【コント】止まらない服部さん
女性看護師
「服部さん、診察室にお入りください。」
(診察室によく似た黒装束の男性3人が入ってくる。)
医者
「あ、いや、1人ずつお願いします。」
服部
「すみません。彼らにも関係ある話なんで・・・」
医者
「はぁ・・・?
では、どうぞ。」
服部
「失礼します。」
医者
「で、今日はどうしました?」
服部
「あの・・・私、忍者でして。」
医者
「忍者。」
服部
「はい。
で、昨日なんですけど、敵の忍者に追われまして、袋小路に追い詰められたんですね。」
医者
「袋小路に。」
服部
「それで私、このままじゃ殺されると思い、とっさに分身の術を使ったんですよ。」
医者
「はい。」
服部
「敵は私の分身の術に恐れをなして逃げたんです。」
医者
「よかったじゃないですか。」
服部
「そこまではよかったんですが・・・」
ドロン(突然、診察室内に煙が巻き起こり、服部が一人増える)
医者
「?!」
服部
「あの・・・分身の術が止まらなくなりまして・・・」
医者
「あー・・・」
服部
「私と一緒に入ってきたこの2人の分身も待合室で待っている間に増えてしまったもので・・・」
服部の分身たち
(一礼)
医者
「どのくらいのスピードで増えているんですか?」
服部
「大体、10分に1人のスピードで・・・」
医者
「じゃあ、この他にも分身がいるってことですか?」
服部
「今、私の家にいます。
いるというか、今、私の部屋の中は私の分身で『すし詰め』状態になってまして・・・。」
医者
「あららら・・・。」
服部
「ちょっと部屋いっぱいになってしまったので、
朝、ゴミ捨て場に捨てておいたら、近所のおばちゃんたちのウワサになって、
『勝手に分身を捨てないでください!』って注意されまして・・・」
医者
「そりゃ、なりますよ。」
服部
「捨てることもできず、増え続ける一方で・・・。
親戚や友達に引き取ってもらえないか頼んだんですが、断られる始末で・・・。」
医者
「仔犬が産まれたとかいうレベルじゃないですからね。」
服部
「とりあえず、分身をとめてもらおうと思ってきたんですが・・・。」
医者
「いや、私に言われてもなぁ・・・。
うーん・・・。(カルテに何か書く)
処方箋出しておくんで、帰りに薬屋に寄ってください。」
服部
「治りますかね?」
医者
「わかりません。」
服部
「ありがとうございました。(席を立つ)」
医者
「お大事に。」
翌日
女性看護師
「服部さん。診察室にお入りください。」
(診察室によく似た黒装束の男性7人が入ってくる。)
医者
「すみません。
お待たせしちゃって。」
服部
「あんまり待たせないでもらえますか?
分身の数が待ち時間を物語っていると思いますが・・・。」
医者
「すみません。土曜日なんで、患者さん多いんですよ。」
服部
「10分おきに増えていく私を見て、他の患者さんから握手を求められたり、写メを撮られたり・・・
なんか今、私が待合室で並んで座っている画像がツイッターで話題になっているみたいで・・・」
医者
「なんか、すみません。」
服部
「一応、私忍者なんで。
ツイッターで話題になると、忍べなくなるんですけど・・・。」
医者
「今度からは別室に案内しますね。
それで、薬を飲んでみて、どうですか?」
服部
「あの、いただいた薬なんですけども、何の薬かなと思って調べたんですが・・・」
医者
「下痢止めです。」
服部
「やっぱり下痢止めですよね。」
医者
「思いつく薬がこれしかなかったんで。」
服部
「すみません。この症状、下痢じゃないんですよ。
実際、薬を飲んでも分身は止まらなかったですし・・・。」
医者
「止まりませんでしたか・・・。」
服部
「他に止める方法ないですか?」
医者
「驚かせたら、止まりませんかね?」
服部
「そんなしゃっくりじゃないんだから・・・」
服部の分身たち
「(一斉に服部に向かって)ワッ!!」
服部
「わっ!!」
ドロン(突然、診察室内に煙が巻き起こり、服部が一人増える)
医者
「増えましたね。」
服部
「何で驚いたら、一人増えるんだよ・・・。
っていうか、何で分身たちが驚かせるんだよ・・・。」
服部の分身
「(服部に向かって)あの、すみません。」
服部
「ん?何?」
服部の分身
「そろそろ、用があるんで、先に帰っていいですか?」
服部
「何?用って?」
服部の分身
「あの・・・、知り合いの くのいち と合コン・・・」
服部
「はぁ?!知らないんだけど、何それ?!」
服部の分身
「いや、他の分身、みんな服部さんがいない間に街に繰り出して遊んでますよ?
