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悪魔貴族譚~ノビリタス・ディアボロス~  作者: 中谷 獏天
第8章 各国、各地の事情。
178/198

5 善悪の正しい世界。

 Barbegazi(バルベガジ)、雪の精霊種。

 冬の雪山にのみ現れ、容易く雪に埋もれ、同時に容易く雪から這い出る事が出来るモノ。


 そして雪上を容易く滑り降り、時には雪崩にすらも乗る、雪の精霊種。

 更には遭難者を導き、雪に埋まった者すらも助け出すモノ。


 氷柱に良く似た髭や髪を持ち、足は大きく小人族に近い容姿を持っている、とされているらしいが。

 子供では、この髪色が精々だろうに。


「ごめんなさい殿下、私、アマデウスみたいに賢くないの」

「其々に得手不得手が有る、お前は氷を作れるのだろう、だがアマデウスには出来無い事だぞ」


「本当に?」

「あぁ、アレは家守の妖精種、家の事は出来るが氷は作れない」

『そして私達にも作れません、ですので氷を売るだけでも、アナタ1人でも生きられますよ』


「ココに居たらダメ?」

「いや、だがお前には生きる場所を選ぶ権利が有る。更に安全な場所で、新しい家族に囲まれて過ごす事も出来る」


「カメリアは?」


「何故、カメリアの事を気にする」

「だって、連れ出してくれたから。いっぱい来たけど、消えちゃったり、何処かに行っちゃったから」


 悪魔の箱庭とは、つまりは試練の箱なのだろう。

 悔い改めるなり、償うなりをすれば出れるか、若しくはこうして見本を示すか。


「お前が知る限りは、だろう」


 全てが、全ての時間目覚めていたワケでは無い筈。


「うん」

『彼女なら大丈夫ですよ、来訪者様として、功績を打ち立てれば貴族としても過ごせます。彼女も、生きる場所も方法も、選べますよ』


「じゃあ、カメリアが私を選んでくれなかったら、離れ離れになっちゃうの?」


「カメリアの何が気に入った」


「分かんない、でもあんまり、離れたくない」


 人を惹き付ける才。

 コレばかりは、生まれ持った性質なのだろうな。


 実に羨ましい限りだ。


「ではカメリアの熱が収まってから、改めて尋ねる事としよう、良いか?」


「うん」


『熱が収まるまで数日掛かります、それまで必要な事を学びましょう』

「うん」

「カメリアが気になるのだろう、帰って看病してやると良い」


「うん、さようなら殿下」

「あぁ」


 王族候補より、地位よりも、か。


『彼女の性質は暑さが苦手だそうですから、夏の時期には涼しい部屋に、もう割り振って決めてしまいましょう』


「あぁ、だが他にも居るのだろう、ジョゼの妖精」

「アドニスの系譜、だそうよ」

《ココは我じゃよね、ざっと言うと、アフロディーテの策略により仕込まれた子供じゃよ》

『いや、アレは偶々では』


《何が偶々じゃよ、幾年も生きとる女神じゃよ?その結末がどうなるかまで、最初から、分かっていたであろうに》

「何が有った」


《とある王女がアフロディーテへの祭事を怠り、その罰にと、実父へ恋する様に呪われたんじゃよ》


 そして王女は乳母の仲介を経て、十二夜に渡り念願を叶えたが。

 実父に気付かれ殺害されそうになると、神々に祈り没薬(ミルラ)の木となった。


『そして没薬(ミルラ)の木から、アドニスが生まれ』

《そこじゃよ、アフロディーテが養育者となったんじゃ、じゃが忙しいんでペルセポネに預けた。そして案の定じゃ、ペルセポネも惚れ込み奪い合いとなると、ゼウスじゃかカリオペーが仲裁に入り。年の3分の1はペルセポネ、アフロディーテ、アドニスの月が出来上がったが。まぁ、自分の時間を殆ど、アフロディーテと過ごしてたそうじゃよ》


『そして狩りの最中に、命を落とした』

《最有力候補としては、アルテミスの怒りに触れた、じゃな。時点でアフロディーテの愛人のアレス、若しくは同一視されとったヘパイストス、アルテミスの双子の兄弟のアポロンじゃな》


