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ゆきのまちシリーズ

さいはてのスノーガール

作者: 謎村ノン

 大学の授業が始まる前、僕はいつものようにノートPCを開いていた。

 ライトフィールド有機EL(OLED)ディスプレイの黒は深く沈み、指先がタッチパッドを滑るたび、画面にニュースの見出しが流れていく。

 教室は、まだざわざわとした空気に包まれていて、隣の席では誰かがスマホで動画を見て笑っていた。窓際の席からは、冬の光が斜めに差し込み、埃がきらきらと舞っている。

 僕は、その光景をぼんやり眺めながら、心の奥に沈んだ空虚感を持て余していた。

 

 最近、何をしても心が動かない。講義の内容も、友人との会話も、どこか遠くの出来事のように感じる。美衣がいなくなってから、世界は色を失った。

 そんな僕の視線が、ある見出しで止まった。

『日本の太陽帆探査機、カイパーベルト天体イザナミに到達』

 胸の奥で、何かが小さく鳴った。イザナミ――その名前には、どこか死の匂いがある。黄泉の国の女神だ。僕は、記事をクリックした。


 画面には、銀色の帆を広げた探査機のCGが映っていた。

 太陽光を受けて加速する、紙のように薄い四角い帆の探査機だった。推進剤をほとんど使わず、光の圧力だけで太陽圏の外縁へと旅するその仕組みは、僕が子供の頃に読んだSF小説の夢そのものだった。

 記事によれば、この探査機は二十年前に打ち上げられ、冥王星を越え、今ようやくカイパーベルトの奥にあるイザナミへ到達したという。

 イザナミは、冥王星の四分の一ほどの大きさで、表面は氷に覆われ、無数の地割れが走っている。内部には、液体の海があるかもしれない――そんな推測が添えられていた。


 僕は、スクロールを続けた。

 搭載された超小型の着陸船が撮影した写真が載っていた。白い平原の遠くに、黒い影のような地割れがあった。星々の光が氷に反射し、淡い青白さを帯びているようにみえた。

 そのとき、胸の奥に冷たいものが走った。

「……ん?」

 写真の隅に、何かが立っているように見えた。人影――そんなはずはない。僕は、ピンチインで拡大した。画素が荒れ、輪郭が曖昧になった。それでも、そこにある形は、どうしても人間に見えた。細い肩、長い髪、昔に流行った服を着ているように見える。

 瞬きして、もう一度見た。

 僕は、戦慄した。

 美衣だ。

 事故で亡くなった、あの美衣の姿に見えた。

「おい、これ、人の姿に見えないか?」

 思わず、隣の友人に声をかけた。彼は、スマホから顔を上げ、僕の画面を覗き込む。

「んー……確かに、人型っぽいけど、雪の影じゃない? 第一、このスケールだと、めちゃくちゃでかいぞ」

「そうかな……」

 僕は、曖昧に応えた。だが、見直すたびに、美衣を撮影したように思えてならなかった。教室は、かなり暖房が効いているのに、背中に冷や汗が流れた。


 教室のドアが開き、教授が入ってきた。僕は慌ててブラウザを閉じ、ノートを開いた。だが、頭の中では、白い氷原に立つ美衣の姿が焼き付いて離れなかった。

 ――なぜ、あそこに彼女がいる?

 あり得ない。あり得ないのに、僕の心はその不可能を拒めなかった。

 

 講義が始まった。教授の声が遠くで響いた。

 量子力学の基礎、ハミルトニアン、固有値……黒板に数式が並ぶたび、僕の視線はノートに落ちるが、頭の中では別の映像が流れていた。

 イザナミの白い平原、星々の光に照らされた氷の結晶、そこに立つ美衣の姿だ。

 僕は、タッチペンを握りしめた。指先が震えていた。


***


 美衣の名前を心の中で呼ぶと、胸の奥に鈍い痛みが広がった。

 僕は、机に伏せていた写真を、久しぶりに、そっと立ててみる。

 埃を払うと、そこには笑顔の美衣がいた。白いワンピース、夏の光に透ける髪。あの頃の記憶が、波のように押し寄せてくる。

 

