エルナの塔
「名前は?」
「ラナ」
「歳は?」
「・・・十四」
「髪、瞳、肌の色は?」
「髪の色は赤、瞳は緑。肌の色は白・・・」
呼吸する。
冷たい空気に吐く息が、凍った。
「まだ子供だな」
青年が驚いた顔で笑った。瞳の色は見えない____薄汚れた何か呪文が書かれた布でその瞳を覆い隠しているから。
「あなたこそ、本当に目が見えないのね」
褐色の肌_____灰色の髪。
青年の足取りは見ていて危なっかしい。途中から少女は、青年の手を引いて歩いていた。
ふと少女は、突然止まり空を見上げた。
「見て、始まりの門よ」
雪降り積もる渓谷_______自然が作り出した洞窟に2体の巨人の像が向かい合わせで座っている。
「お爺様が言っていた。エルナの巨人_____」
お爺様の使い込んだ皮の手帳____嘘だと_____偽りだと言われた古の伝説は本当にあったのだ。
渓谷に風がびょうびょうと吹きすさんでいる。
まるで、石づくりの巨人たちが叫んでいるようだ。
少女が歩きだそうとすると青年から待てと命令された。_______腰に巻かれた縄。
「あんたが、逃げないように」
逃げるわけがない。少女は、青年の腰に差している一振りの剣を見つめた。
魔法の剣。
お爺様が探し続けた剣___この剣がなければ門を守る巨人許しを得てこのエルナの塔へ入ることは出来ない。何故この盲目の青年が持っているかは知らないがこの剣がなければここまで辿りつくことが出来なかった。巨人が守る門は、今開かれているのだ。
「行こう」
手を差し出すが青年は、躊躇していた。
広がるのは真っ暗な闇_________この塔の先に何があるかは分からない。
でも、行かなくちゃ______全ては、この門の先にある。
震えて、怖がる足を叱咤していかなければならない。
少し遅れて青年の大きな手が確かに私の手をとった________その手はとても冷たかった。
盲目の剣士と少女のお話です。
続く___?・・・・いいえ、続きません。恐らく。