昔話
「ちょっといい?」
「ん?どうしたんだ?」
リースはアランの腕を引っ張り、そこにあったベンチ所に連れていった。
どうしたんだ?なにやら、悲しい顔してるけど。
「あなたって、決められた運命のような物信じる?」
「信じるも何も、あるんじゃないか?」
「そ、そうよね。」
リースは下を向く。その表情はどこか寂しげだ。
「だけど、それくらい何でもないなぁ。決められた運命のような物って、実際どうにか出来る物だろう?てか、急にどうしたんだ?そんな事言い出して?」
「本当にどうにか出来ると思っているの?」
いや、質問に答えて欲しいんですけど......
まぁいいか。
「無論だ。現に魔王は、どんな運命にも立ち向かい、勝利したと本に書いてあった。なら、俺達でも可能と言う事じゃないか。」
「それは、魔王だからでしょう?私達は、ただの魔族なのよ!」
「ふっ、魔王も魔族だろう?同じだよ。何ら変わりない。魔王だって、魔族の中で強い存在だったから魔王になっただけ。」
そう、何ら変わりないのだ。
俺だって、ただの魔族だ。運よく魔王と呼ばれるまで強くなって、魔族をまとめあげて戦争に参加しただけ。
一応説明しておくと、元々、人間VS神々だった。
恐らく、神が人間を「運命だ」とか言って殺したりしたんだろう。
詳細は俺にも分からん。
そんな戦争の中、人間側が魔族を殺した。
まぁ、これも詳細は知らん。戦争なんて、何か口実を作れば出来てしまうからな。そして、魔族は本格的に戦いだした。
こうして、三つ巴の関係が誕生した。
まぁ、この話しは俺が産まれるよりもずっと前の話しだ。その時は「魔王」と言う言葉は無かった。
多分、「魔長」とか言われていた気がする。
それから、月日は経ち、ある一人の魔族が産まれた。その魔族は、果てしなく強くなり、いつしかこう呼ばれるようになった。
魔族を束ねる王「魔王」と。
リースは、アランに言われて納得したのか顔を上げる。
「ごめんね。急に変な話ししちゃって。」
「いや別に。急な話しで驚いたが。」
「じゃあさ、もう少し私の話しに付き合ってくれない?」
「いいぞ。」
リースは語り出す。忘れ去れた昔話を
ーーむかしむかし、ある所に一つの平和な村がありました。
ーーある日、物凄い強い竜がやって来ました。その竜はその村の近くの洞窟に住み始めました。
ーー村人は思いました。「良かった。この村を滅ぼそうとした訳ではないのか。」そう安心していると、またある日その竜は言いました。
「この村を滅ぼさないでやる。だから、生け贄を差し出せ。それも、魔力が強い奴をな。」
ーー村人達は悩みました。どうしよう?
ーー確かにあいつは、強い。倒すことなど出来ないだろう。
ーー仕方ない、あの子にするしかない。
ーーすまない。でも理解してくれ。こうするしか、ないんだ。
ーーそうして、その村で魔力が強い家の次女が生け贄になりました。
「良くやった。しかし、こいつはいいな。決めた。この女の家計を百年周期に持ってこい。それならば、尽きる事はないだろう。」
ーーこうして、その村ではその少女の家計が百年周期で生け贄になりました。
ーーしかし、そんな日々の中、ある奇跡が起こりました。「勇者」と名乗る強い者がやって来たのです。
ーー村人は頼みました。
ーーどうか、退治してくれ。あの竜を。もう、あの家系の子が悲しむ姿は見たくない。
ーー勇者は戦いました。その姿は勇敢な者でした。その強さで、竜は勇者に倒されました。
ーーそして、勇者は村から褒美を頂いたり、村の人々から手厚い歓迎を受けました。
ーーこれで平和になったと安心した村人達に、また絶望がやって来ました。
ーーなんと、竜は生きていたのです。勇者に倒されそうになった時に、死んだふりをして、難とか生き残っていました。そして、その竜は言います。
「ふははっ。残念だったな、勇者はいなくなった。これでもう、俺に邪魔する奴はもういない。お前達を助けられる者はもういない。」
ーー村人達は絶望しました。こんな事あるのか?勇者様はもういないのか?