 美衣と僕は、小学校の同級生だった。

 最初に話したのは、図書室の隅だったと思う。僕が宇宙の本を読んでいると、彼女が隣に座って「それ、面白い?」と聞いた。声は澄んでいて、どこか風鈴の音を思わせた。

 その日から、僕たちはよく一緒に遊んだ。放課後の公園、川沿いの道、図書館や児童館も、よく一緒に行った。親同士も仲が良くて、家族ぐるみで夏祭りに行ったこともあった。

 美衣は絵を描くのが好きで、僕は星の話をするのが好きだった。彼女は、僕の話をいつも楽しそうに聞いてくれた。

「宇宙って、どこまで続いてるんだろうね。きっと、ぐるっと回ると、地面の底まで続いているんじゃないかな」

 ――その言葉を、今でも覚えている。

 

 中学に進んでも、僕たちは自然に一緒にいた。

 だけど、高校に上がると、彼女の親の転勤で、離れ離れになった。最初は寂しかったけれど、手紙のやり取りが続いた。彼女の手紙は、いわゆる丸文字だったけど、几帳面な感じがした。便箋には、季節の花の絵が添えられていた。僕は、返事を書くたび、彼女の笑顔を思い浮かべた。

 夏休みや冬休みには、彼女が戻ってきて、一緒に遊んだ。駅で再会する瞬間、胸が高鳴った。彼女の髪が少し伸びて、背が少し伸びて、でも笑顔は変わらなかった。僕たちは、未来の話をした。

「同じ大学に行けたらいいね」

 彼女との、その約束が、僕の心の支えだった。

 そして、奇跡のように、その約束は叶った。合格通知を見たとき、僕はすぐに彼女に電話した。受話器の向こうで、美衣が弾む声をあげた。

「やったね! これからは、一緒に通えるね!」

 僕も、受話器に向かって、頷いた。

 だが、その未来は、突然奪われた。

 大学入学を目前にした春、美衣は、交通事故に遭った。自動運転AIの不具合が原因で、大変珍しいと騒がれたタイプの事故だった。

 ニュースを見た瞬間、頭が真っ白になった。信じられなかった。何度も、記事を読み返した。名前を確認した。間違いであってほしかった。

 葬儀の日、白い花に囲まれた彼女の顔は、眠っているようだった。僕は、声を出せなかった。現実感がなかったせいか、涙は出なかった。ただ、胸の奥が空洞になった。世界の音が遠ざかり、色が消えた。

 その日から、僕は、何をしても心が動かなくなった。せっかく大学に入学して、新しい生活が始まったというのに、講義も、友人との会話も、ただ通り過ぎるだけだった。


 ……写真を見つめながら、僕は、深く息を吐いた。胸いっぱいに、空虚感が広がった。

 どこか見知らぬ町を旅したい、と思った。

 引き出しの底から、ダーツを取り出し、壁に貼った地図に向かって投げた。

 針が刺さった場所――それは、名前も知らない地方都市だった。

 僕は、ノートPCの画面に表示された路線図を見つめる。リニア新幹線で二時間、そこからローカル線に乗り継ぎ、さらに一時間かかる。

「本当に行くのか?」

 心の中で問いかけた。しかし、答えは決まっていた。

 針が刺さった場所の近くの地方都市までの切符を、ノートPCで予約した。その指先が、わずかに震えた。

 予約を確定すると、胸の奥で、何か小さな音がしたように思った。決意の音か、それとも逃避の音だろうか。

 そのまま、僕は下宿を出た。


***


 冬の空気が頬を刺した。駅までの道を歩きながら、僕は、何度もスマホで時刻表を確認した。

 地下のリニアのホームは、立体表示のデジタルサイネージばかりの近代的な光に包まれていた。

 ガラス越しに見える車両は、流線型の白い影だった。端末をかざして乗り込むと、シートは柔らかかった。

 リニアに乗るのは、久しぶりだった。列車が動き出すと、殆どが地下区間なので、窓のディスプレイに、地上の風景が写された。都市のビル群が遠ざかると、やがて雪をかぶった山並みが現れた。

