次試合
試合が終わり、休憩室に戻ると次の試合への準備をしているルミナリエがいた。
手元に一冊のノートがあり、よく読み込んでいる。
俺が試合から戻って来たを知ると褒め言葉が返ってきた。
「試合、おめでとうございます。自分も少し見ていました。」
「おう、ありがと。それにしても.....最近の魔導具の進化は凄いものだな。武器に何度も使用可能な魔法陣を刻印するとは。昔なら高位な者がやっていたが、とても学生の年齢では不可能だったぞ。」
「ここ近年は魔導具に対する研究が目覚ましいですから。」
「ほーん。それよりルミナリエ、そんなにノートを見ているようだけどそこまで気を使う内容ではないと思うんだが.............」
俺はルミナリエのノートの中身を見て言葉を溢した。
その中身は、ルミナリエの使用してもいい魔法と[魔技]が書かれているものだった。前から何度も言っているのだが、真面目だよなぁ。
「まっ、本人が良いと言ってるからいいのか。」
「そうですよ。これはアラン様の為にもなるのですから。」
「ん?なんで?」
「だってアラン様の姉である自分がはちゃめちゃな[魔技]でも出したら、姉弟揃って学生とは思えない強さだと怪しまれます。」
「..........確かにそうだな。一理ある。」
「そうです。」
ルミナリエはノートを畳み、収納魔法の中に入れる。
そして顔をほんのり紅くさせながらアランに近づいた。
「アラン様、試合の無事を祈って頬っぺたでいいですから.........キスをしてください。」
ちょっとした上目遣いでルミナリエは聞く。
その様子に自分の顔を紅くなってきている事に気付く。
「そ、そんな何もかもエリカを真似なくても良いんだぞ。そういうーー」
言葉を続けようとしたアランだったが、ずっとアランの目を真っ直ぐ見つめている。
覚悟を決めたアランは唾をごくりと飲み、そっとルミナリエの頬にキスをする。
「.........これでいいか.....?」
「......はい。それでは行ってきます!」
そう笑顔で言ったルミナリエは美しかった。
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魔王学園専用のミーティング室に戻ったアランはユウノとホーネスに褒められた。
俺は周りを見ても二人しかいないのに疑問を持った。その様子にアランの言いたい事に気付いたホーネスは説明する。
「ああ、今委員長やその他のメンバーは各々自由行動してるよ。僕とユウノ先輩は試合の分析とか出場する人を選抜する作業をしているんだ。」
「それにしてもアラン君。先ほどの試合見ていましたが、予想外でした。まさか魔法を一度も使わずに勝つとは。実際私達は魔法を使うものだと予想してましたから。」
「そうだよっ!凄いねアラン君。画面で見ていたけど、年上を倒してしまうなんて。今年の一年生は期待の生徒がいて良かったよ。」
ホーネスが言っている画面。以前、ゲームセンターに行った時にあった物だ。
なんでも人間達が作り出したらしくわざわざ魔物を生み出してその魔物を通さなくても、違う場所を映し出せるとの事だ。
しかも特殊な魔力情報を打ち込めば、その魔力情報に書かれた場所を映し出せる。
これはこの世に存在しない空想の場所も投影出来る。魔導具の進化と言うものは凄まじいな。これも世界が平和になった影響か。
「でもそのおかげでルミナリエさんは比較的弱い人と当たったようね。」
ユウノは画面に映るルミナリエとその対戦相手を見て言った。
その様子は、ルミナリエが短剣を片手に威力の小さい魔法を上手く駆使しながら戦う姿だった。相手は魔力を高める杖を持ち、必死に魔法で応戦しているがこのままではルミナリエの勝利は確実だろう。
「多分アラン君と戦ったスーマンって人が第二魔工学園の一番なんじゃないかしら。あそこはあんまり強くないから、最初に一番をぶつけてそのまま押しきろうとでも考えていたのね。」
「でもその先陣を切った人は負けてしまった。だから次の試合からは段々と弱くなると?」
俺の推論にユウノは「ええ」と頷いた。
「だからアラン君はゆっくり休んでいいよ。特に心配する事はないと思うし、実際僕達も仮だけど決勝に戦う学園を見据えているしね。」
「ちなみに、決勝で戦うであろう学園は強いんですか?」
その問いにユウノは難しい表情をした。
「決勝まではそうでもなさそうなのよ。でもね.......その決勝がね..........。」