昨日も別の くのいち と合コンでしたし・・・」
服部
「ちょっと勝手にやめてよ!みんな私と同じ顔なんだから!
大体、オリジナルを差し置いて、何、合コンとか行ってるの?」
服部の分身
「(ポケットを探りながら)あの、これ、昨日、合コンに行った分身からオリジナルの服部さんにおみやげって・・・
これでちょっとは昨日の合コンの雰囲気がわかるかと。」
服部
「おみやげ?何?」
服部の分身
「からあげのつけ合わせについていたパセリです。」
服部
「いらないよ!パセリ!!
これで昨日の合コンの雰囲気がわかるほど、ツワモノじゃないよ!!」
服部の分身
「オリジナルなら、これで雰囲気わかると思ったんですが・・・」
服部
「わかんないよ!
せいぜい、昨日の くのいち はパセリ残す子たちなんだなってくらいだよ!」
服部の分身
「あの、それじゃすみません。お先に失礼します。(全員、合コンに向かう)」
服部
「おい、ちょっと待てよ!!」
ドロン(突然、診察室内に煙が巻き起こり、服部が一人増える)
今、増えた服部の分身
(キョロキョロする。)
服部
(分身を見つめている。)
今、増えた服部の分身
(オリジナルの服部に気付き、「ニヤッ」と笑い、診察室を後にする。)
服部
「何だ?!その笑顔、何だ?!」
医者
「行っちゃいましたね。」
服部
「何だよ、くのいちと合コンって・・・。
そういえば、夜中にメール来てたな。
『みんな同じ顔とか、まぢキモい。』って書いてあった。
最初メール見たとき、意味がわからなかったけど、そういうことか・・・。」
医者
「とりあえず、今はこの症状を直さないといけませんね。
で、昨日、服部さんが帰られたあと、医師会にこの症状について報告したんですよ。
そしたら、みなさん、とても面白がってくださって・・・(笑)」
服部
「面白がらないでくださいよ。
こっちは真剣なんですから・・・。」
医者
「これが病気なのかもよくわからないのですが、
昆虫にも詳しい医師仲間の一人が『これで治るかもしれない』と薬を提示してくれました。
この薬なんですけど・・・(服部に渡す)」
服部
「どういう薬なんですか?」
医者
「フェロモンの分泌を止める薬です。」
服部
「いや、私の分身は別にフェロモンの化身ってわけじゃないんですけど・・・」
医者
「今はいろいろやってみよう、ってことで。
これで、女性たちからモテなくなったらすみません。」
服部
「まぁ、分身が増え続けている時点で、キモいって言われているんで・・・」
医者
「とりあえず、これと同じ薬を1日分出しておきます。
明日、また様子を聞かせてください。」
服部
「わかりました。(席を立つ)」
医者
「お大事に。」
女性看護師
「お大事に。」
医者
「(カルテを書きながら)まったく・・・。いろんな病気があるものだ・・・。」
女性看護師
「本当ですね。」
医者
「さて・・・。次の患者さんのカルテは・・・と。」
ドロン(突然、診察室内に煙が巻き起こり、医者が一人増える)
医者
「!?」
ドロン(突然、診察室内に煙が巻き起こり、医者が更に一人増える)
医者
「!!」
女性看護師
「・・・先生、これは・・・?」
医者
「(頭を抱えて)感染した・・・。」
「分身の術が止まらない」というメモ書きから広げたコントです。
かなり難産でしたが、オチはキレイに決まりました。