第17話 同郷
冒険者としての初仕事で魔物とやり合うことになってしまった翌日――。
僕達はギルドに二つ目の仕事を受けに来た。
「この討伐対象は俺達向きじゃないか」
「……前衛にやや不安があるな」
「なんだと!」
相変わらずロビーは活気があり、10を超える冒険者パーティが掲示板の前で激論を交わしている。それもそのはずで、ここ最近は魔物の討伐依頼や魔物が絡む護衛依頼がずいぶんと多い。王国軍の討伐隊が全く手が足りていないのが現状なのだという。
魔物の討伐依頼は、最低でも難易度C級以上だ。
D級冒険者が挑めば半数以上が命を落とすため、ギルドがそう決定したのだと言う。
「超大型の飛行型の魔物、東の国境沿いに出現。これなんかどうだ」
「飛行型を堕とせるほどの魔法使いも弓使いもこのパーティにはいないだろ……」
「なんですって!」
どの依頼を受けるかがパーティの命運を分けるのだから、慎重を期すにこしたことはない。
さぁ僕はどれにしようかな……。魔物に関わらなくて済むやつ……。
前回は採集依頼で酷い目に遭ったから……いやまぁ、アイリスと知り会えたのはよかったけど……。
ひとまず採集はやめとこう。となると、E級で受けられる護衛依頼なんてないし、必然と雑用もしくは害獣の討伐依頼が中心になってくる。
そこに絞って依頼を探していると
「あ」
「あ」
掲示板前で見知った顔ぶれとばったり出会った。
「なんだお前もここに来てたのか」
「サツキのくせによくたどり着けたなぁ」
同郷のサリャーマとギンチの二人組だった。
「ふぅん、貧相な革装備ではあるが、お前もちったぁマシになったみたいだな」
サリャーマが僕の身なりをみてそう言った。
この魔物装備は下手な鋼鉄装備よりも高いのだが、僕が強化外骨格を使うために金属装備を使えないことなど当然彼は知るよしもない。
彼自身も、そこそこ値の張りそうなプレートメイルと、腰には騎士剣を帯剣している。
ギンチも如何にも魔法使いを主張したコテコテの黒ローブを身に纏っている。
僕が山に篭っている間、二人で既にいくつもの任務をこなしたのだろう。
「お前、村長の息子の奴にボコボコにされたらしいな?まぁ、災難だったな」
「あ、ありがと」
サリャーマはそう言って僕の肩にぽんと手を置いた。
こう見えて意外と孤児仲間に優しいところはある。
彼が知っているということは、きっとエリオットが俺こそが真の召喚術士だ、みたいなことを吹聴したのだろう。
「その浮いてるやつが召喚獣か?確かに弱そうだけど、革装備を買える程度には仕事できてるんならまぁ運がいい方でしょ、ヒヒ」
「ま、まあね」
ギンチの引き笑いもなんだか懐かしいな。
ガボにも竜帝様にも出会えて今があるのだから、幸運なのは間違いない。あそこで竜帝様にチップをもらえてなかったら、僕は先日の魔物にやられて命を落としていた可能性が高いだろうから。
ほんと、人生綱渡りだ。
「じゃ、俺らはこのあと共同依頼を受けるから、まぁお前も頑張れよ」
「共同依頼?」
「複数ランクが参加できる魔物討伐任務だ。ちまちました依頼ばっかやってらんないからな。これで魔物を倒して、俺たちは一気に成り上がるのさ!」
「へぇ」
そんな飛び級システムみたいなものがあったのか。
依頼者を見ると、E級2名、D級2名、C級4名、B級以上2名の10名による中規模の共同依頼となっている。
場所は北部のドワーフ鉱山地下に出来た魔物巣窟で、危険な掃討作戦である。
なお注意書きとして、D級以下は後方支援に徹すること、とある。
え、倒しちゃダメじゃん。
「き、気をつけてね」
「まかせろ!まだ魔物に会ったことはないが、俺らならどうせちょろいぜ!」
「有名になったら同郷のよしみでサインくらいはやるよ、ヒヒ」
彼らがどれくらい才能に恵まれたのかは知らないが、多分エリオットの召喚獣くらい強くないと魔物には太刀打ちできないだろう。
お調子者コンビだから、無理しないといいけど……。
嵐のように二人が去っていった後、僕は改めて依頼を探した。
「これくらいにしとくか」
僕が選んだのは、害獣の駆除依頼だった。