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7 後妻と悪魔。

「どうして不機嫌なんだ」


《このドレスを着て思い出したんです、不条理を》


「不条理、何か有ったのか」

《お前だ》


「俺が何をした」

《継続している事の裏には、何かしら理由が有る、その前提で考えていた事をいきなり否定されて怒られました》


「いやアレは思っている事を言わなかったお前が悪いだろう」

《実際、格段の不便は無いんですから、何も思う所としては出なかったんです》


「だが聞き出せば出ただろう」

《前提を取っ払った場合です、でもそんなん言い出したら今度はキリが無くなりますよ》


「例えば何だ」

《ダンスだ、騎士爵ならまだしも文官にダンスさせる意味有ります?明らかに、下衆な発想からの継続だとしか思えませんけどね》


「どう言う事だ」


《性行為用の品定めにしか思えませんが、違いますか》


「俺に、そのつもりは」

《じゃあ男をかき集めて聞いてみましょうや、庶民もな》


「いや、それは流石に」

《ほれみろ、そうコチラに思われている前提で、合理性を説明せい》


 ふふふ、仲が良いわね。


「ドレスや、如何に教育を施されたか」

《ドレス見せびらかす為に何時間も浪費しますか、なら公衆衛生や道徳教育を詰め込むべきでは。何ですかこの偽医者事件、人として軸がブレてる、明らかに頭のネジがぶっ飛んでますよ》

『まぁまぁ、それは彼の領地外での出来事だもの、大目に見てあげたら?』


《嫌です、前提を取っ払って出せって言ったのは向こうですもん、絶対に手加減しません。そもそも、処女膜は運動で破れるとも聞きました、そこまで分かるんですか医者は》


「いや、だが全て」

《少し有るなら大丈夫としましょう、ですが人生を左右する大事な事ですよね、何で偽医者がそもそも多いんですか》


「詐欺師は手を変え品を変え」

《何で軽犯罪だったのか全く分からない、死者出てますよね。ならこの通り、目玉をくり抜いて舌を切ってからの保釈じゃないと生温過ぎるとは思わなかったんですか》


「尤もだと思う」

《何で動けなかったんですか》

『間者が居たり分散していたり、移動したり、しかも公になる事は少ないからなのよ』


《成程、じゃあ仕方無いですね》

「いや、死者を出してしまったんだ、言い訳は出来無い」


《じゃあ何が出来たんですか?道は限られていたんですよね?》


「帝国の様に、厳罰を、殺処分を出来てさえいれば」

《何で出来無かったんですか》

『そうねぇ、民を扇動させられちゃうから、かしらね』


《あぁ、成程、じゃあ仕方無い》

「そう思えたら、どんなに良いか」


《出来もしない事を悔いて何が楽しいんですか?何の意味が有るんですか?その時間他に有効活用すべきでは?》


 あらあら、折れちゃったわね。


「確かに、すまない」

《あ、ダンスを踊りに行ったらどうですか、気分転換に》


「いや、流石に今は無理だ」

《じゃあ他にご趣味は?》


「乗馬なら、だが」

《雨ですもんねぇ、他には?》


 無いのよねぇ。


「君は」

《いっぱい有りますよ、聞きます?》


「あぁ」

《でもなぁ、呆れられたらぶん殴りたくなるので、呆れた顔はしないで下さいね》


「あぁ、誓う」

《あ、但し感想は構いませんよ、じゃんじゃん言って下さい》


「分かった」

《先ずは読書、それから美味しいモノを食べる事、素敵な紳士淑女を眺める事。後最近は気に入った格好で出掛けるのも楽しいですね、街を見て回るのも楽しい。それと良い匂いのお風呂に好きなだけ浸かる事も、あ、露天風呂って有るのかな》

