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峠を越えた世界  作者: Making Connection


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第十六駆

「住職はなんでお坊さんになろうと思ったんですか?」

練習の休憩中に少年が唐突に聞いた。

「う~ん、それで言うとなりたくてなったわけでもないかもしれないね。」

「じゃあ、なおさらどうしてなったんですか?」

「私の先代の住職がまぁ親父な訳なんだけど、お寺って色々あるけど個人の所有物みたいな所ってないんだよね。宗派でお寺を持っててそこを拠点に地域に根差して布教したり、奉仕をしたりするためにお坊さんがそこにいないといけないわけだ。

だから、お坊さんの一家で跡継ぎがいないと今まで普通に自分の家だと思ってた場所から出ていかないといけなくなる。私は二人兄弟の長男でね、当然のように跡継ぎになるように育てられたわけだよ。

大学もそういうお坊さんになる人達のための学部みたいなのに行ったしね。

資格も取ったけど、就職活動をする頃には坊主だけで生きていくのも限界なんじゃないかって話も出ていた頃だった。そこで親に反対されながらも車の販売会社に就職して働いてたよ。」

「でも、最終的にはお坊さんになったんですよね。」

「そうだね。二、三年くらい働いた時に親父が交通事故でいきなり亡くなってね。

まぁ、親父の性格上で言うと仕方ないっていう感じなんだけどね。」

「どういう事ですか?」

「小学生の横断歩道で旗振りしてる人いるだろ。

あれをやっていてね、居眠り運転のトラックが四人くらいが横断歩道を歩いてる時に突っ込んできてね。

その四人を全員突き飛ばして、自分だけ轢かれたらしい。一人二人なら抱えて助けられるようなパワフルな親父だったけど四人は無理だったんだろうね。

小学生の話では満面の笑顔で車に轢かれたらしい。

まぁ、死ぬ気は無かっただろうけど助かった子達に心の傷を残さないようにしたかったのか実際はわからないけど笑顔で人を助けて死ぬとか親父らしすぎてね。

弟に跡継ぎさせるのも違う気がしたから私が仕事を辞めて住職になったわけだ。

でも、後悔はないなぁ。

売上を上げるために必死に話してたあの時より、檀家さんと世間話したり少年とこうして話している今の方が千倍楽しいからね。

なりたくなかったものが私の天職だったのかもしれないなと今は思えるね。

ところで、急に何で気になったんだい?」

「将来について考えた時に他の人はどうだったのかなと思ったんです。親に聞くのも少し気が引けたので。」

「思春期だね。

なりたい職業とか、未来像って難しいんだよ。

最初はやりたいかどうかとか楽しそうかどうかで道筋を考えてみればいいよ。

やりたくない事も楽しくない事も続けるのは大変だからね。やりたい、楽しいから派生して色々と情報を調べたり行動すれば本当にやりたいことが見つかるかもしれない。違うと思えば新しい事を探せば良いだけだからね。

高校生や大学生のうちに色々と試してみれば良いよ。

このまま自転車の練習を続けて自転車のプロになるのも良いしね。」

私は冗談混じりに言った。

「若いうちに挑戦してみる事が大事ですね。

自転車のプロはさすがにしんどすぎて、楽しいって思えない時がありますからね。

まずはこの大会で結果だしてから考えます。」

少年は何かの覚悟を決めたように私には見えた。

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