 僕は、イヤホンを耳に差し込んだが、音楽はすぐに止めた。何を聴いても、心に響かなかったのだ。

 ただ、ディスプレイの画像を見てつめた。最新型なのか、画素は、ほとんど見えなかった。まるで現実の風景のような白い川、凍った田畑、遠くの煙突から立ちのぼる薄い煙が撮されていた。世界は静かで、どこか取り残されたようだった。

 

 ローカル線に乗り換えると、車内は古びた匂いがした。今時、電化もされず燃料電池で走る列車だった。

 シートの布地は擦り切れ、窓ガラスには、細かな傷があった。乗客はまばらで、みな黙って座っていた。列車はゆっくりと進み、雪に覆われた町を抜けていく。

 僕は、端末の巻き取られたディスプレイを広げると、目的地の情報を検索した。

 観光地として町並み保存をしているらしい。だが、シーズンではないので、閑散としているという。人口は減り続け、毎年何万人も少なくなっていく――そんな記事が目に入った。

「さもありなん」

 僕は、小さくつぶやいた。美衣がいなくなった世界は、同じように色を失っていたから、ちょうどいいと思った。

 

 駅に降り立つと、冷たい風が頬を打った。

 駅前には古い看板が並び、昭和の影が残っていた。ホテルは、駅から歩いて五分ほどの場所にあった。フロントでチェックインを済ませ、鍵を受け取る。

 部屋は、簡素だった。ベッドと机、窓際に小さな椅子があるだけだ。カーテンを開けると、夕暮れの町が見えた。赤い光が屋根を染め、遠くに煙突の影が伸びていた。

 僕は、荷物を置き、ベッドに腰を下ろした。静けさが耳を満たす。心臓の音だけが、遠くから響いていた。

「……」

 深く息を吐いた。ここに来ても、空虚感は消えなかった。だが、少しだけ、世界が違って見えた。

 

 夕暮れの町を歩くことにした。

 ホテルを出て少し歩くと、古い建物が残っていて、なかなか風情があった。電柱は地中化されていて、それなりに整備されているようだ。端末で検索すると、どうやら、観光客を見込んで町並み保存をしているらしい。

 しかし、商店街は閑散としていて、シャッターが下りた店が目立った。冷たい空気が肺にしみた。どこか、時間が止まったような町だと思った。

 アーケード街に入ると、薄暗い光が頭上に灯っていた。人影はまばらで、足音だけが響く。僕は、適当な小料理屋を見つけ、暖簾をくぐった。

「いらっしゃい」

 カウンターの奥から、作務衣を着た禿頭のオッサンが声をかけてきた。店内は、こざっぱりしていて、木の匂いが心地よかった。僕は、カウンター席に腰を下ろし、熱燗を注文した。

