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風呂  

ナルクの試合を見た俺達は特にやる事もなく、各々のホテルに戻った。

レイナとエリカが俺の自室に泊まろうとしてる事はリースにすぐバレた。と言うか二人がリースに向かってアランと同室宣言したんだが.......。


そしてレイナは俺のベッドに寄りかかり、収納魔法から取り出した大会の試合表を見る。


「んー、魔王学園は明日特に試合も組まれていないね。」


「うん、そうだよ。しかも次に当たる試合はルミナリエとリースを主力とした編成になるし、俺はまだ出番はないんだよ。」


「その前に師匠、なぜ師匠がアラン達の部屋に泊まろうとしてるんですか?」


「あら、いけなかったかしら?こういうのは咄嗟の頭の回転がものを言うのよ。ルミナリエもまだまだってことね。」


「頭の回転って言うか、ただの脅しじゃねぇか。それにしても....二人ともまさか俺が絶対泊めてくれるだろうと踏んでホテルの部屋を借りずにこっちに来たのか?」


「もっちろーん」「勿論でございますわ」


レイナとエリカの声が重なる。その笑みは心底嬉しそうだった。

その声にアランはため息をもらす。だが、こんなに喜んでいる二人に向かって怒れないのは俺が甘いだけなのか。


「そんなずるいです師匠。自分も姉弟だから一緒の部屋で良いとユウノ先輩にでもーー」


「まてまてルミナリエ!そんな事したら俺が変なシスコン野郎と思われる!」


俺は抗議しに行こうとするルミナリエを引き止める。

アランの必死の抵抗に抗議しに行くことを諦めたルミナリエは「むぅ」と静まった。


「でも本当に暇よね。明日まで何もないし。となるとこのまま室内でごろごろしてるか外に散策に行くかよ。」


リースの言葉に「あっ!」とレイナが何か思い出す。

みんなの視線が一気にレイナにいく。


レイナは「ふっふっふ」とニヤけた笑みをこぼしながら


「明日、イフンとミネセスがデートするらしいよ。」


後は分かるな?とでも言いたげな口調で言った。


まったく、こいつは人の恋路に関しては興味信心だな。

明日の予定は決まりそうだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





風呂と言うのは良い。

なぜか?それは上手く言葉に言い表せられない。だが、風呂には人々を引き込ませる不思議な魔力のようなものがある。


さて、今の俺の状況を説明しようか。俺は風呂でも入って寝ようとした。

そう、男湯に行ったのだ。


だが結果はどうだ?

