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女王様は最強の予定  作者: violet
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二人の想い

森へのピクニックは途中で雨に降られた。

びしょ濡れになって二人で森の小屋に辿り着いた時には笑い合った。

「マクシミリアン、雨が滴っているわ。」

「セシーもだよ。こっちにおいで、火を焚こう。」

マクシミリアンは薪を暖炉にくべると魔術で火を着けた。

服の水分を魔法でとばそうとしたマクシミリアンをセシルが止めた。

「待って、マクシミリアンこのままでいたいの。」

「風邪をひいてしまう。」

「それはマクシミリアンが温めて。」

マクシミリアンはセシルの濡れた服を脱がすと新しいタオルでくるんだ。

自分も脱ぐとそのタオルに一緒にくるまった。

濡れて冷えた身体がお互いの体温で温まる。

自然に重なる口づけは深くなる。

「セシーが大人になるのをずっと待っている。」

セシーの幼児の首筋に顔を埋めながらマクシミリアンが言った。

「マクシミリアンは子供の身体がいいんじゃないの。」

「まさか、セシーはずっとそう思ってきたのか。」

「ずっとずっと昔、はっきり覚えてないけど、マクシミリアンの声で大人になるな、って聞いた記憶があるの。」

赤ん坊の頃にセシルにかけた魔術が残っているのか、それで幼児なのか。

セシルは私が幼児好みの変態だと100年以上思っていたのか!

「セシー、今すぐ大人になって私と結婚しよう。」

「マクシミリアン、好き。」


キスをするとセシルが大人になった。

大人というより少女ぐらいだ、なんてかわいいんだ。



朝の光の中、腕に抱き込んだセシルの異変にマクシミリアンは気が付いた。

縮んでいる!!

幼児体型に戻っているのだ。

昨夜は深く愛し合ったはずなのに、何故だ。

私がヘタクソだったのか。

落ち込むマクシミリアン。

「マクシミリアン。」

セシルの目が覚めた。

「セシー、愛してるよ。」

初めての朝を二人で迎えたのだ、例え幼児体型に戻ったとしても嬉しさは隠せない。

「私、子供に戻っちゃったのね、ダメだったの私。」

泣きはじめるセシルを抱きしめ、マクシミリアンが囁く。

「とんでもない、素晴らしかったよ。セシルは身体大丈夫?」

「うん、身体がだるいし、痛い。」

「痛い、ってどこが。」

「だって初めてだったから。」

幼児の身体だけど頬を染める姿は若い女性のものだ。

甘い甘い二人の朝、問題は幼児にもどった事だ。

二人の気持ちに問題はないが、マクシミリアンには重大問題だ。

セシルを知った以上、我慢ができると思えない、幼児でも襲いそうだ。

早急に原因を調べねばならない。


「マクシミリアンお腹すいちゃった。」

「そうだね、昨日は長い時間愛し合ったからね、待っておいで、直ぐに用意する。」

セシルをタオルでくるんで裸のマクシミリアンが朝食の用意に立つ。

「マクシミリアン、きれい。」

筋肉で引き締まった身体は彫刻のような美しさがある。

セシルは我が身を振り返ってみる、ぷくぷくした幼児の手、この小さな手でマクシミリアンを繋ぎ止めておけるのだろうか。

どうして自分は大人の身体にならないのだろう。



「セシー、こんなところにいたのか、探したよ。」

セシルは小屋を出て湖の岸辺に座っていた、マクシミリアンがずいぶん探したようだ。

湖に小石を投げ込んでいる、ポチャン、ポチャンと返事もせずに投げ込んでいる。

「お腹空いているんだろ、用意は出来ているから食べよう。」

マクシミリアンが魔術でテーブルごと食事を岸辺に運んだ。

「何を悩んでいるんだ、悲しい顔をしている。」

「大人になりたい、マクシミリアンに釣り合う大人になりたい。」

ウルウルの瞳は保護欲をかきたてられる。

「セシーはちゃんと大人だよ、見かけが幼く見えるだけだ。」

ちゃんと私を受け止めてくれたよ、とマクシミリアンが囁く。

頬を赤く染めてセシルが、マクシミリアンをつつく、

「もう、恥ずかしいこと言わないで。」

マクシミリアンがセシルを膝に乗せ食事を始めると、湖が波立ち始めた。


「久しぶりに魔族の声を聞いたな、ご一緒してもいいかな、」

現れたのは、白髪の老人、魔族としても随分の高齢だ。

「今の魔王だな、わしはキンバリー。」

「キンバリーだって!」

答えたのは魔王のセシルではなくマクシミリアンだ。

「精霊王キンバリー、どうぞお座りください。」

マクシミリアンが魔法で椅子をもうひとつ出してキンバリーに勧める。

「久しぶりに目覚めた、500年ぐらいかな。」

そう言いながらテーブルの上のサンドイッチをしっかり食べている。

「二人とも大きな魔力を感じるが、魔王はどっちだ?」

マクシミリアンに抱かれたセシルが、私です、と答える。

「何か、呪いがかかっているようだな、これはやっかいだな。」

「王はこれがわかるのですか!?」


「かけた術者は死んでいるようだな。解く事はむずかしいだろう。」

その言葉にセシルががっかりしたのがわかる、セシルの喜怒哀楽は分かりやすい。

「できないとは言ってないぞ。」

「精霊王、こちらにデザートのパイがあります。チェリーはお好きですか?」

マクシミリアンが食べ物で懐柔にかかる。

「そっちのお嬢ちゃんの御先祖の誰かが恨みをかっていたようだな。

かなり古いようじゃ。」

「たしかにセシーは王族に久しぶりの王女です。」

マクシミリアンの指がセシルの髪をかきあげる、その仕草は恋人そのものだ、セシルの姿が幼児でなければであるが。

母親が食事する娘の邪魔な髪をあげているようにしか見えない。

残念な風景だ。


「女性の方がこの呪いに弱かったんだろうな、呪った本人の何倍も強い力で魔術が増加されている。」

「何か道具を使ったということですか?」

「多分、鏡であろうな。その古い鏡はどこかにあるはずじゃ。

魔王に呪いをかける能力者は滅多にいまい、力のある鏡を使わねばかけられぬだろう。

しかも命をかけないと無理だ、だから生きていないと言った。」

「かなり古いということでしたら、もうないのでは?」

「鏡がなければお嬢ちゃんの魔力で破れるだろうに、かかっているという事は鏡がまだあるという事だ。」

「鏡を割ればセシルは大人になれる!?」

美貌のマクシミリアンと幼女のセシルが抱き合って喜ぶ。



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