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第十三章 それは衝動的で本能的な
彼は、自分が初めて心を燃やした人間だった。
それまでの生き方において、自分と対峙してきた人間は、こちらを疎む者か恐れる者しかいなかった。
だが、彼は違う。
こちらの本質を見破り、自分の心の中にずかずかと入り込んでくる。
初めての気持ち、感覚。
人生でこれほどに胸踊らせたことがあっただろうか。
彼と交わす何もかもが自分に幸福と刺激を与え、体験したことの無いような胸の高鳴りをくれた。
彼の事を考えれば、動機は激しくなり、体温が上昇する。
名前をつけられない感情。
それを自覚して、自分は、たぎる熱を力と魔法に変え、飛び立つ。
「待ってろよ、ヴァレンシュタイン。俺達の戦いはまだ決まっちゃいねぇ」
聖処女――ジャンヌ・ダルクは満面の笑みを浮かべ、天使の輪で空に飛び出した。




