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ショートショート集

超電磁戦士 スーパーサンダー

作者: 宮本摩月

 俺は正義の味方スーパーサンダーだ。誰が何と言おうとスーパーサンダーだ。

その証拠に毎週火曜日の夕方六時に悪の組織デビルズファイアーと戦っている。

 子供たちの憧れの的、スーパーサンダーだって恋もするし腹も減る。ストレス解消にドカ食いするときもある。ファンの女の子をホテルにお持ち帰りしたりもする。ナンパもするしキャバクラにも風俗にも行く。問題はないよね。法律に触れるわけじゃないし。

 というわけで、プライベートの俺は普通の青年と同じように散財し、当然の結果として慢性的に金に困っているわけ。いや、正直に言おう。下積みのミュージシャンや芸人、売れない俳優なみに貧しい生活を送っている。

 だって、正義の味方稼業なんて危険な割に全然儲らないんだぜ。いや、マジで。

 国家から補助あると思ってた? 甘いね。「地球征服を企む悪の組織なんてのは子供だましの虚構」ってのが国家の公式見解だからね。実際には恐怖の怪人ゴリラ男は実在するし、幼稚園を襲撃する凶悪なサソリ魔人の脅威のことだって国家はわかってるさ。でも建前上、そういうのは否定しなきゃいけないんだ。だから俺たちの業界に国家予算は回ってこないってわけ。

 スポンサー収入なんて雀の涙ほどしかないよ。ウルトラマン、スーパーマン、仮面ライダークラスは別だよ。彼らみたいな大師匠になったら一回の闘いで一般人の平均年収稼ぎだすからね。でも俺たちのギャラなんて哀れなもんだよ。

 てなわけで、俺たち正義の味方はバイトで生計を立てている。身体能力は異常に優れてるから、引っ越し屋、鳶職、スタントマンなどを選ぶ連中が多くて、報われない正義の味方稼業に見切りをつけてバイトを本業にする奴らもかなり多い。

 俺はといえば、愚痴は言うもののこの仕事が気に入っている。自分で言うのもなんだけど、純粋に正義を愛してるんだ。

 念のため言っておくけど、ファンの女の子をつまみ食いできるから続けてるわけじゃないよ。いや、マジで。

 だから、バイトも正義の味方稼業にプラスになりそうなのを選んでるんだ。

 デパートの屋上なんかでやってるだろ。いわゆる何とかショーってヤツだよ。仮面ライダーショーとかウルトラマンショーとか、あれね。

 このバイトは勉強になるよ。子供たちの反応が生で感じとれるからね。どんなアクションがウケるのかも体で覚えられるし。わざと非効率的な攻撃をしたり苦戦したほうが盛り上がるみたいな姑息な知恵も学んだ。

 でも、それだけじゃない。このバイトで俺が一番気に入ってる点は、悪の組織の連中が怪人役のバイトをしてたりするところなんだ。奴らは奴らで財政に困ってるんだろうね。

 もちろん、お互いプライベートだし本気で闘ったりしないよ。お互いに切磋琢磨してレベルアップできるところがいいんだ。それに悪の組織の女の子って結構セクシーな子が多いしさ。

 念のため言っておくけど、俺がこのバイトをしてるのは正義の味方稼業の勉強のためだからね。

 悪の組織の女の子をお持ち帰りできるからじゃないよ。いや、マジで。


《終》

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― 新着の感想 ―
[一言] 悪の組織で侵略計画を考えていた人が組織を抜けて、今はヒーロー番組で企画をやってる。とか、ありそうな、やさしい世界。主人公と結婚した悪の組織の妻との子は、正義と悪の心で悩みながら生きるいい話が…
[良い点] 実に生々しい! でも、実際はきっとこうなんだと思います。 しかもヒーローだけじゃなく、悪も悪で大変なんだ…… やるせないです。 この作品好きです。 読み切り型で連載して、毎回お持ち帰りし…
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