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18 「醜いアヒルの子」は「アヒルの醜い子」と置き換えられるか

 エッセイランキングで見かけた、「醜いアヒルの子」は「醜い」が「アヒル」を修飾するのか「子」を修飾するのか分かりづらい、という話。

 確かにそうですね。でもだからといって、語順を変えて「アヒルの醜い子」とするのは、ちょっと違うのではないかと思います。



 まず、「醜いアヒルの子」の二通りの解釈について。

 「醜い」が「アヒル」を修飾する場合、「醜いアヒルの子」から読み取れるのは、醜い親アヒルとその子供の存在です。子供が醜いかどうかは不明。

 「醜い」が「子」を修飾する場合、「醜いアヒルの子」から読み取れるのは、醜いアヒルのヒナの存在だけで、親アヒルについては言及されていません。

 この二つの「子」は意味が少し異なっています。前者の「子」は「親」に対しての「子供」ですが、後者の「子」は「大人」に対する「子供」で、「幼い者」を表しています。

 また、こうも言えます。前者の「アヒル」は「子」の親についてで、後者の「アヒル」は「子」自身についての属性です。


 二通りに読めるのはややこしいし、語順を変えて「アヒルの醜い子」にすれば「醜い」が修飾するのは「子」だけになるから、意味を取り違えることも無くなって解決!……と、本当にそうなるでしょうか。



 「アヒルの醜い子」にすると、「アヒルの」と「子」が離れることになります。ここに違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。

 日本語で、生まれて間もない生き物を表す場合、例えば生まれて間もない猫や犬を「子猫」や「子犬」と言いますが、「猫の子」「犬の子」とも言います。

 「猫の子一匹いない」や「蜘蛛の子を散らす」のような慣用句にも使われるように、生まれて間もない生き物を表す時に「(生き物)の子」という言い方をすることはよくあって、定型句のようなものです。「犬の子」や「猫の子」は辞書にも載るくらいですから、これで一つの単語とも言えるでしょう。

 「子アヒル」を表す場合の「アヒルの子」も同じで、「猫の子」や「犬の子」ほどではないけれども、「アヒルの」と「子」の結びつきがかなり強いため、「アヒルの醜い子」とすると違和感に繋がるのだと思います。


 これは「女の子」や「男の子」とも似ています。「少女」を表す「女の子」はこれで一語なので、「かわいい女の子」とは言いますが、「女のかわいい子」とは普通言わないのです。



 「醜いアヒルの子」は「醜い」と「アヒルの」がそれぞれ「子」を修飾しているのではなく、「アヒルの」が「子」を修飾し、「醜い」は「アヒルの子」を修飾している、というのが正しいのかもしれません。

 「醜い《〈アヒルの〉子》」



 というわけで、「醜いアヒルの子」はやっぱり「アヒルの醜い子」ではなく「醜いアヒルの子」でいいのでしょう。

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