第七駆
「少年、学校は楽しいかい?」
とある日の練習の途中で私は特に理由もなく聞いた。
聞いてから思ったことだが、少年は放課後はすぐに私の所に来て自転車の練習をしている。
つまり、友達と遊んだり部活に入ったりはしていない事になる。高校生ならもっと楽しい事もたくさんあるはずだろうが少年は私の正確かもわからない厳しいトレーニングを受けに来ている。少年は少しうつむいて
「あまり楽しくないです。」
「何か嫌な思いをするような事をされているのかい?」
「いえ。同じ中学からの友達もいますし今のところ授業についていけない事もないんです。
何て言えば良いのかな?う~ん、ピースが足りないんですよ。大事な物が足りないんです。」
「それはこの自転車の練習をしてたら埋まるものなのかな?」
「わかりません。でも、僕にはこの方法しか思い付かなかったから。」
「そうかい。少年が努力した事が何かに結び付いて結果になるも誰かの気持ちを動かすでも行動する事が大事だよ。例えばどれほど頭の中でお金を稼げる方法を考えていても行動しなければ、それは寝てる時の夢と何も変わらない。計画を立てるのも大事だが行動しないと上手く行くかもわからないからね。」
「住職は今の生活をどう思ってるんですか?」
「充実しているかという事かな?」
「そうです。」
「私は満足なんてものはないんじゃないかと思う。
例えば友達がたくさんいても心を許せる人がいなければ、それは孤独と一緒だよ。多くの人を周りにいさせるために仮面をつけているような感じだね。
本来の自分を隠して人当たりの良い仮面をつけている。
逆に1人の友達しかいなくても心が許せれば本来の自分でいれるから寂しさや孤独感はないだろう。
たくさん才能がある人よりも一つの才能を一生懸命伸ばしている人の方が注目されやすいのと一緒だね。
満ち足りる事はその先がない場合にのみ存在する基準なんだと私は思う。通過点に満足するなんて事がないわけだから、人は最終到達点まで進み続けないといけないんだ。満足したって言いきる人がいるなら、その人はきっと諦めた人なんじゃないかな。」
「住職のお話は難しいですね。」
少年は少し戸惑いぎみに言ったのに対して私は笑顔で
「答えは自分で探すものだからね。
誰かの答えはヒントになっても、自分の答えにはなり得ないんだよ。人は生まれた時からみんなが平等に同じ課題を持っている。『あなたはこの人生で何をしますか?』とい課題をね。人生の終わる瞬間にその答えを胸を張って答えられるように生きる事が私は一番大事だと思う。今はわからなくてもいつかわかる時がくればそれで良いよ。」
「やっぱり難しいですね。」
少年は少し晴れやかな顔で笑った。