 そのとき、ドアが開き、私服のしゃれたジャケット姿の男が入ってきて、店主に声をかけた。

「おじさん、今日は、何がお勧めだい?」

 彼は、白髪交じりの頭に銀縁眼鏡をかけている。その顔に、見覚えがあった。

 思わず声をかけてしまう。

佐嶋(さとう)先生ですよね?」

 彼は、科学雑誌で見た写真と同じ顔、同じ服装だった。彼は、理論物理学で、ひょっとしたらノーベル賞も、と言われている、知る人ぞ知る研究者だった。

「おお、僕のことを知ってるのかい? 嬉しいなあ。ウチの大学の学生?」

 彼は、少し驚いたように目を細め、やがて柔らかく笑った。

「いいえ。××大学です。以前、雑誌で先生の記事を読んだことがあります」

「そうかい。こんな町で声をかけられるとは、思わなかったよ」

 彼は、カウンターに腰を下ろし、僕の隣に座った。

 店主が熱燗を注ぎ、湯気が立ちのぼる。木のカウンターに広がる温もりが、冷え切った僕の心を少しだけ溶かした。

「しかし、君、随分、遠くから来たんだね」

「ええ、まあ……傷心旅行、ってやつでして」

 わざとおどけた調子で応えたがが、声はどこか乾いていた。先生は、それ以上は聞かず、熱燗を口に含んだ。

「いい酒だ」

 その一言に、僕も盃を傾ける。

 舌に広がる米の甘みと、喉を通る熱を感じる。久しぶりに、何かが、体に染み込む感覚があった。

 話題は、自然と、例のニュースに移った。

「先生、日本の探査機がイザナミに着いたって、すごいですよね」

「そうだね。太陽帆と小さなカリフォルニウム電池でここまで行けるなんて、二十年前は夢物語だった」

 彼の声には、科学者らしい静かな熱があった。

「でも……あの写真、見ました? ネットで話題になってて……人影みたいなのが映ってるって」

 僕は少しごまかすように言った。心臓が速く打っていた。

 先生は、盃を置き、しばらく考えるような顔をした。

「そういうことも、ひょっとしたらあり得るかもしれないね」

「え?」

「いや、科学的に、というより……僕が最近考えていることと、少し重なるんだ」

 彼は、ゆっくりと語り始めた。

「僕は、今、ダークマターの正体を探っている。君も知っているだろう? 宇宙には、見える物質の何倍もの質量があるのに、光では見えない物質がある。それが、暗黒物質(ダークマター)だ」

「はい。アクシオンが、候補の一つですよね」

「そうそう。アクシオンは、非常に軽い粒子で、通常の物質とはほとんど反応しない。だから、直接、観測するのは難しい。でもね、僕は最近、アクシオンが、ただ広がっているだけじゃなく、構造を持っているんじゃないかと考えている」

 彼の目が、輝いた。

「構造……ですか?」

「そう。僕の最新のシミュレーションでは、アクシオンは流体のように振る舞う。そして、その流れは太陽から内惑星系を抜け、冥王星の先まで河のように続いている。さらに、他の恒星系までネットワークのように繋がっているらしい」

 僕は、息を呑んだ。

「もし、その流れを目で見られたら、夜空に本当の河が見えるだろう。天の川よりも、もっと河らしく」

「……暗黒の河」

 僕の口から、無意識に言葉が漏れた。

 先生は、笑った。

「そうだ。ギリシャ神話の冥界の河スティクス、三途の川、黄泉比良坂……人類が古代から語ってきた暗黒の河(ダークリバー)は、もしかしたら、こういう現象を直感していたのかもしれないなあ」

