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第20話 役割

『ようサツキ、なかなか上手くやれてるじゃないか』


 白く真っ白な世界で僕に呼びかける声。


『君のおかげさ、ガボ』


 自分の声が他人事のように感じるのは、ここが夢の世界だからだろう。


『いや実際立派なもんさ。過去の挑戦者の大半は、街までたどり着けずに死んだんだから』


 ふぅん、じゃあ僕は悪くない方ってことか。

 ――でも。


『――なんだか、人を駒みたいに言うんだな。もしかして君が魔王討伐だなんて企てるのは――』

『ストップ。あくまで知識の話だ。俺が実際に見聞きしたものじゃない』


 そうなのか?

 なら、いいけど。


()()、お()()()()()()


 それってどういう……。


『話はここらで終わりだ。これはただの、必要なプロセスだからな』


 ――またそういう、人を煙に巻くようなことを。


「大丈夫、決して悪いようにはしないから。じゃあなサツキ!」


 その言葉を最後に、突如ガボの白い球型体が変形する時のように勢いよく弾けて、中からあふれ出した黒色が瞬く間に視界を覆い尽くしていった。




 ――意識は途切れた。





☆★☆


「報酬は30000ゴールドです。依頼お疲れ様でした」


 ギルドの受付嬢が依頼書に『達成』の印鑑をドンと押してから、代わりにトレイに1万ゴールド銅貨を3枚乗せた。元の依頼書に記載されていた報酬より多いのは、マカナウワさんが色を付けてくれたということだろう。僕はそれを受け取って革袋へと詰めた。


「サツキさんは優秀ですね。実に順調に依頼をこなされています」


 最近どこかで聞いたような台詞だ。

 まぁ思い当たる節はないんだけど、僕も冒険者が板についてきたということだろう。

 なんちって。おだてて伸ばすのも受付嬢の仕事なのだろう。僕はお礼をこめて頭を下げた。


「ありがとうございます」

「ところで、サツキさんはそろそろパーティを組む予定はないのですか?」


 受付嬢は、そう自然な感じで聞いてきた。


「特には……。最初から組んでしまうと、地に足がつかなくなるとか聞きましたし……」

「あぁ……、もう。駆け出しの方にそんなことを言うのはどうせドウェインさんあたりでしょう。それは誤った認識です。一人で何でもこなせる戦闘職なんて、勇者くらいのものです。殆どの冒険者は、パーティを組むことでリスクを分散するだけでなく、むしろ己の本来の役目を再認識できるものですよ」

「はぁ、本来の役目というと」

「前衛ならショートレンジアタッカー、タンク、斥候……。後衛ならミドル~ロングレンジアタッカー、魔術師、治癒術士、バッファー、デバッファー……。などなど。人が力で圧倒的に劣る魔族や魔物の群れに勝つ方法はひとつ、統率のとれた集団戦闘です。そこでは必ず己の役割を認識し、それを忠実に遂行する必要があります」


 なるほど……。それでいうと僕はやっぱりショートレンジアタッカーか。

 いや、一応投石もあるからミドルレンジアタッカーくらいか?

 ん~、一応斥候的なこともできなくはないな。

 ……余計に訳わからなくなってきた。


「もちろん、複数の役割をこなせる器用な人はある程度います。その上で、絶対に欲しいけれど自分ではこなせないという役割をこなしてくれる人を探すことが必要になってきます。ただ、治癒術士は相当に貴重なので駆け出しの内から仲間に引き入れることはほぼ不可能で、まずはアイテムで代用することを考えましょう。……そうなると、サツキさんが具体的に求める仲間はどのようなものになりますか」


 なるほど、とても分かりやすい。

 そうだな、それでいうと……。


「タンク、ロングレンジアタッカー、魔術師……かな」


 あれ、ロングレンジアタッカー以外、サリャーマとギンチじゃん。

 今度仲間に入れてもらおうか。

 うーん、でも僕はのびのび冒険したいから、サリャーマの腰巾着2号になるのは嫌だけど……。


「ふむふむ。一つに絞るとなると?」

「あ、それならロングレンジアタッカーですね」

「いいと思いますよ。タンクも人気ですから、優秀なタンクを引き込むのはなかなか難しいですし、魔法使いは庇いながら戦う必要があり、タンク以外は最初の仲間としてハードルが高い。その点、ロングレンジアタッカーはある程度自衛できますから、連携もしやすいですよ」


 ふんふん、さすがギルド受付嬢。とても勉強になった。仲間かぁ、いいな、探してみようかな。

 気の合う人が見つかるといいな。


「それで、どうやって仲間を探せばいいんですか?」

「それはですね。夜に、もう一度ここへ来てもらえばいいですよ」


 夜と言うと……。


「そうです、ギルド酒場。冒険者と冒険者の社交場ですね」


 社交場か。

 なんだか華やかな感じだな。


 ……たぶん、僕の不得意なやつだな。

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