第十四駆
夏の日差しの中を小さな背中が駆けてゆく。
僕はそれを追いかけるが追い付けない。
場面が変わり、僕がショートの守備についているのに対して左投げのエースの大きくなった背中は近くて遠い場所にあった。
また、場面が変わる。
4番でエースは打席に立ち、僕はベンチの外のスタンドから声援を飛ばす。
保育園で出会ってからいつも一緒にいたあいつは、僕がいくら追いかけても追い付けない速さで前に進んでいく。何かで追い付きたい、追い抜きたいと思って勉強を頑張った。同じ高校に入った時の順位は僕の方が少し上だった。
初めて追い抜けたと思って内心嬉しかった。
また、場面が変わる。
あいつは膝から崩れ落ちて涙を流しながら、必死に僕に向かって言った。
「なんで…なんで…こんなに一緒にいるのにお前は大丈夫で、俺だけ……なぁ、教えてくれよ。
お前、俺より頭良いんだろ?」
あいつが涙に溺れていくのを僕は何も言えずに見ている事しかできなかった。
バッと起き上がって額に浮かんだ汗を拭う。
あの日から何度も見るあの夢に対する答えを僕はまだ出せないでいる。
今日はペースを維持して、走り続ける練習をしている。
始めた頃は安定しなかったが最近は安定した走りを見せていた。しかし、今日は違っていた。
スピードは上がり続けてペースは乱れてばかりだった。
休憩に入ったので私が
「少年、今日はどうしたんだ?
ペースが安定してないぞ?」
「すみません………」
「何か悩み事かい?」
「住職は答えがでない質問をされた事はありますか?」
「まぁ、何度かあるね。
坊さんのいる意味って何とか聞かれた時はどうしようかと迷ったね。」
「なんて答えたんですか?」
「私もそこまで坊主の必要性とか意味って考えたことなかったからね。あの時はねー、坊さんがいないと毛の薄い人が丸坊主にしにくくなるだろってふざけたね。」
「どういう事ですか?」
「最近は坊さんも髪の長い人が増えたから、あれだけどハゲ隠しに丸坊主にする人もいたということだね。」
「それでどうなりましたか?」
「苦笑い、いや失笑かな。
でも、答えがでないというよりはないんだろうね。
質問自体はありふれたものでも、答えは1つじゃない事がある。それは質問にも本質を尋ねるものと自分の望む答えを得たいものの2種類があるからだ。
本質を尋ねるものならネットや辞典で調べれば共通の答えを出せるかもしれないが、自分の望む答えを得たいものはそもそも答えが存在しないんだよ。
望んだ答えも望んでない答えも結局は正解ではなく、その質問が生まれた過程に問題があるからね。
答えを求めてるんじゃなく、自分を納得させられない人がいる事で自らを正当化したいだけなんだ。」
「僕の質問にも答えはなかったのかもしれませんね。」
「もし少年が解決できていない問題を抱えているなら人に相談してみればいい。色んな人が色々な立場から意見をくれれば自分を納得させる方法も見つかるかもしれないよ。」
「少し考えてみます。」
少年はかぼそく答えた。それ以上は少年も話せないだろうと思ったのでそれ以上は追求しなかった。