「じゃあ……死んだ魂は、その河を渡って、冥王星やイザナミに行くんですか?」

 僕の声は、震えていた。

 先生は、盃を回しながら、静かに言った。

「科学者としては、そんなことは言えない。でも……宇宙は、僕たちが思うよりずっと詩的だよ」

 その言葉が、胸に深く刺さった。

 僕は、熱燗を飲み干した。舌に残る苦みと甘みが、現実と夢の境界を曖昧にする。

 カウンターの上で、湯気がゆらめいた。まるで、暗黒の河の霧のようだと思った。

 先生は最後に、こう言った。

「大学院に来なよ。君みたいに、宇宙に心を寄せる人間は、貴重だ」

 僕は、曖昧に笑った。答えはできなかった。

 ただ、心の奥で、何かが静かに動き始めていた。


***


 ホテルに戻った僕は、シャワーを浴びてベッドに横たわった。

 熱燗の余韻がまだ体に残っていて、指先がほんのり温かい。窓の外では、地方都市の夜が静かに沈んでいた。遠くで列車の音がかすかに響き、やがて消えた。

 僕は目を閉じた。

 ――暗黒の河。

 佐嶋先生の言葉が、耳の奥で反響していた。もし、その河が本当にあるなら、美衣は今、どこを流れているのだろう。

 イザナミの白い平原に立つ彼女の姿が、再び脳裏に浮かんだ。

 眠りに落ちる瞬間、世界が反転した。


 僕は、古ぼけた遊覧船の甲板に立っていた。

 船体は、氷に覆われ、錆びた手すりが冷たく光っている。周囲には白い霧が漂い、遠くで星が瞬いていた。

 船は、静かに氷の海を進んでいた。やがて、岸が見えた。

 白い大地。果てしない氷原だった。

 僕は、スロープを下り、足を踏み出した。氷が硬く、靴底がきしむ。まるで、南極かグリーンランドか極北の地の果てにきたような気がする。

 重力が小さいのか、体が軽い。ぽんぽんと跳ねるように進むと、胸の奥に奇妙な高揚感が生まれた。

 ――ここは、太陽系の端だ。

 イザナミ。

 その名を心の中で呼ぶと、風が答えるように吹いた。

 

 風景は、息を呑むほど美しかった。

 氷原はどこまでも続き、地平線は地球よりも丸く、近くに感じられた。

 空は深い黒で、星々が鋭く光っている。銀河の帯が斜めに走り、その間を氷の結晶が舞っていた。結晶は、星の光を受けて虹色に輝き、ゆっくりと落ちていく。

 遠くには、巨大な氷柱が林立する森があった。まるでガラスの樹木が並んでいるようだ。さらに進むと、雪の渓谷が口を開け、影が深く落ちていた。

 僕は、跳ねるように走った。体が軽く、空気が薄い。息は白く、すぐに消えた。

 

 やがて、探査船が見えた。

 金属の体は星明かりに鈍く光り、アンテナが空に向かって伸びていた。孤独な機械。その存在が、なぜか胸を締めつけた。

 その横に――彼女がいた。

 美衣だった。

 彼女は、昔の服装で、氷原に立っていた。髪は風に揺れ、星の光を受けて淡く輝いていた。

 僕は、言葉を失った。

「……やあ、しばらくぶりだね」

 ようやく声を絞り出すと、美衣は微笑んだ。

「見てしまったのね」

 その声は、遠い鐘の音のように澄んでいた。

「うん。なんでかな?」

「そうね……わたしの気持ちと、あなたの気持ちが、同期したのかもね」

「ずっと、そうだと思っていた。喧嘩もしたけどさ」

 僕は笑った。涙が滲んだ。

 イザナミは、冥王星と違って、茶色い窒素の氷はないようだ。平原は、どこまでも白く続いていた。

 美衣は、星空を見上げた。

「ここは、寂しいところだけど、悪くないわ。少し休んでから、先に行く」

「どこへ?」

「暗黒の河の向こう。あなたも、いつか行くことになるわ」

 その言葉が、胸に深く沈んだ。

 僕は彼女の手を取ろうとした。だが、指先が触れる前に、風が吹いた。氷の結晶が舞い、視界が白く染まる。

「美衣!」

 声が霧に溶けた。

 彼女は、微笑んだまま、遠ざかっていった。

「いずれまた」

 その言葉だけが、耳に残った。


 次の瞬間、目が覚めた。

 ホテルの天井が見えた。頬は濡れていた。涙の跡が乾いて、塩の粒が残っていた。

 僕はゆっくりと起き上がり、顔を洗った。鏡の中の自分は、以前と、少しだけ違って見えた。

 空は、澄んでいた。遠くの山に雪が光っていた。

 僕は思った――暗黒の河は、本当にあるのかもしれない。そして、美衣は、その河を渡って、僕を待っているのかもしれない、と。

 チェックアウトを済ませ、下宿のある町までの帰途についた。


(了)

後書き:こちらも、今はなき、ゆきのまち幻想文学賞に投稿したもののお蔵出しで、AIも使って少し引き延ばしてアップデートしたものです。舞台は、何十年か先の近未来ですね。ダークマターの正体を本文では、アクシオンとしていますが、実際は何なんでしょうね。あと何年かで色々分かってきたら、またアップデートするかもしれません。

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