ーーそう、勇者はその頃になると、自分のする事はもうないと思い、何処かへいなくなっていたのです。
ーーそして、また一人とその竜に生け贄を差し出す日がやって来ました。
ーーこれを村人は神の運命だと語りました。
「なんか、嫌な昔話しだな。普通、昔話しってハッピーエンドだろ。」
「まぁ確かに。で、どう思う?」
「どう思うって?」
「そのまんまの意味。感想よ。この昔話しに対する感想。」
感想って言われてもなー。こんなバッドエンドな昔話しにか?
だが、リースの表情は至って真剣そのものだった。こんな顔をしてるのに、ふざけた言葉を言ってしまっては、少し不粋だろう。
「うーん。まず、どうして勇者以外の奴に竜を倒すのを、頼まなかったのか不思議だな。と言うか、勇者がいたのなら、魔王にでも頼めなかったのか?人間の村だったら話しは別だが。」
「そうよね。確かに、勇者以外でも魔王がいたのにね。多分、その村は人間の村だったのかな。だったら、魔王に頼めないわね。」
「ああ、まぁと言っても、それは昔話しだろう?もう、今更考える事でもないさ。」
だって、今は俺がいるからな。
どんな奴だって、この魔王が滅ぼしてくれる。いざとなった時は、魔王軍を動かしても。
「ありがと♪」
リースは笑顔でアランを見つめる。
いいな。おっと俺とした事が、つい見とれてしまった。
俺はベンチから立つ。
その日の帰りのリースは、何かを決意したような感じがしていた。
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「お帰り、どうだった?」
「楽しかったよ。」
「私もいい思い出が出来ました。」
レイナは「ふーん」と、何かを察した様子でこちらを見つめる。
やめてくれ。恥ずかしさがこみ上げてくる。
と言うか、デートしている時のリースは全然、前の印象とは違う感じだったな。まるで、この時が最後だから楽しもうとするような........
その日の夜
レイナと俺はテーブルに向かい合っている。
俺は、目の前にあったコップを一口飲む。
いやいや、気まずいって。何だよこの風景!
リースはもう寝てしまったし、今日のデートの事でも話題にされたら、正直何も言えないかも知れない。
いいや寝よう。
「ふっふっ。私から逃れられると思っていたのかしら?」
俺が立ち上がろうとすると、レイナが逃がさんとばかりに話しかけてきた。
うっ、何て奴だ。逃げれると思っていたのに。
「な、何の事だ?逃げるってそんな、何を隠す必要があるんだ?」
「いやいや、リースととても仲良くしてたじゃない。てか、ゲームセンター行くの初めてだったんだ。驚いたわよ。」
「まさか、レイナ.........」
こいつ、見てたな.....
まぁ、別に見られて困る事はないか。
「リースの笑顔、すっごい可愛いかったねー。アランもつい見とれてたでしょ。」
「ん?いやそんな事ないよ。」
「へぇ~。怪しいけどな~。あの時、頬が揺るんでいたような?」
「そうか?見間違えだろ。」
俺はレイナと顔をあわせないようにする。
なんか俺って、思っている事が顔に出やすいと部下達に言われた事があるからだ。
自分ではわからないけど。
そんな中、急に耐えられなくなったようにレイナが笑い出す。
「あー面白いかった。いやー良いもの見れた。」
「ふぇ?」
「何、そんな顔してるの?いやーこの顔も面白い。」
「まさか、俺を笑い者にするために、デートなんか提案したのか?」
「そうよ。おかげで面白い物が見れたわ。ありがとさん♪」
はぁ、疲れた。
まさか巧妙な作戦だとは。今日はもう寝よう。
俺は、テーブルから立ち上がり、自分の部屋に行こうとする。
「今度は私もよろしくね。」
「へいへい。」
俺はそう返し、自分のベッドに寝転がる。
気持ちいい。やっぱり今も昔もベッドと言うのは良い物だ。
アランは、布団をモフモフする。
んーいい。あっ、意識が..き....れ............
灯台もとぐらしって奴ですなぁ




