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峠を越えた世界  作者: Making Connection


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第五駆

国道八号線を米原方面に進み、西方面に行くと鳥居本という地区になる。もっとわかりやすい行き方をするなら中山道を通って彦根インターチェンジの横道を北上すれば着く。中山道の宿場町だった鳥居本を進み、山の入り口のような所に到着した。

おそらく知らない人なら進むのを悩むような山道だ。

正直にいうとここを自転車で走ると思うと初老の私としては勘弁して貰いたいくらい傾斜がある。

車が来ない事を確認してから少年がまずは座ったままペダルをこいで登っていく。見ているだけで辛そうに見えた。私はさすがにこいで登るのを諦めて自転車を押して少年を追いかけた。さすがに途中で限界のきた少年が足をついて止まっていた。

「大丈夫かい?」

「これはかなりきついですね。立ちこぎでも登れるかな?」

少年は不安そうに言った。

「今日はじめて来て、いきなりできる訳じゃないよ。

道の変化とかも考えるなら、少しでも体力を温存できる座りこぎが基本だからね。それに琵琶湖の北側とかの方が山になりそうだから、後半に立ちこぎがどれだけできるかもわからないわけだからね。体力を残しながら立ちこぎを秘密兵器的な感じで使えるようにしないといけないね。」

約200㎞と言うだけなら簡単だが、カーブする所や登り下り、道の状態が悪い所もある。9月という事でまだまだ残暑や猛暑の可能性もある。その日の状態だけでなく本人の状態も大事だ。体力の配分や感染症等の病気も気を付けなければいけない。少年が息を整えてもう一度こぎ始めた。あらゆる状態でこぐ練習をしながら学校終わりや休日で私が時間がある時に練習している。

私が居ないところでも少年は頑張っているのだろう。

少年は自分の事を語らない。

制服や体操服から学校はわかるが、少年は名前も名乗っていない。私も深くは聞いていないというのもあるが、なぜ大会に参加したいのかにそれは繋がっている気がする。個人が特定される事で不都合があるからなのか、私が最初から『少年』と呼んでいて名前を言う必要性がないからなのかはわからないが目の前で辛そうに自転車をこぐ少年には、悪い事を考えているとは思えなかった。

少し登ると傾斜が緩くなっている所があったので少年はそこまで進み、

「住職、次はどうしますか?」

「少し休憩してから緩い坂で立ちこぎの練習をしよう。」

「わかりました。」

少しの休憩の後で4月の終わりの新緑の山道に少年の自転車が飲み込まれていった。

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