日常の変化 6
食事が終わり食後のお茶を飲んでると午前中の授業を思い出した。
「ねぇ、アイリス?」
「なんでしょう?」
「授業でさ、魔王の事聞いたけどさ⋯。
なんで人間と魔王は争うのかな?
仲良く共存って難しいのかな?」
アイリスが動きを止めて私を見たから言っちゃまずい事なんだと思って慌てた。
「あっえっと、酷いことされた人達もいるんだよね!?
家族とか友達とか⋯。
ごめん、聞かなかった事にして。」
「⋯発言にはお気を付け下さいませ。」
そうか⋯アイリスの家族とか友達が被害に遭ってないなんてわからない。
平和ボケしてる私には考えが及ばなかった。
気まずくなって「気をつけるよ」と言いながら急いで残りの紅茶を飲み干すとタイミング良くノック音がした。
アイリスが扉を開けると侍女がいて何やらやり取りした後、扉を閉めてしまった。
アイリスが言うには騎士訓練所で剣の授業があるそうだ。
動きやすい服に着替えアイリス道案内をしてくれた。
騎士訓練所に着くと訓練を終わった騎士達がゾロゾロと出て囲まれてしまった。
「なんだー?
こんな所に侍女ちゃんが来るとは珍しい!」
「そうだな、後ろのお嬢ちゃんは侍女服着てないな。」
「侍女見習いか?」
などなど⋯。口々に話しかけてくる。
⋯汗臭い⋯。
そして、むさ苦しい。
アイリスの後ろにいた私が前に出る。
「ごめんなさい、通してもらえます?」
電車通勤舐めんなよ!少しでも隙間かあれば通れるからな!と颯爽と行こうとしたが無理だった。腕を掴まれた。
「おい、そっちは訓練場だぞ。」
レディーの腕を掴むとは何事だ!って言い返そうと思ったら物凄い怒号が飛んだ。
「騒がしいと思ったら⋯お前達!!まだそこに居たのか!!
さっさと宿舎に戻らんかい!!
それともまだ訓練でもやるか!?」
この怒号で周りを囲んでた騎士達は、うわっヤベッ!とかヒィ!とか言いながら蜘蛛の子を散らす様にそそくさといなくなった。
かくいう私もビクッと肩を揺らし硬直してしまった。
怒号の声の主がガシガシと頭を掻きながら全く、逃げ足だけは早い。と文句を言いながらこちらに来た。
「ん?アイリスか?」
いつの間にかアイリスがスっと私の前に出てゴルディ様、例の方を連れて参りました。と言い雫を見る。
私はハッとしてゴルディと言われた男の人を見るとグレー頭が目に入る。
目の色もグレーで短髪、後ろは刈り上げられてる。
厳しそうと言うか威厳のある顔つきで50代くらいだと思う。目の端に皺がある。
ムキムキの体躯に日焼けして小麦色の肌が何ともダンディーな雰囲気を醸し出してる。
「おぉ、この嬢ちゃんが勇者様か?」
「はい、こちら雫様でございます。」
「ほぉ?今代の勇者様はこの嬢ちゃんか。」
何か不満でも?とムッとしているとゴルディはガハハハッと豪快に笑う。
「悪いな嬢ちゃん、今までの歴代の勇者は男だったからな!悪く思わないでくれ!」
「⋯仕方ないです。雫です。」
「おう、俺はゴルディだ。騎士団長を務めている、あと剣の授業を担当する。
手始めに剣の腕を確認するぞ、こっち来い。」
いつまでも不貞腐れても仕方ないからさっさと気持ちを切り替える。
剣、初めて見るし持つんだよね。
持てるかな?
ゴルディの後を追うと広場に出た。
おお、広ーい!
あと端の方にカカシ?が沢山立ってる!
キョロキョロしてるとゴルディが剣を2本持ってきた。