第四十六駆
少年が練習しているのを私と田中さん、鈴木さんは少し離れて見ていた。私が二人に向かって
「実は先日、情報誌の記者が少年について聞きに来てね。」
「なんだ?なんか悪い話か?」
鈴木さんが言ったので私は急いで釈明する。
「いやいや、ほら大会に向けて何かを伝えたい人は申請をする必要があったでしょ。
あの申請をした人の中から特集を組むって話だったんです。」
「ああ、去年そんな記事を見たことがあった気がするよ。去年は確か……パラスポーツの普及に向けた取り組みをしているチームが順番に走ってゴールを目指すみたいなやつだったよ。大会実行委員会が特例で認めた参加方法でタイムは計測されず、ただたすきを繋げてゴールすることを目的とした出場でした。
結局、6人目の人がパンクと熱中症で倒れて途中棄権になったらしいけどね。」
「それで特集は受けたのか?」
田中さんが特集の話をして鈴木さんが聞いた。
「少年は未成年ですからね。
あまり注目され過ぎるのも良くないかと思って断ったんですよ。注目されれば期待もされるし、悪く言う人も出てくると思います。そうなった時に少年の感じるプレッシャーとかを考えるとプラスよりマイナスの方が多い気がしたんです。
もちろん、広く知って貰った方が骨髄バンクやそれを必要としている人のためになるとは思いますが、私は少年を守る方が大事だと思いました。
私が過保護なだけですかね?」
「いや、住職の判断は正しいよ。
たぶん、少年は優勝しなければいけないと決めつけてる。それだけでかなりの重圧があるのに注目を集めてたら精神的に辛くなるだろうね。」
鈴木さんが言い、田中さんも
「そうだよ、少年の友達を助けたい気持ちとかを正しく伝えられるのかもわからないし、大会の後も少年の人生は続くわけだからね。」
「お二人にそう言って貰えて良かったです。
少年には伝えた方が良いですかね?」
「いや~特集の話まではしなくて良いよ。我々の気遣いが無駄だとしても少年には大会に集中して欲しいからね。」
二人が言い終えた所に少年が来て
「何の話をされてたんですか?」
私が答えた。
「おお、少年。大会が近づいて来たから頑張って欲しいなって話だよ。」
「はい、頑張ります。」
少年が元気良く言った。田中さんが
「少年は友人に大会に出る事とかは伝えてるのかい?」
「あっ、それは……まだというか…」
少年が言いよどむ。
「話す気がないんだね?」
私が聞くと少年は
「あいつは僕にそんな事を望んでないと思うんです。
それに無理な挑戦だとわかってるから大きな事を言って期待させるのも悪いかなと…」
「まぁ、二人の関係性の話だからね。
私達がどうこう言うことでもないよ。」
私はそう言って少年を見た少年も私の言いたい事を悟ったのか
「僕が自信を持てないだけなんです。
だから、大会までに話しても大丈夫と思えたら話します。」
「そうだね、それで良いよ。」
私達は顔を見合わせて言った。




