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14 「足をすくう」と「足もとをすくう」

 最近立て続けに「足もとをすくわれる」という表現を見たもので、例によって例のごとく考えてみました。



 現在では「足もとをすくう」や受け身形の「足もとをすくわれる」がよく使われるようですが、本来は「足をすくう」「足をすくわれる」が正しく、「足元をすくう(すくわれる)」は『誤用』とされています。ちなみに「足をすくう」の意味は、『相手のすきをついて失敗させる』です。(コトバンク『デジタル大辞泉』)



 「足もとをすくう(すくわれる)」が間違いだと指摘される際によく言われるのは、「すくう」というのは横に払うような動作を指すため、足もと、つまり足の辺りの地面や空間を払ったところで何の意味も無いではないか、ということです。それに対して「足もと」には「足の下部」という意味もあるので、あながち間違いとは言えないといった意見もあります。

 個人的には「足をすくう」でも「足もとをすくう」でも、どちらでもいいんじゃないかと思っています。

 私の「足もとをすくう」のイメージはこうです。



 「足もとをすくう」と言った場合、「すくう」は「横に払う」のではなく、「スコップなどで地面の土をすくう」方の「すくう」ではないかと思うのです。つまり、足もとの土をすくうことで地面に穴があき、相手がその凹みに足を取られてバランスを崩すことから、相手を失敗に導くという意味になる、というイメージです。過程は異なりますが、結果は同じというわけです。

 「足もと」にそこまでの意味を持たせるのは無理があるのでは、と思われるでしょうか? しかし、「足もとを固める」という表現があります。『物事を行うためのよりどころ』(『デジタル大辞泉』「足もと」の意味6)を強固にすることを意味し、類似する表現に「地盤を固める」などがあります。「足もとを固める」というのは、足もとの地面の土を踏み固めるようなイメージから来ているのでしょう。こう考えると、「足もとをすくう」が足もとの地面の土をすくうことを表すのは、特に不自然ではないと思うのです。

 まあ、「すくう」と言うとスコップに残っている方の土に焦点が当たっていて、穴の方に焦点を当てるなら「掘る」という言葉の方が適切なのかもしれませんが、婉曲的な表現だとも考えられます。屁理屈?



 さて、ここで「足をすくう」と「足もとをすくう」を比べてみると、「足をすくう」は相手への直接攻撃であるのに対し、「足もとをすくう」は間接的な攻撃です。もしその行為を咎められても、別に転ばそうと思ったわけじゃないし、と責任逃れが可能です。「足をすくう」人よりも「足もとをすくう」人の方がたちが悪い。陰湿な感じが表れていていいと思います。自分がするなら絶対「足もとをすくう」方を選びますね!

【参考文献】

コトバンク『デジタル大辞泉』

https://kotobank.jp/

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