「美と愛の女神に愛された、人の系譜か」

《そして豊穣、収穫の秋と死に関連するで、蓄えの才が有るぞい》

《ドリアード、もう少し人語を介するべきだろう。保存食、乾いた風を操る、風の精霊種となった》


「あぁ、風が風邪の元となる、は東のか」

『はい』

《過保護な悪魔め》

《お前には遠く及ばん》


 貴族の多い場所。

 だが消費は多く、加工の知識や経験が不足している場所。


「実に便利だな」

《じゃろ!》




 子供達に介護されている間に、其々に役割が出来ていた。

 そして既に、衛生教育まで。


『申し訳無い』

『いや、そこは寧ろ好転しての結果だと捉えて欲しい』


『好転?』


『あの側近のルイス侯爵が居るだろう』

『はい』


『アレが出て行くかも知れない、その揺さぶりを掛けている最中に、君達が現れたんだ』


『何とまぁ、間の悪い』

『いや、それこそ事態が好転する材料だったんだ。単に焦るだけ、引き留めるだけでは、人材を篩に掛ける事が難しかった』


『ほう』

『だが、成果を目に見えて上げる、そう事態を好転させる為にどれだけ働いたか。コチラが、評価出来る状態となった』


『つまり、寝込んでて良かった?』

『あぁ、子供達も自主的に動く様になった。あのままなら、君に甘えた状態のまま、過ごす事になっていたと思う』


 まぁ、そう評価頂いているなら、良いんですが。


『成程』

『他にもだ、本気で居場所を考える切っ掛けにもなった、主に侍女達のな』


『問題が山積みでしたか』

『まぁ、だがそれも好転した。実を言うと男嫌いが集中していてな』


『あぁ』

『相談さえしてくれていれば、と、そうした状態だったんだが。子供達に関わる事で、子供の事、家庭に対して真摯に考え相談してくれる結果となったんだ』


『あー、女同士じゃ子作り出来ませんもんね』

『だが、ココでは出来るんだ、性転換の魔法や魔道具が有る』


 ザ・ファンタジー再び。


『知恵熱が、ぶり返しそうなんですが』

『そこはすまない、ただ期間は十分に猶予を持たせたつもりなんだが、何か違和感が有るならココで止めておこう』


 違和感。


『多分、無い、気もしますんで。はい、続きをお願いします』


 あぁ、流石看護師。

 触って確かめるんですね。


『すまない。まだ1人しか相談は来ていないんだが、そうして状態が好転した事だけは、知っていて欲しいんだ』


 私を看病してくれていた子は、綺麗な白髪になり、冬に備え雪室のお勉強をしている最中。

 そして欠損が無いながらも1番に容姿が悪いだろう、とされそうな子は瘤や痣が消え美少年になり、保存食の指導係に。


 今でも青空教室で、のびのび学習中。

 の筈が、コチラの存在に気付くと、一斉に視線が集まり。


 走って来ますか。


「あ、お熱は大丈夫?」

『あぁ、どうも、多分大丈夫かと』

『カメリアが好きな保存食は何?勉強しておくね?』


『あぁ、どうも』


 何故、こう慕われているのか。

 ただ連れ出しただけで、寝込んでただけなのに。


『お話は後で、休憩の時間にしましょう』

「はーい」

『はい』


 もう子供達だけで、仲良くなっている。

 凄い。


『まだ、自身の身の振り方についても、暫く時間が掛かるとは思う。だからこそ、当面は子供達を頼みたい、一応だが手引き書を用意した』

『あぁ、何から何までどうも、ありがとうございます』


『いや、俺はあくまでも片手間にしか関われないんだ、看護院の設立に携わっているんでな』


『看護院、と申しますと』

『寝たきり状態の者を看病する施設、それと看護師を養育する施設だ』


『魔法が有るのに、寝たきり』

『魔法で疫病の殆どが守られてはいるが、それは限定的なんだ。人の生活圏内のみ、精霊の加護により、破傷風菌などが抑え込まれているに過ぎない』


 結界、的な感じですかね。


『成程』

『そして治療についても、基本的には自然に任せ、薬草を主に使用している。そして限られた抗生物質は存在するが、限定的に使用するのみなんだ。その抗生物質に耐性の有る菌が出来ては、本末転倒だからな』


『あぁ』

『そして、寝たきりの状態になってしまうには、様々な要因が有る。些末な菌が入ったにしても、稀にだが、寝たきり状態になってしまうのは向こうも同じなんだ』


『魔法で、治さないのは』

『そもそも、出来る者が限られる、そして果ては不老不死に繋がってしまうからだ』


『あぁ、成程』


 何でも治せたら、そりゃ死にませんもんね。


『熱は、大丈夫そうか?』


『多分』


『ユサール、少し良いですか』

《はい》


 ダッシュ。

 元気。


『彼女の散歩の付き添いをお願い致します、少し熱が出るかも知れませんので、様子を気にしてあげて下さい』

《はい》

『あ、今は特に気配は無いですからね、大丈夫ですよ』


『ですが体温となると、手を繋いであげて下さい』

《はい》


 素直。


『では、休憩の時間まで、無理せず宜しくお願いしますね』

《はい》

『あぁ、ありがとうございました』


『いえ、では』


 リリーさん、使い分けが本当に凄い。


《カメリアが居ない間、読み聞かせをして貰ったよ》

『おぉ、そうでしたか』


《けど知恵熱が出ない様にって、少しだけだったんだ》

『まぁ、知恵熱を出すと暇ですからねぇ』


《知恵熱、次からはカメリアにお願いしろって言われたんだけど、本当に良いの?》


 あぁ、だから私が必要なんですね。

 子供ならきっと、心細くもなるでしょうから。


『もうお世話され慣れましたからね、どんと来い、いつでも知恵熱を出して良いですよ』


《ありがとう》


 暫くはお世話係。

 それから、身の振り方を考えますかね。

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