第四十四駆
「昨日はすまなかったね。
妻が知らないうちに予約しててね。
当日に知らされてね、突然言われてもどうしようもないよな。病院が嫌いだからって人間ドックは先に先に言っとけよと思うけどね。」
「そうだったんですね。人間ドックってなんか色々と大変みたいですね。」
「そうなんだよ、胃カメラってやつが辛くてね。
バリュームとかいうやつを飲んでからやるんだけどあれがねぇきつかった。」
「あれ?そういうのって前日から食べられる時間とかと制限されるんじゃなかったですか?」
「えっ、ああ……普段からの生活にマッチした感じだったみたいだね。」
「そうですか……」
少年は少し何かを言いたげだったが、私は話題を変えて
「そういえばそろそろ学校で成績が出る頃だね。
どうだったんだい?」
「まぁ中間くらいですね。勉強はしっかりしてますけどなかなか上手くいきませんね。」
「うーん、誰かと比べる場合は自分も頑張ってるけど他の人も頑張るからね。
テストの点数とか勉強に対する姿勢とかで優劣を決めるのは限界が来てる気がするんだよ。
そもそも先生達の判断も難しいだろうしね。」
「じゃあ、どうやって成績をつけるんですか?」
「う~ん、確かに批判だけして対案を出さないなら議論の意味がないよね。
そもそもが目的もなく勉強をさせてるのも良くないと思うんだよね。何のために勉強するのかを明確に統一した理由を決めていかなければいけないね。
まずは自己評価をして、それに対して他人の評価として先生達も成績をつければ良いと思う。
自己評価と他人の評価の違いが自己評価の見直しにもなり、どう頑張れば他人の評価をあげられるのかの学びにも繋がると思うなぁ。」
「自己評価は自分の良い方につける感じになるんじゃないですか?」
「あまりに他人の評価と乖離がある場合は指導が入る仕組みにする必要はあるね。
先生達も平均点を基準とした点数の獲得による評価と提出物や授業の姿勢等を明確な基準で評価点数を決めてそこから評価を行う必要もあるね。」
「上手くいきますか?」
「さぁ、どうだろうね。
私の適当な発言が誰かに評価されるかはわからないね。
他人の評価なんてどこでどうやってどんなタイミングでされるかわからないからね。」
「そんなもんですか?」
「空海僧正の別の呼び名を知ってるかい?」
「弘法大師ですよね。」
「そう。でも、空海僧正は自分がそう呼ばれる事を知らないんだよ。」
「どういう事ですか?」
「弘法大師という名前をつけられたのは921年で、空海僧正が亡くなられたのは835年。
約90年の月日を経て評価されて付けられた名前なわけだよ。もしかしたら現代に生きる普通だと思われてる誰かも百年後には偉人になってるかもしれないね。」
「そうですね。」
「うん?って、これおかしいね。」
「何かありましたか?」
「弘法も筆の誤りってことわざがあるだろ。
どんな名人でも失敗する事はあるって意味だけど、空海僧正が失敗しない人だとは言わないけど、弘法大師になったのは亡くなってからな訳だから弘法の時には何も失敗してないわけだよね。」
「住職、身も蓋もない話ですね。」
「アハハ、確かにね。
誰でも失敗するから落ち込まなくて良いって、励ますためだけの言葉を格好つけてるだけだからね。
人のする評価よりも自分を正当に評価できる目を鍛える事が大事何だと私は思うな。
よし、練習しよう。」
「そうですね……」