『有るわよ』


《え、行きたい》

『行っちゃいましょうか』


《うん行く、お願い》

『じゃ、お休みを頂くわね』


 ふふふ、混乱してるわね。

 意外と、アナタに合いそうなんだもの。




「はぁ」


 残虐性にも耐性が有り、俺の道徳観念や正義感にも合う。

 男よりも趣味、しかも大して金の掛からない事で喜び楽しむ。


 しかも不機嫌な理由も尋ねれば直ぐに話し、阿らず媚び諂う事も無く、既に厳しい躾けも乗り越えている。

 確かに、俺に合うと思うが。


《どう、されましたかな》


「不意に訛るわ隙あらば手を抜こうとするわ、向上心も無く可愛げが無い、しかも全く踊れず乗馬は移動手段でしか無い。だが、かなり俺には理想的だとも言えるんだ」


《難しいご選択ですな》

「あぁ、本当にな」


 真反対は絶対に無理だ。

 だからこそ、限りなく理想的なのは分かるんだが。


 アレと夫婦になって暮らす事が、全く想像出来無い。


《では、部下で宜しいのでは》


「まぁ、それも、そうだな」


 確かにな。

 アレと過ごせそうな部下を、改めて考えるべきか。


《では、名簿をお出し致しますね》

「あぁ、頼んだ」


 根は悪いヤツじゃないんだが。

 どうしても、女として見れない。




《ただいまー、はい、お土産》


「こんなにか」

《賄賂と日頃のお礼です、お風呂セット、趣味にどうですか》


「あぁ、ありがとう」

《いえ、じゃあ仕事に戻りますね》


「なら、事情を少し説明して回ってくれないか」

《何のです?》


「実は……」


 私と言い争う声が聞こえた直後、急に私が休んだので、使用人の方々が痴話喧嘩だと誤解したままらしい。


《あら》

「尋ねてくれれば解決出来るんだが、全く、そうは言わないんだ」


《ほう?》


「お菓子の匂いが消え淋しくなりましたね、だとか、厭に静かだとは思いませんか。と」

《おぉ、言い回しの勉強になります》


「どうにか説明してくれないだろうか」

《分かりました、お付き合いも何もしていないしそもそもお互いに好意は全く無いので、単なる議論でしたからご心配無く。で、宜しいですかね》


「あぁ」

《畏まりました、では、失礼致します》


「あぁ」


 それにしても、何でこんな誤解になったのか。

 どう見ても、お互いに好意は無いと分かっている筈なのに。


 もしかして、お暇?


《おはようございまーす》

『お、帰って来たな』

「あら、それお土産かしら」


《勿論、皆さんのでーす》


 思った様な温泉では無かったですけど、やっぱり露天風呂は楽しかった。

 アレでお湯がもっと熱かったら、最高なんだけども。


 温泉施設、欲しいなぁ。

 あ、その為に生きるのもアリかも。


 向こうでも何も目標が無くて暴走した様なもんだし、もしかしたら結婚出来無いかもだし。


 温泉オバサン。

 いや、入浴施設オバサンでも良いか。




「有るが」


《へっ》

「そうか、知らなかったか」


《知らない》


 そう呆然とする程に。

 まぁ、趣味だと言っていたのだし、そうか。


「すまなかった、今度案内しよう」

《結構です、自分で行くます》


「不意に訛るな」

《あ、失礼しました》


 危なかった、間抜け顔で訛られると、吹き出しそうになるんだ。

 困るな、どうしたものか。


「そんなに好きか」

《そんなに好きじゃないですか》


「まぁ、体の汚れさえ落とせれば」

《何を仰いますか、アレは健康法の1つですよ》


「その理屈は分かるんだが」

《最も自分に合う温度で入る事で、心身をリラックスさせるんです、下手な健康法より安心安全な良い健康法なんですよ。あ、サウナは有りますか、有るなら乾式ですか》


「有るが、熱した石に水を掛けるやり方だが」

《お嫌いですか》


「アレは、まぁ、嫌いでは無いが」

《はー、勿体無い、勿体無い人生の過ごし方だ》


「そこまで言うか」

《ご趣味が少ない分際で何を仰います、あ、男の子になりたいです》

『あら急展開ね?』


《楽しめる様にご案内したいんですが》

「いや、そこまでは」

『良いわよ、さ、魔法印を出して』


「コレは、帝国からの」

『じゃあ、私の伝手から借りても良いけれど、もっと収集が付かなくなるわよ?』


「はぁ、分かった」

《よーし、温泉だサウナだー》

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