「強いんですか?」
「それがね、未知数なのよ。別に三年生とかはある程度分かってるんだけど、一年生がね............。」
やる気がどんどん下がっていきそうなユウノにホーネスは補足説明をする。
「ほら、僕とアラン君が開会式で見たあの子の事だよ。一年生の中では明らかに異質な存在。まぁその点で言ったらアラン君もだけど、その異質さがユウノ先輩を困らせているんだ。」
「そういう事。ただ分かってるのはその子は破滅の力を持ってることくらい。そんな情報だけで誰を選抜したら良いのか分からなくってね。」
理由を聞いたアランは「確かに」と同意した。
戦術学園。去年は学園交流祭の本選の枠を魔学学園と争い、僅差で負け苦汁を飲んだ学園だと聞いている。だからこそ今回は気合いが入ってると言うことか。
「まっ、今ここで考えても仕方ないし、アラン君は自由にしてていいよ。」
「分かりました。では。」
アランはスーマンとユウノに一礼をし、ミーティング室を出ていった。
ミーティング室を出たアランは特にやる事もないので、とりあえず試合を観戦しているリース達と合流しようと観客席へと向かった。
観客席の通路を歩いていると、向こう側から戦術学園の期待の一年生ナルク・シュードが歩いて来た。
その佇まいは自信に満ちていた。
ナルクはアランの目の前まで進むと、そこで立ち止まった。
「君がアラン・エリアルだよね?魔王学園の汚点、<DD>と影で呼ばれていながらとてつもない強さを有しているあの。」
「ああ、そうだ。そっちは戦学学園の希望の星、ナルク・シュードでいいよね?」
ナルクは頷いた。
「今さっきの戦い、見させてもらったけど。アランって魔法より武術の方が得意だったんだ。ちょっと驚きだったよ。」
「そうか?俺的には驚かれる内容じゃないと思うが。」
「いやいや驚きだよ、あの試合を見ていた人にそう思わせるなんて。名役者だよアランは。」
涼しい顔でナルクは言った。
思わせる。そうナルクはきっぱり言った。鎌を掛けてきているだけなのかも知れない。
「役者ではないが。そちらこそ、その破滅の力がいつか自らも滅ぼさない事を祈るよ。」
ナルクは「ふっ」と笑う。お互いに探りを入れているこの状態、その状態が崩れたのは向こう側からオレンジ色の髪をした双子がタッタッタッと足音をたてて近づいて来たからだ。
双子の一方はショートで頭の両側を三編みにして肩までかからない位にしている。
もう一方もショートで三編みにした部分をポニーテールのように頭の後ろにしている。これも肩にかからない位にしている。
おそらくこの三編みの位置が姉か妹を表しているのだろう。
それほどこの双子は似ているのだ。
「ナルクさん!他校の人とは試合が始まるまで関わらないって言われてたじゃないですか!」
三編みが二つの少女はそう言った。
「あぁごめんごめん。ちょっと実際に会ってみたい人がいてね。」
ナルクがそう言うと三編みが一つの少女がアランの事をまじまじと見る。
「へぇ~、この人がナルクの会ってみたい人?...........なぁんだ、あんまし強くなさそうじゃん。これじゃあイリス一人でも勝てるんじゃないの?」
「そんなっ!?それはないと思うけど.......」
「これはこれは、手厳しいな。」
俺は苦笑するとナルクも釣られて苦笑した。三編みが一つの少女は双子の姉か妹のイリスの隣に立つ。
「一応自己紹介はしておくわ。私はアリス・ケントス。そして」
「アリスの姉のイリスです。どうぞよろしく。」
イリスはアランに握手しようとするが妹のアリスがイリスの手を払い、それを阻む。
「大丈夫よイリス、あんな弱い<DD>なんかと握手しなくて。下手したら弱体化の魔法とか掛けられちゃうかも知れないわよ。」
「でもアリス。あの人さっきの試合で凄い剣術だったよ、やっぱ<DD>って言うのは嘘なんじゃ?」
イリスの問いにアリスは首をぶんぶん横に振る。
「そんな訳ないでしょ、かの魔王様の名と同じなんて恐れ大いのに.....あれはきっとまぐれよまぐれ。」
「ほら、何か言われているが言い返さなくていいのか?」
ナルクはアランを見る。だがアランは顔色変えずに
「特に言い返す言葉もなくてね。別に間違っちゃいないし。」
「そうよ。ふふっ、いつか魔王学園と当たる時が楽しみね、この私がボッコボコにしてあげるわよ。」
アリスはそう宣言した。




