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女王様は最強の予定  作者: violet
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鏡の力

「マクシミリアン、気持ち悪い。」

セシルがマクシミリアンにしがみついて震えている。

そこはランベルトの妹ダリアの部屋の前だった。

「ここから先がいつも行けないのです。」

ランベルトが案内するも一歩も踏み出せない。

「下がっていてください。」

マクシミリアンはセシルを片手で抱き、もう片方の手で空に印を切る。

縦、横、そして水平に斬った。

何かが割れる感覚が3人に感じられ、身体が軽くなった感覚がある。

セシルがマクシミリアンに抱きついている。

「マクシミリアン、カッコいい!!!」

マクシミリアンがどや顔しているのを見ると、とても人間らしい。

セシルを抱いたままでマクシミリアンが部屋の中に入って行くのを追う。


部屋の中には父であるリンドソーズ公爵がいた。

奥のベッドには母と妹の姿がある。

「父上、母上とダリアは?」

「よくこの部屋に入れたな、強力な魔術がかかっていたはずだ。」

「こちらの魔術師お二人にお願いしました。」

公爵は二人を見て眼を見張ると寄って行った。

「この魔術を破るとは、かなりの魔力をお持ちとお見受けする。

もう、わかってらっしゃるのでは?」

やはり、セシルの存在が大きいのだろう、魔族とは思っていない。

「お嬢さんはもう生きておられず、奥様と二人の時が止まってますね。」

「どうして、こんなことになったのか、私にはわからないのです。

なんとか、妻がこちらに意識を向けてくれるよう手を()くしたのですが。」

「父上。」

「ランベルト、すまなかった。言えなかったんだ。」

ランベルトは父親の手を取ると、ソファーに座るように促した。


「ダリアが風邪をこじらせて、医者を呼んだのだが間に合わず。」

娘を思い出したのだろう、嗚咽(おえつ)が混じる。

「娘に(すが)りついた妻の動きが止まったのです、娘も妻もその周りだけが全て止まったのです。

それで、誰にも悟られないように部屋に魔術で鍵をかけました。」

マクシミリアンはセシルを膝に抱きながら、公爵の向かいの席に着く。

「それで貴方はお嬢さんに似たブロンドの娘を集めて夫人の心を()こうとした。」

「そこまでおわかりでしたか。結果もおわかりでしょう、どの娘も妻の気を惹くことはできませんでした。」

「私はこの時を進めることができます。ただし無理やりですので、時を止めてまで娘さんと離れたくなかった奥様の心の保障はできません。」

そう言うマクシミリアンの足元に公爵は膝まついた。

「妻を、エバンジェリンを助けてください。大事な妻なんです!」

「父上!」

マクシミリアンは公爵をソファーに戻し、ランベルトに振りむいた。

「お父上はずいぶんお母上を想っておられるようだ、用意してもらいたいものがある。」


用意したのはダリアの服だ、それをセシルに着せるとマクシミリアンとセシルがベッドに向かう。

セシルはダリアにしか見えない。

「少しの間、セシルがダリアに見える魔術を皆さんにかけてあります、それは夫人にも。

多分、夫人は鏡をお持ちだ。

夫人には時を止めるような魔力はありません、人よりは大きいですが。

鏡が何十倍にも増強しているのです。ランベルト、夫人が鏡持つ手を(ゆる)めたら直ぐに取り上げて欲しい。」

マクシミリアンが言うが、そんな魔術もあるのか、魔族の能力は凄すぎる。



「お母様、お母様、こちらにいらして。」

セシルがエバンジェリンに声をかける。

「お母様。」

セシルは動かない公爵夫人に声をかけ続ける。

「お母様、ダリアはお母様とお父様とお兄様が大好き。だからダリアが遠くにいってもずっと娘でいさせてね。天使様が迎えにきてくれてダリアは行くね。ダリアは幸せよ、さよなら。」

ベッドの近くに寄っていたランドルフが夫人の手から鏡を奪う。

夫人の鏡を持つ手の力が抜けていた、セシルの言葉を聞いているのかもしれない。

その瞬間その場にいた全ての人間に時が動き出したのがわかった。

「ダリア。」

夫人がセシルを見て娘の名を呼ぶ。

「お母様大好き。」

次にセシルは公爵とランベルトの方を向いて微笑む。

「お父様、お兄様大好き。ダリアのこと覚えていてね。」

「ダリア!!!」

叫んだのは公爵だ。

セシルの姿が薄くなり、光の玉に包まれるように消えてしまった。

その姿を捕まえようと夫人が駆け寄るのを公爵が抱きしめている。



セシルは部屋の外にマクシミリアンといた。

「マクシミリアン、それが鏡?

今はもう気持ち悪くない。魔術が発動している時だけだったのね。」

「もう気持ち悪くない?

では、この鏡ではないのか。

だが、気持ち悪くなったんだから何か関係がある、多分作者が同じだろう。

ガンダルト程の工芸師でしか、これほど力のある鏡は作れまい。」

「綺麗な鏡ね。」

セシルが鏡を覗きこむと、そこに映ったのは成長したセシル。

森の小屋でマクシミリアンの前に表れたセシルだ。

マクシミリアンが顔を押さえた、指の隙間(すきま)から血が流れ出る。

「マクシミリアン!!」

マクシミリアンの膝の上でセシルがあわてて血を拭こうとする。

「動かないでくれ、セシル。」

「え?」

セシルがそっとマクシミリアンの身体を触って真っ赤になる。

「マクシミリアン、鼻血。」

「仕方ないだろ、森の小屋の妖艶なセシルの顔が映しだされたんだから。」

堅物(かたぶつ)程イヤラシイってホントね、セシルはちょっと期待するのだった。


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