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女王様は最強の予定  作者: violet
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鏡の手がかり

ランベルトは、セシルに圧倒されながら話を切り出した。

「ここには、妹へお土産を買いにきたのですが、途中で貴殿の魔術を見て、びっくりしました。

隣の国のイザーク・バンダインという高名な魔術師にもひけをとらない。」

「イザークってクマの勇者と一緒でミアって女の子から逃げている。」

いらない事はよく覚えているセシルである。

「よくご存知なんですね。」

「ほんの顔見知り程度です。」

マクシミリアンがセシルに(しゃべ)らせまいと口をはさむ、すぐに魔族だとバレそうである。

「それよりお話とは?」

ちょうどケーキが運ばれて来たのでセシルはおとなしくなるだろう、とマクシミリアンは安心して話を聞く態勢に入る。


「妹がいるのですが、最近1ケ月近く会えないのです。

病気が悪化して、うつる病気であると父が言うのですが、母にも会えないしおかしい事ばかりで。

今日は妹の好きなケーキを買いに来て、貴方をお見かけしたという訳です。

医者が治せないなら、一度魔術で診ていただけないかと。」

「申し訳ありませんが、私のする事ではありません。仮に病原が判ったとしても、魔術師の言うことなど信じないでしょう。」

「貴方は先程の魔術は全てではないでしょう。隠してらっしゃるように見受けられる。

もう貴方にお願いするしかないのです。

僕もほんの少しだけ魔術が使えます。

貴族には魔力を持っている者が多いのです。」

マクシミリアンはセシルにケーキを切り分けながら、ランベルトを見る。

「それでは、すでにお分かりになっているのでしょう。」

ランベルトの顔色が変わる。

「貴方は私の魔術が気になったのではなく、セシルが気になった。妹さんと同じ髪の色だから。」

セシルの髪はブロンドだ、しかも見事な黄金色。

「私の心を探ったのですか?」

「そんな事はできませんし、勝手にはしません。ちゃんと前もって許可をとりますよ。」

はーい、と手を挙げてセシルが割りこんできた。

「不安な声が聞こえてきたの。」

「セシル、例え聞こえても本人に言ってはいけません。傷つきますから、秘密にしないといけません。」

ほら、また食べこぼしている、とアレもコレもまとめてマクシミリアンの注意が始まった。

「場所を換えませんか、ここは周りに人が多すぎて。」

話の内容がここでは困るでしょ、とマクシミリアンがランベルトに言う。

「それでは、僕の馬車で屋敷に来られませんか?お誘いしようと思ってました。」


リンドソーズの屋敷はさすが公爵邸という立派なものだったが、雰囲気が暗い。

セシルなどはマクシミリアンにしがみついて、怖いね、と言っている。

「父が厳格で使用人達も堅い者しか残らない、子供には居心地が悪いだろう。」

こちらです、案内された部屋は庭園を望むテラスのついた客室である。

壁には装飾のついた立派な鏡があった。鏡の前にセシルが立つが何も起こらない。

ガッカリしているセシルにマクシミリアンが声をかける。

「簡単にいくとは思ってませんよ、きっと見つかります。」

「鏡をお探しでしたね、妹の部屋にも古い鏡があります。

名工ガンダルトの作品です。」

「見せて頂くことはできませんか?」

マクシミリアンがセシルの様子を見ながら訪ねるが、

「先ほども言いましたように、妹の部屋に入れないのです。

妹は鏡を怖がっていたので引き出しに入れたままで使ってなかったようです。」

「怖いとは?」

「ガンダルトの鏡は細工も素晴らしいのですが、鏡面が美し過ぎるのです。魂を吸いとられるようだ、と言う人もいるほどです。真実を映す鏡といわれ、魔術師が好んで使うと言われてます。」

「その鏡を売って頂くことはできませんか?」

「母が降嫁の折に王家から持ってきて、今は妹のものです。公爵である父の判断がないとお答えできません。

それにとても高額になります。」

「金の心配はいりません、城ひとつ買えるぐらいは用意してあります。」

「貴殿方は何者ですか?」

「鏡を探している旅人ですよ。」

(わず)かな時間静けさが支配する、マクシミリアンとランベルトはそれぞれ思いにふけっている。

セシルは一人、鏡の前でいろいろなポーズをして遊んでいる。


マクシミリアンが口を開く。

「私もセシルも多少の魔力があります。

貴方の心の声が聞こえてきたのです。大きな不安だったので外にでたのでしょう、普段はそんな事はありません。」

ランベルトは何も応えない。

「妹さんと母親への心配事、父親への不信。

屋敷に幼女が運び込まれたのを見られたのですね。」

「そこまでお分かりですか、やはり高い魔力をお持ちだ。」

ため息をつきながら、ランベルトがソファーに深くもたれる。


「どこから話すか、母のことです。

母はこの国の王女として弟が生まれるまで13年間王位継承者として育てられました。弟が生まれるとすぐに父に降嫁されたのです。

継承者として大事にされていたのが弟が生まれた途端、嫁にだされた母のショックは大きかったようです。

僕が生まれ、平穏な生活のはずが、弟王太子は身体が弱く大人になる前に亡くなられたのです。

そうなると継承問題が再燃しました、母しかいないのです、つまりは僕になります。

僕が王太子になると公爵家の跡取りが問題になります。

長い間、王位継承者としての教育は母の心を削っていました、それが降嫁させられ、落ち着いたのもつかの間、次はもう一人子供を望まれる、母は心身ともに異常をきたしました。

そうして生まれたのが妹でした。

母は妹をとても可愛がり、家中に花が咲いたように明るくなりました。

この家で妹を無くすわけにはいかないのです。

その妹の様子がおかしい、確かに風邪で寝込んだのは1ヶ月近く前です。母も閉じ(こも)っています。

看病に付き添っていると聞いてます。」


「そんな中で街で誘拐されたであろう子供の姿を見たのですね?

貴方はかなり魔力があるようですね、もう答えはだしている。」

ランベルトが目を伏せる、それはマクシミリアンに応えるかのように。


真剣な話をしているのに、ちょっかいをかけるのはセシルのクセだ。

「大丈夫よー、貴方イイ子だもん。」

幼児のくせにすっかりお姉さん気分である。

言われたランベルトはビックリしている。

「もう妹さんの生気がないこと感じているんでしょ?」

セシルにオブラートに包むような会話テクニックは望めない。

「この屋敷の中で私には妹さんの生気がどれか分からないけど、ランドルフは感じているんでしょ?」

(すさ)まじい魔力を感じてランベルトが立ち上がる。

クスッとセシルが笑う。

「合格、ちゃんと魔力がわかるのね。」

セシルが近寄ってくる、魔力に押しつぶされそうな圧迫感を感じる。

「セ・シ・ル!!」

マクシミリアンがセシルを抱き上げ、床に座らす、正座である。

「むやみに魔力を使わないって約束しましたね。破るとは悲しいですね。」

「だって、ランベルトいい子だから、ちゃんとお父さんとお母さんに愛されて育ったんだと。」

「違います、約束を破った事を言っているんです。約束破るのは嘘つくのと同じぐらい悪い事です。」

「はい、ごめんなさい。」

セシルの声が小さくなっていく。身体も小さくなっていくようだ、実際に縮こまっている。



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