表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢幻転生記  作者: 懐中時計
過去 - 1st life
1/9

第0-1話 “彼”

異世界転生モノです。


最初はただのこの世での過去話。

説明口調の文章になってしまったので、第0.5話まで読み飛ばしても大丈夫です。

 彼は普通だった。どこにでも居るような、極々普通の大学生だった。

 ただ、一つの事を除けば。


 彼には、親が居なかった。

 正確には、『居なくなってしまった』。


 彼の実の両親は、彼が3歳の頃に死んだ。殺されたのだ。

 とある真夏の草木も眠る頃、彼の家に強盗が押し入った。あまりの蒸し暑さの為に、その日は窓に鍵を掛けず網戸にして寝ていたのだ。

 犯人は眠っていた彼の両親を殺し、家の金品を奪って逃げた。


 彼はその時、幸運にも母親すぐ横で薄い毛布にくるまっていた。

 人を殺した事で興奮状態にあった犯人は、小さな彼を見つける事が出来ずに見逃してしまっていたらしい。


 朝、目を覚ました彼は目の前の状況が理解出来なかった。

 血を流して動かない両親。引き出しが全てひっくり返され、嵐が通った後の様に散らかりきった部屋。


 彼は何も理解出来なかった。目前の状況が理解出来ない彼は、隣人に助けを求めた。


 わずか3歳であった彼はその時、隣人にこう言ったそうだ。


「何があったの?」と。


 無論隣人には彼が何を言っているのか理解出来ず、しかし明らかに普通ではない彼の様子を見た隣人は、彼に導かれるままに彼の家に入った。


 そして部屋の惨状を見た隣人は愕然とし、すぐさま警察へと通報した。


 たった一夜で彼を取り巻く環境は、一気に姿を変えた。


 犯人はすぐに逮捕された。ギャンブルにハマり、借金をしてしまったのが犯行理由だった。


 そんな身勝手な理由で両親を亡くした彼は頼る当ても無く、孤児院へと引き取られて行った。

 と言うのも、生前の彼の両親は親戚との付き合いが薄く、それに加えて親戚達が『被害者である両親のすぐ近くで寝ていた筈なのに、何故か一人だけ殺されずに生き残った彼』を気味悪がったせいである。


 孤児院での生活は、お世辞にも良かったと言えるモノでは無かった。


 食事などは他の子たちと同じ物を出されたが、孤児院の大人はあからさまに彼を避けていた。

 クリスマスに他の子が好きな玩具を貰っていたのに対して、彼に与えられたのは100円程度のお菓子だけだった。


 孤児院の大人たちも、彼を気味悪がっていた。

 当然、腫れ物を扱う様に彼と接する大人達と一緒に居たいと彼が思う筈も無く、高校を卒業すると同時に彼は孤児院を出た。


 彼はその日の為にコツコツとバイトをしてお金を貯めていた。

 大学も入学試験で優秀な成績を残した為、特待生制度を使う事が出来た。


 彼は必死でどん底から這い上がり、これから順調に人生を謳歌していく、筈だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