父よ、私の勇姿を見よ!
今回は雫が1歳2ヵ月の頃のお話です。
突然だが今日は初めて歩くことにチャレンジしてみようと思っている。誕生日から2ヵ月経った。つかまり立ちにも慣れたし、頑張ればそろそろ歩けるんじゃないかな?とか思っている。
最初は頭の重さに耐えられなくてフラついていたつかまり立ちも今では完璧と言っていいほどになったと思う。それに、なんと言っても今日歩きたいのには訳がある。今日は日曜日!たまには父に私の初めての勇姿を見せてあげたい!
…というのは建前で、実は今朝ちょっとしたことで父をこれでもかというくらい凹ませてしまったので、私の勇姿でも見せて元気を出してもらおうかな?なんて思ったわけです。何をして父を凹ませたかというと、父が朝イチで私のところへやってくる→→ちょっかい出されて目が覚める→→私、寝起きでちょっと不機嫌に→→不機嫌なのに気がつかない父が私に頬ずり→→ヒゲ剃ってなかったからチクチク→→私、怒りながら『キライ』宣言→→父、ショックで呆然。…とまあこんな感じで凹ませました。
いやぁ、自分で『キライ』って言っておいてなんなんだけどさ、ここまで凹むとこ思わないじゃん?私も寝起きでちょっとイライラしてたけど、まさかこんなことになるとか予想してなかったし。しかも昼近くなった今でもちょっと私にビビッて心なしか距離とってションボリしてる。
今日は兄も母も出かけていていない。兄のサッカークラブの練習に母も付き添いで行ったからだ。つまり家には私と父の2人っきり。そして父を慰めてくれる人は私以外に誰もいないというわけだ。さすがに兄たちが帰ってくるのを待つのはこの状況では気まずい。そこで思いついたのが初めてシリーズ!これは父が元気になること間違いなし!
父に本当にキライになったわけじゃないよー、本当だよー、という気持ちも込めて本日私、里中雫、1歳2ヵ月は初めて歩いてみせます!いや、魅せます!!…とその前にまずは腹ごしらえをしますかね。よし、父よ私のご飯の用意をしてくれ。
母が出かける前に用意してくれていたご飯を父が私に食べさせてくれる。うん、うまうま。父も私に食べさせつつ自分のご飯を食べている。その間父は気のせいか挙動不審気味。そんなに娘に嫌われるのが怖いのか?まあ待て。ご飯を食べ終わったらすぐにそんな心配飛ばしてあげるから。
ご飯を食べ終え、よし行動に移すぞ!っと思ったのは良かったが、いざ歩こうと思うとなかなかタイミングが難しい。どうすれば自然な感じで歩くことができるのだろうか?うーん、悩みどころだな。
私がそんなことで悩んでいるとは知らない父は、とにかく私に喜んでもらおうと私が好きな子ども番組をつけてくれた。しかし、私は悩んでいる真っ最中でテレビを気にしている場合ではなかった。その様子を見た父はどうやら私が今はテレビの気分じゃないと判断したようで、私に絵本を読もうか?と聞いてきた。私はその瞬間に『これだ!』と思った。
私の作戦はこうだ。父が本棚へ絵本を取りに行く。その間に私はつかまり立ちで父が戻ってくる前にスタンバっておく。父が絵本を選び終えて私の方を振り向いたら歩き出す!これどうよ!完璧じゃない?やだ私、天才かもしれない。よし、これでいこう!まずは絵本を取ってきてもらうために父の問いかけに返事をした。
「よし!じゃあ、読んであげるからちょっと待っててね」
「あい!」
私の返事を満足そうに聞いてから本棚へ向かう父。ヨッシャー!!やってやるぞ!父よ、私の勇姿を見よ!!
私は作戦通り、すぐにつかまり立ちをした。そして父が絵本を選び終えて戻ってくるタイミングを見計らって父のほうへ歩き出した。もちろんニッコリ笑顔も忘れない。
「ぱぁぱ」
「し、雫が歩いてる!!」
「ぱぁぱ!」
「雫!パパのところへおいで!」
そう言って両手を広げて満面の笑みでスタンバっている父の胸に私は歩いている勢いそのままに飛び込んだ。なんだか自分から父の胸に飛び込むっていう行為に少し照れくさくて笑ってしまう。
「えへへ」
「雫が可愛すぎて、パパ辛い…。まさか初めて歩く姿が見られるなんて思ってもみなかったよ。ありがとう、雫。それと今朝はゴメンね。これからはちゃんとヒゲを剃ってから頬ずりするから嫌いにならないでね」
おうおう、いいってことよ。父よ、私も今朝は悪かったな。まあこれでお互い水に流そう。あと、私はちゃんと父のこと好きだから安心してくれ。
「ぱぁぱ」
「なんだい、雫?」
「すち!!」(好き!!)
「!!…雫!パパも雫のこと好き…いや、大好きだよ!!」
その後、父は私を膝抱っこし、嬉し泣きをしながら絵本を読んでくれました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回はもう少し雫を成長させようかと考え中です。