第二駆
「じゃあ、一般の部での参加だね。」
私は少年の自転車を見て言った。
少年は高校一年生で通学にも自転車を使用しているらしい。だからと言って、特別こぐのが速いとか長距離を走りなれてるとかでもないらしい。
「やっぱり無理ですか?」
少年は不安そうに聞いてくる。
「私もあの大会に出た事がないからわからないけどプロやロードバイクの部と違って、一般の部は途中リタイアの人が多いらしい。速く走らないと優勝は難しいけど、そもそもの話で完走できないといけないね。
体力には自信があるかい?」
「小学校と中学校は野球をしてました。
高校は………色々とあって帰宅部です。」
「なるほど、少しは自信があるけど完走できると言いきれるほどでもないって事だね。
う~ん、私もどれだけ体力があれば完走できるかわからないから手探りにはなるね。
あと、野球と自転車で使う筋肉とかも違うだろうから筋トレとかも見直さないといけないよね。」
「が、がんばります。」
少年の必死な感じの元が何なのかわからないが、真剣なのは伝わってくる。私は少年と事務用のパソコンの前に移動して、色々と検索してみた。
ロードバイク用の筋トレのページを見つけたが、やはり身体全体を鍛える必要があるらしい。
上半身では、大胸筋が姿勢の安定やブレを押さえる役目があり、三角筋やせ…せきちゅう…脊柱起立筋も姿勢の安定に必要らしい。あとは上腕三頭筋が振動によるブレを押さえてハンドリングの補助にも必要らしい。
少年が
「三角筋って、どこですか?」
「え~と、あった、あった。肩の筋肉みたいだね。」
私も筋肉に詳しくなく読み方も難しければどこの筋肉かもわからないので、読みながら一つ一つ検索して読み進めていった。
下半身では、大臀筋(お尻の筋肉)が姿勢の安定と下半身の疲労感の軽減を得られるらしい。
あと大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)がペダルの踏み込む力と長時間こぎ続けるに必要で、ハムストリング(太ももの裏の筋肉)・下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)がペダルを引き込む力と疲労感の軽減に必要らしい。
知らない事を調べる事は本当に難しくもあり、楽しくもある。学生の時の勉強が好きだったかと言えば嫌いだったと断言する私だが、文章を読み解く力をつけたり物事を覚えたりする力、最適な解き方を当てはめて答えを求める等の能力はやっぱりつけといた方が良い。
少年にも折を見て伝えたい人生の先輩としての教訓である。何しろ私は暗記が苦手だったためにお経がなかなか覚えられずに苦労した経験がある。その時にしっかり学生の頃に勉強しとけば苦労も減ったのでは?と思えるからだ。その後も少年と共に読み進めた。そして必要な筋トレメニューをピックアップしていく。腕立てや背筋、スクワットやサイクルという腹筋みたいなメニューで膝を胸につけるようなやつが有効だという事、さらにあまりやりすぎて身体が固くなり過ぎるのも良くないので適度な期間を空けながら進めていく事も必要らしい。
あとは実際に長時間ペダルをこぐ練習や速くこぐ練習も必要だろうから自転車の前輪と後輪を器具で浮かせて実際にこぐ練習ができるようにした。
少年も私も素人だし、ジムとかに行ってマシンを使ったトレーニングとかもお金がかかるので簡単にはできないので、色々と工夫していく事にした。