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ムーンライトララバイ  作者: 社浦 英
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序章



 スクランブル交差点の信号が緑に変わった瞬間に、一台の自転車が飛び出して来た。脱兎の如く、右へ左へとハンドルを器用に切りかえし、人々の間を進んで行く。地方の駅ではあるが、朝の通勤ラッシュの時間帯だ、駅前は行き交う人々でかなり混雑していた。

 ここ青宮駅は、JR東海道線と名鉄線の二線が乗り入れている。JRの快速に乗れば、一駅、10分で名古屋駅に到着する。そんな利便性からも駅周辺には新築マンションが立ち並び、青宮市の人口は緩やかに増加していた。

 自転車は、交差点の反対側から歩いて来る女子高生二人の僅かな隙間をすり抜けて行った。しかし、女子高生にとってみれば、ひやりとしてようで、右側を歩く髪の長い女の子が「きゃっ。」と小さな悲鳴を上げた。

 ガード下の自転車置き場にはすでにたくさんの自転車が停まったいる。彼は自分の指定区域に素早く自転車を停め、駅構内へと入って行った。改札を通り抜けて、階段を一段ぬかしでホームへと上がる。その一連の動きに運動神経の良さが窺えた。電車にはなんとか間に合ったようだ。しかし、この時間帯がラッシュのピーク、ホームには人があふれかえり、階段のところまで並んでいる始末だ。ほぼ最後尾に並ぶことになり、この7時17分快速に乗るには、電車の扉に手をついて無理矢理に乗るしかすべがない。一瞬の逡巡の挙句、なんとか上手く乗り込んでいった。

 電車が名古屋駅に着くと大半の人がここで降りる。地下鉄乗り換え口方面へ人の流れに沿って歩いて行くと、なんとなく待ち合わせをしている三人の友人に落ち合った。「おう。」極端に朝の弱い山本は、寝癖だらけの爆発したような頭で現れた。「今日は一段とスゲー頭だな。」とは言わないけれど。

 地下鉄桜通線に乗る頃には同級生四人になったいた。彼らは中高一貫の私立高校に通う高校二年生である。一応に中学受験を経験し、小学校五、六年生はそれなりに勉強した。愛知県屈指の進学校と言われているが、高校受験が無い為に呑気な中学時代を大半の生徒が過ごすことになり、そのしわ寄せで大学受験で苦労する生徒が多いのも特徴だ。ちなみに男子校である。当然ながら、六年間女子のいない学校に通うことになるのだが、中にはその間に一度も同年代の女子と会話をしなかった生徒もちらほら、いや相当数いるのも現実だ。

 そんな男だらけの学校に通う椎野真嗣しいのまつぐはこれまでの四年三ヶ月となんら変わらない朝を迎えていた。

 

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