第0.5話 夢見心地
異世界編です。
ここからは書き方を変えています。
もし視点変更をする場合は何か分かり易く印を入れます。
最初から統一して書かなかったのは、ぶっちゃけ過去の説明が楽だったからです。
ふわりふわりと、まるで空に浮いているかのような感覚。夢見心地とでも言えばいいのか。
俺は今まで感じた事のない感触を覚えていた。
時々世界が揺れて動き、止まって静かになったかと思えば、近くから規則正しく太鼓を叩くような音が聞こえる。
体に痛みは無い。
目は開けられない。
あれほどの高さから落ちれば死んでも全くおかしくは無いが、それでもこうして生きているならば全身に激しいダメージがあるはずだ。
そうすると体に痛みが無いと言うのは、脊椎損傷による半身不随になったと言う事で説明がつく。
しかしそれでは目が開けない理由にはならない。
全身に不思議な感触を覚えていることの説明がつかない。
半身不随と言うことは、首から下との神経の電気信号のやりとりが出来なくなると言う事だからだ。
とすれば、考えられるのは所謂植物人間と言うやつだろうか。
しかし植物人間と言う事はつまり、体が生きているだけで思考が出来ないと言う事、だと思う。
思考が出来るかどうかは植物状態になったことが無いので分からないが、違う気がする。
なんだか耳は遠いが聞こえはする。
しかし何処かの病院の病室のような雰囲気はしないし、ここが病室で自分が患者だとすれば、あのドラマなんかでお馴染みの『ピッピッピ』という電子音が聞こえてくるはずだ。
俺は現状が把握出来ないでいた。
此処が何処で自分はどうなっているのか。
一体あの日からどれほどの月日が経っているのか。
そしてあの時の白い光と優しく暖かい感触は何だったのか。
自分でも不思議な程に落ち着いていた。
これが一度死の淵を経験した者の落ち着きなのだろうか。
もしかすると自分は一度、本当に死んだのかも知れない。
今は魂だけの状態なのかも知れない。
非科学的だが、それなら全ての説明が着いてしまう。
そんなことを考えた時、なんだか急に眠くなってきた。
いや、眠くなってきたと言うより思考が緩くなってきたと言うべきか。
なんだか頭がぼんやりしてきた。
まあそんなに急がなくてもいいか……。
どうせまだ体は動かないみたいだし、考える時間はいくらでもある……。
そこで一応の結論を出すと、押し寄せる睡魔のようなものに身を任せて素直に意識を手放した。