第十五駆
「ふうっ」
私は檀家さんの家でお経を読んで一息ついた。
最近は自転車のトレーナーみたいになっていたが、こちらが本職であることに変わりはない。
普段から読みなれているもののやはり環境が違うとやりにくいとまではいかなくてもいつもより疲れるような気がする。
「ご苦労様です。」
おうちの方がお茶を持ってきてくれた。
「最近は暑くなって来ましたね。
のどか乾くのも速くなって気がするので、お茶を頂けるといつもの倍以上嬉しいです。」
私はお茶を頂いた。雑談をしながら少し休憩させて貰うのが恒例となっている。
「最近はどうですか?」
「う~ん、やっぱり物価が上がってて買い物に行っても買い控えっていうんですかね。
欲しいと思ってもなかなかカゴに入れられないなぁって事が増えましたね。住職はどうですか?」
「いや、私も変わりませんね。
最近は檀家さんも減ってますし、こうしてお経を読みに来させて貰うのも共働きで家にいないからって断られる事が多いですからね。
宗教的な事に嫌悪感を若者を中心に持ってる人も増えてきたなんて話もありますから、我々も厳しいですよ。」
「ニュースとかで多く取り上げられたりもしましたもんね。何て言うか現実思考みたいなのが広がって、効果が見てとれないならお金を払いたくないみたいになってますしね。そもそもが若い人もお金がないっていいますしね。」
「難しい話ですよ。」
「経済が良くならないとお金がないからって、結婚したり子供を育てられないとか諦めに繋がってるみたいですね。」
「お金がないって難しいですね。
夢を見るのも追うのもお金がかかりますからね。」
「家庭環境とかも複雑ですもんね。
離婚する家庭も増えたり、家庭内暴力とかネグレクトなんて問題もありますし。」
「大人の心の貧困が一番の問題なんでしょうね。」
「住職も大変ですね。発言も色々と気を遣わないといけませんもんね。」
「まぁ、私は有名人でも何でもないので町中のボウズが何を言っても大丈夫でしょう。
さてと、そろそろお暇しますね。」
「あっ………」
「どうかされましたか?」
「住職にこんなお願いするのも気が引けるんですが……」
「何でしょう?」
「実はシングルマザーで頑張ってる若い人の息子さんがね白血病になってしまってね。
経済的に余裕がなくて必死に働いてるけど、全然お金が足りてないらしくて。
近所で少しずつお金を集めて援助して上げようって話になってるの。できたら協力して貰えませんか?」
「それは大変だ。
じゃあ、お布施と……財布に三千円あったので、それをお渡ししますよ。良くなってくれたら良いですね。」
「ありがとうございます。」
私はお金を渡した。この家の方とも長い付き合いなので嘘ではないだろう事がわかるので協力した。
病気はどんな人にも平等に降りかかる。
だから誰が悪いという事もないのだから、みんなで助け合い支え合えるのが一番だなと思った。