今まさに女子メンバーが入ろうとしている。いつものレイナ、リース、エリカ、ルミナリエだ。ピチャピチャと水で濡れてる床を歩く音が聞こえてくる。


俺はすぐにその緊急事態を察知し、サウナ室の中へ避難した。

サウナ室なんて女子は行こうとしないだろうと言う目算だ。


サウナ室の扉に耳をくっ付けなくても女子達の声が聴こえてくる。


「それにしても、本当に大きいよねこの施設。お風呂でこんなに大きいなんてエリカの屋敷以来よ。」


「そうね、私の屋敷も大きいと思ってましたけど案外同じくらいでしょうか。」


「うーむ、師匠の屋敷......。一度行ってみたいものですね。」


「あそっか、ルミナリエは行ったことないんだ。凄いよエリカの屋敷。本当にご令嬢なんだ~って気付くよ。」


「レイナ、「本当に」は余計ですわよ。それに、私はレイナの方がご令嬢だったって言うのに驚きましたわ。」


その言葉にルミナリエは「えっ!?」と風呂の中で言葉を響かせた。

知らなかったのか。まぁ俺も驚きの事実だったがな。


それに釣られエリカとリースはクスクスと笑い、レイナはつまらなそうな顔をする。


「そりゃ分からないわよ。こんな隙あらば外に出て暴れてそうな少女が()()()ご令嬢なんてね。」


今度はエリカの分をリースがやり返した。


「はいはい私が悪うございました。まったく、二人揃ってやり返しやがって.........どう思うルミナリエ?あんな胸と態度だけがデカイやつなんか師匠で良いの?」


「ふーん。やっぱり嫉妬していたの?レイナ。自分が少しちっちゃいからってね~。」


エリカは自分の胸を見てからレイナの上半身を見る。レイナは自分の胸を手で隠しながら


「別にちっちゃくないやい!ただ大きいだけなんてーー」


「もう分かったから喧嘩しない。ほら、せっかくお風呂に来たんだから楽しまないといけないでしょ?」


リースは反論しようとするレイナの口を塞いだ。

その光景にルミナリエは「ふふっ」と幸せそうな笑みを浮かべる。


「なんか.......楽しいですね。」


「あら、唐突ね。でもルミナリエは今まで暗殺任務くらいしかやっていなかったんでしょう?」


「はい師匠。いつまでもいつまでも殺し続ける任務、そこには一切の感情はありませんでした。しかし、その冷たい何もない日々を変えてくれたのはアラン様です。」


アランを誇るようにルミナリエは語った。


「今思えばアランのおかげで大きく生活が変わったよね。リースなんかアランがいなかったら変な竜に生け贄として食われていたし。ほんっとアランさまさまだねぇ~。」


「その事ですがリース、あなたには謝らなければなりませんね。」


エリカはリースに向き合う。リースは不思議な顔をした。


「魔王軍が討伐しきれなかった生け贄を求む者達のせいで悲しい思いをさせてしまって。この場の代表、魔王軍第四四魔団長エリカ・エリードが謝罪致します。」


畏まった言い方で丁寧にエリカは一礼をする。

そのしっかりとした姿にリース達三人は圧倒された。


「ですよね?アラン様?」


「「「「???」」」」


エリカの聞き方に俺含め四人は驚く。俺の顔には冷や汗がたらーと垂れていた。

サウナ室にいる筈なのに体が一気に冷えた。エリカを除いた女子メンバーはアランが隠れているサウナ室の方向を一斉に見る。


サウナ室の扉の作りが透明じゃなくて良かった。


「え?アラン....?」


「師匠、そこにアラン様が?」


静寂が風呂の中を支配する。

ルミナリエが恐る恐るサウナ室まで忍び足で近づくと、予想外の答えが返って来た。ルミナリエの視界が急変し、気付いた時にはルミナリエはザッパッーンと風呂の中へ入っていた。


「いる訳ありませんよ。まったく.....ルミナリエはもう少し思慮深くなるべきですね。」


エリカがルミナリエを押して風呂の中へ落としたのだ。

ルミナリエは「ぷはっ」と顔を風呂の中から出して呼吸する。


「なっ、卑怯よエリカ。アランをだしに使うなんて。」


「ふふっ。騙された方が悪いのよ。」


「そうよ.......ねっ!」


レイナはリースに勝利の笑みをするエリカを風呂の中に突き落とそうとした。

だがエリカは華麗な身のこなしでレイナの手をかわし、逆にレイナを風呂の中へ落とした。


リースは次は自分の番になると察し、外風呂へと繋がる扉を開けて逃げた。


「外風呂ですか.....。せっかく備え付けられてありますし、行ってみますか。」


「じゃあ私も行くー。」


「皆さんが行くなら自分も行かない訳はありませんね。」


こうして女子メンバーは外風呂へと向かって行った。

その隙に俺は周りに誰も来ない事を確認しながら服を着替えて自室へ戻った。


途中、後ろからユウノ先輩に声を掛けられてびっくりしたのは余談だ。




風呂から戻って俺は近況報告をしてきたデルスと共にいた。


「ーーと言うのが今までで分かった内容です。」


「そうか。本命は本選か..。なら予選では何も手を出してこないのか?」


「その可能性は現状況ではなんとも言えません。ただ、先ほども申し上げましたが」


「ああ、相手さんが<魔法的衣装(マジックガード)>を密かに揃えてるって話か。それについては興味があるな。<魔法的衣装(マジックガード)>にそこまでの価値があるとは思えないがな。あれは安全性を突き詰めた物だ。」


「その意見に対しては自分も同じです。しかし、調査していく中でとある物を見つけました。」


デルスは収納魔法から小さな魔力石を取り出して机の上に置いた。

紫色の魔力石で、キラキラ光っている。俺は手に取ってその魔力石を眺める。


すると、何やらその魔力石に魔力情報が書き込まれているのが見えた。と言うことはこの魔力石の魔力情報を刻めば.............


「やはり気付かれましたか。そうです、この魔力情報を<魔法的衣装(マジックガード)>に刻ざめば様々な魔法効果が得られます。」


「だがそう簡単にいくものでもないだろこれは。もし魔力情報を刻んだとしてもその効果を発動させる為にはただ魔力を流せばいいってもんじゃない。ちゃんと適切な量とタイミングが重要なんだぞ。」


「仰る通りです。もし完璧に魔力情報を刻んだ<魔法的衣装(マジックガード)>を使いこなす者がいるのならばそれは脅威ですが、そのような者はごく僅かでしょう。」


「例えば私とかでしょうか?」


ガチャと扉が開き、風呂上がりのエリカがやって来た。

その言葉にデルスは頷く。


「だからこそ余計分からなくなっているのです。それほど高性能にしても扱えるものがいなかったら意味がないのですよ。」


「確かにそうだな。うーむ、分からん。とりあえず警戒か。」


「そうですわね。でもアラン様、先ほど女湯を覗こうとした不届き者がいらしたようですが.......」


エリカはアランを横目で見た。

それにアランは苦い顔をした。


「あれはやっぱりエリカか。まったく........男湯と女湯のマークをすり替えるとか俺以外の人が引っ掛かったらどうするつもりだったんだ?」


「あら、犯人が私だと決めつけるのはよくありませんわよ。実際バレる前に逃げるチャンスを作ったあげましたではありませんか。しかも大丈夫ですわよ、デルスに見張りは付けさせましたし。」


エリカは清々しく説明する。


「はぁ?お前デルスにそんな事させたのか?.........ったく、本当に使える物はとことん使う性格だよなエリカは。」


「はい!」


その笑顔は褒められて嬉しそうな表情だった。

別に褒めてないがな。



銭湯って良いですよね~

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