る。
ふむ、やっぱり威力が上がってるな。魔法障壁にひびが入っている。
俺が常時纏っている防御魔法を広げても無駄か。と言うか俺の常時纏っている防御魔法の事を知れば、あの竜は戦意喪失してしまうやも知れない。それでは困る。
何故なら、常時纏う防御魔法は千年前の奴らでも使っている人はごく一部。しかも、その防御魔法はそれほど強くない。高火力な魔法を受けるとすぐにはじける。
「なに!?そうか、それほどお主は強いのか。なら全力で行こう!」
「ああ、そうしてくれ。そうじゃないと、俺も全力を出せない。」
俺は内側の収納魔法の中から、古い形状の古銃を取り出す。外装は派手でもなく、アンティーク品のようだ。
その銃からは、禍々しい魔力がはふれている。
「さあ、始めよう。」
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